FX女優である陽和ななみさんがトレード成績向上を目指してFXのスペシャリスト山中康司さんからFXで利益を出すために必要な全てを皆さんと共に学んでいきます。今回もファンダメンタルズ分析の基礎について教えていただきます。
経済指標の何を見れば良いか?
陽和 前回は山中先生に「ファンダメンタルズ」を広義的に教えていただきました。今回も引き続きファンダメンタルズ要因の詳細についてお願いします。
山中 まずは経済指標の何を見るのかです(画像①)。前回は米国の雇用統計を挙げましたが、雇用統計の中にノンファームペイロールという非農業部門の雇用者数の増減発表があります。それが、例えば22万人と出た場合に何をどう判断するのかを説明します。
前月との比較予想で、例えば今月の予想が22万人というときに、その数字に対して実際に出てきた数字がいくつだったら買うのか、いくつだったら売るのかを判断材料とします。基本的に予想の数字というのは、いろいろな人が関与しているので幅があります。
陽和 確かに予想といってもどこが発表しているかによって若干違ってきますよね。
山中 そうなんです。先ほどの22万人という数字は予想の中での中央値だったり最も予想が集まっているところになりますが、実際には15万人から25万人と予想に幅があったりします。予想のレンジが15万人から25万人ならば、15万人よりも少なかったら売ろう、25万人より多かったら買おうというのが市場の動きになります。要はその予想に対する結果がどうなのか、予想のレンジで見ることが重要です。
次に、前回からの修正部分にも気をつけなければなりません。例えば今月は予想の22万人に対して出てきた数字が18万人で下方修正されたとします。また、前月は予想の18万人から結果28万人に上方修正されたとしましょう。予想との差が前月ではプラス10万人、一方で今月はマイナス4万人ということになり、トータルで考えるとプラス6万人になります。このようなケースでは、数字の修正された部分も考慮しなければいけません。
基本的にマーケットでは、今回の数字が予想のレンジに対してどうなのか、それと前回出た数字から今月どのように修正されたのかがそれぞれ瞬間的に判断され、相場が動きます。
速報性の高い指標で今の景気が分かる
陽和 米国経済指標の中でも雇用統計が注目されるのはなぜでしょうか?
山中 経済指標の中でも比較的重要といわれているのが速報性の高い指標です。なぜ速報性の高い指標が重要なのか? それは直近の景気がどうなっているのかをいち早く知ることができるからです。一般的に経済指標で発表される情報は大体1か月前のものです。実際、米国ではトランプ大統領が連邦機関を閉鎖した関係で2か月遅れの数字が平気で出てきたこともありました。
その中で雇用統計は原則として前月の後半に集計が行われたものが翌月の第一金曜日に発表されます。発表されるまでの期間が非常に短いので直近の様子がよく分かります。集計から発表までの期間が短く速報性の高い指標ほど、今の実体経済がどうなのかが分かるということです。
陽和 現在の景気を知るためには、速報性が大事になるんですね。
山中 はい。また、住宅着工や耐久財受注なども先行指標として将来の景気を読むのに役立ちます。労働者の立場からみると、米国は雇用の調整を簡単にするので景気が悪くなると仕事に不安を抱えるようになります。その結果、住宅などの大きな注文は需要が減り、住宅着工の数字は減少していきます。企業の立場からみても、売れ行きが下がるかもしれないときに設備投資やメーカーの製造ラインを増やしたりはしませんよね? 企業活動が鈍れば経済成長も期待できず、将来的に景気後退の可能性ありと判断できるわけです。
影響の大きい中国の経済指標
陽和 これらの他に重要な経済指標はありますか?
山中 最近、注目されているのがPurchasing Manager’s Index(PMI)という指標です。これは製造業やサービス業などの購買担当者から生産や受注、価格動向などを聞き取り、指数化したものです。
特に中国での影響は大きくて、今は中国の景気減速が世界的に景気をおかしくしている部分もあります。米国や欧州の景気減速懸念、これも本を正していくと中国発といえます。そのような意味ではこのPMIは非常に重要だということになります。
陽和 時代によって注目される指標が違うと前回いわれていましたが、現在重要なのはこのPMIになるんですか?
山中 PMIは今後も重要になってきます。それと、中国に関していえば経済指標の他に米中通商協議の動向もチェックしておく必要があります。米中通商協議の内容次第で、米国の日米通商協議や他国への対応が見えてくるからです。
先行きは不透明ですが、もしここで米国が中国に対して輸入以外のことにも言及した場合は、為替条項の話になると思います。実効性があるかどうかは悩ましい部分ですが、米国が中国の輸出促進に伴う通貨安を抑えるようであれば、為替市場への影響も大きくなりそうです。さらに、派生的に考えなければいけないのは貿易赤字です。今後米国の貿易赤字が増えてくると、その中で対中国や対日本の赤字が増えてきますので、皆さんかなり気にするのではないでしょうか。
80年代の対日赤字が問題となったころに現在また回帰しつつあり、30年前の状況に似てきたといえます。30年前の米国はレーガンが大統領をやっていた時期で、トランプ大統領とレーガン大統領はいろいろと比較されたりもしていました。そういった意味では歴史を振り返って当時どうだったのかをみることも結構重要です。
陽和 30年前にも注目ですね。
山中 30年前に米国で何が起こっていたのか、をみておくと今後の経済指標を考えるときに参考になると思います。
為替相場を動かす代表的なフロー
山中 次に代表的なフローです(画像②)。前回、需給については輸出入業者のオーダーということでトヨタを例に出しましたが、それ以外に機関投資家のオーダーもあります。ななみんは機関投資家とは何か知っていますか?
