2020年末に大手銀行が発表した「2021年FX見通し」を見ると、ほぼ例外なくドル安予想となっています。ここまで皆が皆、ドル安を予想するということは、何か大きな材料があるのでしょう。私が考えるドル安要因は、「実質金利」と「平均インフレ目標(AIT)」です。
一言に「金利」といっても、いくつも種類があります。中央銀行が決める政策金利、国債利回りという長期金利などが、すぐに頭に浮かぶでしょう。それでは、実質金利とは何か? そこから話を進めましょう。
実質金利とは?
実質金利は名目金利から期待インフレ率を差し引いたものです。
実質金利=名目金利-期待インフレ率
そして、実質金利には短期と長期がありますが、日本銀行のリサーチによると、こういう定義となっていました。
- 実質短期金利=翌日物無担保コールレート-消費者物価指数
- 実質長期金利=10年物国債利回り-6~10年先の物価上昇見通し
出典:日銀レビュー(2016年10月)
図①は、日銀リサーチに載っていた2016年の古い資料ですが、短期・長期共に、実質金利は年々下落傾向にあったことが分かります。2004年辺りから始まった円キャリー取引時の金利水準は長短実質金利は共に非常に低く、円売りが盛んになったことがうなずけます。
実質短期金利:米国が一番低かった
主要国の政策金利と消費者物価指数(CPI)を使って、それぞれの実質短期金利を計算してみました。
執筆時点で実質金利がプラス圏内なのが、ユーロ圏・日本・メキシコでした。英国と豪州が共に-0.6%。そして米国は-1.075%となっており、米国が断トツ低いことが分かります。
米国の実質短期金利が一番低いことが分かりました。それでは実質長期金利は、どうでしょう?
実質長期金利:ここでも米国が一番低い
今回は、1年先期待インフレ値、中央銀行が予想した12か月後のインフレ見通しの数字を使いました(表①)。豪州とメキシコは、プラス圏。それ以外はマイナス圏となり、その中でも米国が一番低くなりました。
出典:米ニューヨーク連銀、欧州中銀、英中銀、日銀、RBA、複数の報道
この結果を見て「なるほど!」と思ったのは、大手銀行の「2021年FX見通し」ではドル安に加えて、メキシコペソ買い推奨が非常に多かった事実です。確かに金利水準を見るとメキシコは魅力的ですが、来年は中間選挙を控えているため、政治面で不透明感が高まるリスクがあります。ポジションを取る方は、その点に気をつけてください。
平均インフレ目標(Average Inflation Targeting)
毎年8月に米国のジャクソンホールで開催される経済シンポジウム。今年はその席で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が「平均インフレ目標(AIT)」を発表しました。
2008年の金融危機以降、世界的に低インフレが続いており、経済そのものの形態が変わってきたと認識されています。そこで、2019年に米国は金融政策の枠組みそのものを見直す動きに出ました。その結果発表が、ジャクソンホール経済シンポジウムで行われ、それがAITだったのです。
AITと既存のインフレ・ターゲット制の違いを簡単に説明すると、既存の制度はインフレ率がターゲットを超えそうだと中央銀行が判断した場合、政策金利を引き上げ、物価が安定的に2%前後で推移することを目指します。それに対し、AITはインフレ率がターゲットを下回る時期が一定期間続いた場合、景気が回復し物価がターゲットを上回る時期が来ても、しばらく様子を見ながら政策金利の引き上げを見送るやり方です。
図②で説明しますと、インフレ・ターゲット制ではターゲットの2%に近づいた時点で政策金利の引き上げが実施されていましたが、AITでは赤い丸で囲んだ2%超えの期間でも政策金利は据え置きのまま、様子を見守るということです。
出典:米サンフランシスコ連銀
AIT導入により、米国の利上げははるか遠くの未来の話しになり、2023年くらいという予想です。これでは、ドルを買う気にはなかなかなりません。ただし、私はあまのじゃくなのか、皆が皆「ドル安」という同一の相場観を持っていることが、あまり気にいりません。もし新型コロナウイルスのワクチンの有効性が実証されれば、来年中盤以降は景気回復が本格化し、久しぶりに「インフレ」という単語がマーケットに出てくることを期待しています。
※この記事は、FX攻略.com2021年3月号(2021年1月21日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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