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欧州ファンダメンタルズ入門|第3回 欧州の注目経済指標[松崎美子]

欧州ファンダメンタルズ入門|第3回 欧州の注目経済指標[松崎美子]

欧州の注目経済指標とは

 ユーロ圏に限らず、注目指標を探すには、その市場の現状を踏まえることが大切です。また、国際情勢の大きな流れをきちんと頭に入れると、おのずと注目すべき経済指標や材料が見えてきます。今回は、欧州の注目経済指標を紹介します(表①)。

欧州の注目経済指標

●国内総生産(GDP)

 経済動向を把握する上で、マクロ経済の王者:GDPにかなう指標はありません。

 GDPとその国の通貨の関係は、GDPが強くなると通貨高になると考えるのが一般的な解釈です。GDPが強ければ、景気過熱感が出てくるかもしれず、それを防ぐ意味で中央銀行による金融引き締め(利上げ)実施観測が出て、ますます通貨高になります。

 逆に、GDPが弱い国の通貨は売られやすくなります。景気が低迷し、インフレ率が極端に低くなったり、デフレ傾向となったりした場合は、中央銀行が景気活性を目指し政策金利カットや、追加緩和策の導入などを検討します。通貨もそれにつれて売られやすくなるのは、当然の動きともいえるでしょう。

●消費者物価指数(HICP)とコア・指数

 欧州中央銀行(ECB)の金融政策の責務は、「物価安定の維持」であり、それを達成するために「インフレ目標」を設定しています。その定義は、「中期的なインフレの上昇率が2%以下だが2%近く」とされていますが、早い時期に変更という噂もあります。

 物価安定を測る際に、ユーロ圏では「Harmon- ised Index of Consumer Prices(HICP)」が使われています。他国では、消費者物価指数はCPIと表示しますが、ユーロ圏は加盟19か国それぞれのCPIを調整し、計測対象の項目を共通化したものを加重平均するため、「Harmonised」という単語が含まれます。

 物価の推移を見るときには、インフレ率だけでなく「コア・インフレ」にも注目してください。ユーロ圏のコア・インフレは、原油に代表されるエネルギーと食料品を除いたものです。原油などの価格変動が激しい一時的要因を差し引いて、物価変動を純粋に測りたいときに便利で、金融政策を判断する上でも重要視されます。

●購買担当者景気指数(PMI)

 景気の現状や将来の動向を予測する際に参考になるのが景気動向指数です。種類別に分けると、①数か月先の景気の動きを示す先行指数②景気の現状を示す一致指数③半年から1年遅れで反応する遅行指数—の三つの指数に大別されており、各国それぞれ違った形態の景気指数が発表されています。

 これら景気指数の中でも特に為替市場で注目度が高いのは、大手金融情報サービスを提供する民間企業Markit(マークイット)社が発表する購買担当者景気指数(PMI:Purchasing Managers Index)です。製造業・サービス業・総合指数など業種別に分かれており、PMIが50を超える場合は景気拡大を示し、50未満の場合は景気後退を示します。

 PMIを重視する理由は、製造業やサービス業に実際に携わっている購買担当者から直接聞き取りを行うため、現場の人間が自社の生産計画などを考慮し、どのような景気見通しをしているのか感じられるからでしょう。つまり、この数字が堅調に推移していれば、その後発表されるであろうGDPや雇用関連指標も改善するに違いないという「景気の先読み」が可能となります。

 そうして景気過熱感が感じられる水準まで数字が伸びれば、政策金利の引き締めの時期が近づいたと判断し、利上げを織り込む形での通貨高の波に乗れる可能性が出てきます。実際にPMIとGDPの二つの指標を同時にチャートに表示すると、その相関性には驚かされます(図①)。

PMIとGDPの二つの指標

図① 出典:Markit社

 PMIの数字を基に為替取引をする場合、改定値は速報値とあまり変わらないことが多いため、速報値発表のときを狙う方がポジションを取りやすいでしょう。ただし、PMIは中長期的な景気の拡大の有無を占いますので、ボラティリティが高まり通貨の乱高下を引き起こす数字ではありません。そのため既存のポジションは、そのときに利食ってしまう方が安全だと思います。

それ以外の経済指標

 今までご紹介した以外の経済指標で、私が注目しているのは、以下の通りです。

①失業率

 景気の健全度を測るバロメーターの中でも特に重要視されるのは、雇用関連の指標です。欧州は米英と比較し、失業率が高いままで、なかなかインフレ率が高まらない構造となっています。そこで、この数字が米英並のレベルに下がれば、徐々にインフレ圧力となることが考えられます。

②景況感指数

 私は、IFO企業景況感指数と、ZEW景況感指数に注目しています。

③マネーサプライ

 私はあまり各国のマネーサプライには注意を払っておりませんが、ユーロ圏に限ってはマネーサプライM3と同時に発表される民間貸付を必ずチェックしています。

 ここでの「民間」とは、非金融系、民間、一般世帯全てが含まれています。この数字が伸びれば、企業や個人が積極的に借り入れを行っていることになり、経済の活性化が期待できます。今年9月からECBはTLTRO3を実施します。この新たな流動性の供給に伴い、企業活動がサポートされるのか? もしECBの「インフレ目標値」変更があれば、流動性供給により、目標に近づくことが容易になるのでしょうか? 注意が必要です。

※この記事は、FX攻略.com2019年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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「欧州ファンダメンタルズ入門」連載記事まとめはこちら

ABOUT ME
松崎美子
まつざき・よしこ。スイス銀行東京支店でトレーダー人生をスタート。1988年渡英、1989年よりバークレイズ銀行ロンドン本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年に同じくロンドン・シティにある米メリルリンチ投資銀行に転職。その後2000年に退職。現在はFX取引に加え、日本の個人投資家向けにブログやセミナー、YouTubeを通じて欧州直送の情報を発信。著書に『松崎美子のロンドンFX』『ずっと稼げるロンドンFX』(共に自由国民社)。2018年より「ファンダメンタルズ・カレッジ」を運営。DMMで「FXの流儀」のオンラインサロンも始めた。 スクール:ファンダメンタルズ・カレッジ オンラインサロン:FXの流儀 ~ファンダ・テクニカルを語ろう~
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