陽和 ファンドのすごい人が大量の買いや売りで相場を動かしているイメージです。
山中 日本で最も大きいところでいうと年金基金です。大きな金額を長期で運用しているところを機関投資家といいます。あとは生命保険会社や金融機関などもそうです。特に大きいところはクジラと呼ばれます。輸出入という実需、あるいは投資面での機関投資家のオーダーは古典的かつ非常に大きな相場変動要因になります。
あとはオプションバリア、ここではダブル・ノー・タッチ(DNT)オプションを例に挙げます。例えば110円と113円のDNTオプションがある場合、どちらの値もつかなかったときにそのオプションを売った人が儲かることになります。したがって、この値がついてほしくないという市場心理から、その価格に近づいてくると手前の110円10銭で買いを入れたり112円90銭で売りを入れたりする人が増え、反対方向の動きが出やすくなります。逆に価格を抜けるときは一気にいってしまいます。そういったオプションがどこにあるのかは、大体マーケットでうわさになっています。ですから市場関係のニュースソースに目を向けておけば、事前に分かると思います。
輸出入業者や機関投資家、オプションバリアの取引は、市場のうわさになるんですよ。情報として「輸出は売りのオーダーが並んでいるよ」みたいな話が聞こえてくることもありますが、短期の投機筋、ヘッジファンドなどの情報はどこで出てくるのか分かりません。
陽和 うわさや情報が出てこないのでオーダーが分からないんですね。
山中 そうなんです。ヘッジファンドなどは開示されている情報が少なく、市場関係者からしても把握しにくい存在です。彼らも多額の資金を運用しているのでオーダーによっては急にマーケットが動き始めることもあります。把握しにくいがゆえに、相場を逆に振れさせる原因にもなりやすいということです。
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日本は個人投資家が最大のフロー?
山中 古典的な実需筋、機関投資家、オプションバリア、ファンドには個人ではとても太刀打ちできません。ただ、日本のフローとして最も代表的なのは実は個人投資家だといわれています。
陽和 みんなで結束すれば、強いということですね。
山中 まさにその通りで、日本の個人投資家の取引量って集まるとすごい量になるんですよ。東京外国為替市場の全ての取引のうち、4~5割くらいはひょっとしたら個人のものではないかといわれるくらい多いです。それに、意外と日本人はやることが同じなんです。今日本は金利が低いじゃないですか?
陽和 はい、低金利政策が続いています。
山中 なのでFXで外貨を運用しようと考える人がたくさんいます。例えばスワップ金利狙いなどの個人投資家は、外貨買いの円売りで入ってくることが多いです。もちろん短期売買をしている人は違うんですけれども、長いポジションを持っている人は大半が円売りなので、個人投資家の人が束になって円を売る状況が続いていくとドル円はそう簡単に下がりません。これが2019年年初からの相場によく表れていると思います。ちなみに、お正月の間にフラッシュクラッシュといわれる相場の急落がありました。
陽和 1月3日にありましたね。
山中 フラッシュクラッシュでは、短期で売買している個人投資家が置いたストップロスがどんどん重なりストップロスがストップロスを呼ぶ状況になっていました。あのときには、驚くくらいの金額の損切りが出ています。どのくらい出ているのか分からないですけれども、損切りが追いつかなくてFX業者側で足りなくなった証拠金が9億円といわれています。
陽和 9億円ですか!?
山中 FX業者側で9億円の証拠金が足りなくなったということは、個人では大体どのくらいかというと、最低でもその10倍はストップロスが出ているんじゃないかと思います。もっと出ているかもしれませんが、そういう意味でも日本の個人投資家の動きは世界から注目されています。
※この記事は、FX攻略.com2019年7月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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スプレッド | FX取引における取引コスト。狭いほうが望ましい。 |
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約定力 | 狙った価格で注文が通りやすいかどうか。 |
スワップポイント | 高水準かどうか。高金利通貨の取り扱いの数。 |
取引単位 | 少額取引ができるかどうか。運用資金が少ないなら要チェック。 |
取引ツール | 提供されるPC・スマホ取引ツールの使いやすさ。MT4ができるかどうか。オリジナルの分析ツールの有無。 |
シストレ・自動売買 | 裁量取引とは別に自動売買のサービスがあるかどうか。 |
サポート体制 | サポート内容や対応可能時間の違いをチェック。 |
教育コンテンツ | 配信されるマーケット情報や投資家向けコンテンツの有無。 |
キャンペーン | 新規口座開設時や口座利用者向け各種キャンペーンの内容。 |