2020年も3月が終われば一年の4分の1が過ぎたことになる。分数に置き換えると、随分と月日が流れるのは早いと感じる。
米国は暖冬気味であるが、寒いときは毛布にくるまり、ぬくぬくとしたいものである。そして、筆者も人の子であるため、寒いときは室内のランニングマシーンで走る機会が多くなる。通常、5マイルから8マイル走るが、何マイル走ったかの表示を見ると、いつもゴールはまだかまだかと思う。そのため、筆者は走った到達距離を何分の1と工夫してカウントしながら走る。そうすると不思議なことに、残りの距離がすごく短くなったようになり、楽な気分で走ることができる。
ところで、読者の皆さまは*綸言汗の如し(りんげんあせのごとし)(*)という格言をご存じであろうか。この格言は「君主が一度口にした言葉は、訂正したり取り消したりすることができない」という意味である。
*宦官の専横を元帝に訴えようとしたが、事前に事がもれ、獄に入れられてしまい、そこで獄中から書面をもって「易経にある通り、号令は汗の如くにして、汗は出て反(かえ)らざるものなり」と元帝に言葉の重さをしっかり認識するように忠告したことがこの格言の由来である。
プランZが施行されていたならば
2011年11月、イタリアは市場資金調達から切り離されそうな瀕死の状態であったことは読者の皆さまの記憶にあるであろう。そのとき、イタリア政府とイタリアの中央銀行で構成されるワーキンググループが通貨「ユーロ」からの離脱について、ひそかに研究を行っていた。その研究成果を取りまとめたものを「プランZ」と呼ぶ。プランZの中で、新通貨「Eurolira」の導入についても議論されたと伝え聞く。
イタリアがユーロ圏から離脱する可能性が高まる中で、2012年7月26日、マリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁がロンドンで講演を行った。このドラギECB総裁の講演は非常に重要であり、ユーロ圏の債務危機の終焉を告げるものとなった。読者の皆さまのご記憶にも残っているであろう有名な「Whatever It Takes(できることは何でも):責務の範囲内で、ECBはユーロ圏を守るためにできることは何でもやる用意がある。私の言葉を信じてほしい。それで十分だろう」である。
ある新聞記事で、民間金融会社の金利責任者が「Whatever It Takes」というのは、「ユーロ圏にシステミックリスクがないことを意味する」と述べていた。筆者の考えはその責任者と異なり、この言葉の意味の裏腹についていろいろ思うことがある。いずれにせよ、ドラギECB総裁が自身の回想録の中で「Whatever It Takes」についてどのように思いを描くか、回想録を読むことをとても楽しみにしている。
梟(ふくろう)になる
さて、ドラギECB総裁からバトンタッチされた新たなECB総裁はラガルド元国際通貨基金(IMF)専務理事である。ラガルドECB総裁からは何十回とお話を聞く機会があった。筆者の感想は、非常に頭の回転が早くユーモア溢れた女史である。
そんなラガルド氏がECB総裁になって、2019年12月にECB政策理事会が初めて開催された。非常に面白かったのは、ラガルドECB総裁の金融スタンスについてのメディアとのやり取りである。具体的には、ハト派(金融緩和)なのか、それともタカ派(金融引き締め)なのかという質問があった。これに対して、ラガルドECB総裁は「私の望みは梟(ふくろう)になること」と答えている。豊かな経験に基づいた知恵とユーモア溢れる答えではないだろうか。
今年のユーロドルはどうなるか?
2019年のユーロドルの動きは、1.09ドル台と1.15ドル台のレンジの範囲におさまった。また、ユーロドルの1日の変動幅もほぼ0.6%以内にとどまっている(チャート①)。2020年になってからのヒストリカルデータは、チャート②である。年初の為替アナリストの予想を見る限り、1.116ドルをブレイクするとの見通しが多かった。ただし、2月中旬の値動きは、その見通しに反してユーロドルは下サイドを探り、1.09ドルをブレイクした。
2月10日、ドイツのキリスト教民主同盟(CDU)のクランプカレンバウアー党首が年内での辞任を表明したことと、ユーロ圏の12月鉱工業生産が予想を下回ったことに加え、新型コロナウイルス感染拡大による域内景気への懸念から、ユーロドルは2019年9月につけた安値を割り込んだと思えば、新型コロナウイルス感染拡大を材料に1.116ドルをブレイクした(3月3日)。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年前半の世界経済成長率が下押しするのは避けられないだろう。特に、ドイツの経済成長率は大きく押し下げられると予想する。これは、中国市場への貿易依存度が高いためであり、他のユーロ各国の経済成長率と比べ大きく落ち込むであろう。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大が終息すれば、2020年後半にかけてユーロ圏の経済成長率は回復するであろう。
この経済成長率の下振れリスクによって、ECBの金融政策がより金融緩和的(新たなTLTROプログラム、預金金利の引き下げ、資産買い入れ額の増大)になるかどうかは、直近のユーロドルの動向を見る上で大事であろう。ただし、中央銀行の金融政策は、あくまでも財政政策をサポートするための手段であることは忘れてはいけない。
最後に、公的な立場の人の発言は綸言汗の如しである。それは、ラガルドECB総裁も熟知しているであろう。
※この記事は、FX攻略.com2020年5月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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