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陽和ななみと一人前のトレーダーを目指す!ななみんと学ぶFX|第4回 ファンダメンタルズ分析の基礎④

FX女優である陽和ななみさんがトレード成績向上を目指してFXのスペシャリスト山中康司さんからFXで利益を出すために必要な全てを皆さんと共に学んでいきます。今回もファンダメンタルズ分析の基礎について教えていただきます。

金利市場と景気循環の関係

陽和 今回も山中先生にFXのファンダメンタルズについて教えていただきます。今回のテーマは「金利」です。よろしくお願いします。

山中 為替市場に最も影響力が大きく重要なものが、金利市場になります。金利は大きく分けて二つあります。一つは短期金利で、もう一つが長期金利です(画像①)。一般的に短期金利は一年まで、一年以上を長期金利と言います。

金利市場(長期金利と短期金利)

 短期金利の中で最も代表的なものが政策金利です。日本ではずっとマイナス金利が続いていますし、米国などは一時期と比較して政策金利が引き締められています。いわゆる市場の金利をどの程度誘導するかの目標値として政策金利が注目されています。

 短期金利は政策金利以外にも1か月や3か月、6か月物の金利もあります。他にはスワップ金利があります。

陽和 スワップ金利は、FXでもおなじみですね。

山中 それと重要なのが、短期金利から長期金利までの金利の変化です。例えば、期間が1年、3年、5年、10年それぞれの金利を線で結んだものが「イールドカーブ」と呼ばれています。通常、景気が良いときや正常な状態だと短期金利よりも長期金利の方が高くなります。

陽和 どうして景気が良いと長期金利の方が高くなるのですか?

山中 景気循環と金利の関係になりますが、好況期には金利を上昇させて引き締めます(画像②)。要は、金利を上げて銀行からお金を借りにくくします。逆に不況期は緩和します。景気が良いときの中央銀行は景気が過熱するインフレーションを懸念します。ハイパーインフレーションと呼ばれるものもあり、最近ではジンバブエで起こりました。

景気循環と金利

陽和 パンを買うのにも大量の紙幣を持っていかないと買えないと聞いたことがあります。

山中 そのような状況にならないように景気が良くなると金利を上げて、簡単には資金を借りられなくします。反対に金利を低くすると、安いうちにお金を借りて、より利回りが良いものを買おうとする人が増えます。典型的なものが土地です。

陽和 投資活動を活性化させるんですね。

山中 そうです。例えば、金利1%で資金を安く借りられるなら、土地の価格が上がるかもしれないと思って買う人が増えていきます。今、豪州や中国では、住宅や土地の価格が高騰しているのですが、そうなると本来は金利を引き締めていきます。

 一方で現在の欧州には景気減速懸念があります。本当は2019年の夏以降に利上げをするかもしれないと言っていましたが、直近の欧州中央銀行(ECB)理事会では年内の利上げを断念し、2020年以降に先送りという状況です。

 ここで気をつけなければならないのはインフレで、物価がどんどん値上がりすると何が起こるのかです。例えば、金利が5%のときにインフレ率が2%だとするならば、実質的な金利は3%になります。

陽和 物価が上がっている分を差し引いているわけですね。

山中 逆に不況期の場合は名目金利が0.1%でインフレ率が-0.5%なら、実質金利は-0.4%という考え方をします。日本は過去デフレの状態がずっと続いていて物価が下がっています。

キャリートレードとリスク回避の円買い

山中 先進国の中では米国がずっと利上げをしていましたが、ここに来ていったんストップしています。景気と金利は非常に結びつきが強いです。景気の良し悪しで金利が上がったり下がったりしますが、金利がなぜ為替に影響を与えるのかを考えたときに「キャリートレード」という言葉が出てきます。聞いたことはありますか?

陽和 高金利通貨を買って低金利通貨を売ることですよね。

山中 そうです。例えば、日本円で他国通貨を買うと、たいていキャリートレードとなります。

陽和 日本は金利がマイナスで他の国は一部を除いてプラスだからですね。

山中 キャリートレードは、まず金利差を得ることができます。そして買った高金利通貨の上昇にも期待できます。もともとはヘッジファンドが始めたことですが、日本の典型的な個人投資家のスタイルです。外貨買い円売りの状態をずっと保って毎日スワップ金利を得ます。高金利通貨の代表格と言えば、南アフリカランドです。

陽和 トルコリラもそうですね。

山中 そういった高金利通貨は急激な値動きがあります。本来は投資先である高金利国の経済状況を見て、問題ないと判断したら投資する人が増えていきます。ですが、その国の経済が悪い状態になると、リスク回避傾向が強まります。「この国は金利を払えそうにない」と思われると、それまで投資していた新興国の高金利通貨から経済が安定している主要国の低金利通貨にお金が戻ってきます。この資金の移動が為替の値動きにも影響を与えることになります。

陽和 「有事の円買い」という言葉をよく聞くのはこれにあたるのでしょうか?

山中 そうですね。実は米国の同時多発テロ事件があるまでは「有事のドル買い」と言われていました。なぜかというと、それまでは米国が最も軍事力が強く、いざというときに世界で一番安全な資産は米国債とみんなが思っていたからです。

 しかし、同時多発テロ事件以降は米国のドルではなく、島国ゆえテロの標的になりにくい日本の円が安全資産として選ばれ、有事の円買いになっていきました。

債券市場と逆イールド

山中 次に長期金利ですが、こちらは債券市場の日米の金利差を例に説明します(画像③)。日本は金利ゼロなので、現状の金利差が米国の金利になります。特に市場でよく見られている米国10年債が世界的にも基準になっています。

債権と金利差

 景気を知るという意味では、イールドカーブも要注目です。例えば、2年債や5年債よりも10年債の金利の方が高くなってイールドカーブは右肩上がりを形成するのが一般的ですが、将来的な景気後退懸念があると、遠い将来の金利が下がっていき右肩下がりになります。この状態を「逆イールド」と呼びます。きれいな右肩下がりの逆イールドになることは滅多にありませんが、それでも米国では数十年の間に5回ほどありました。逆イールドになると一年後には景気が後退している傾向にあります。

陽和 逆イールドは景気後退の予兆と考えることができるんですね。

山中 去年も部分的に逆イールドになっていたので、そろそろ本格的な逆イールドが発生するかもしれません。実際に米中摩擦に起因する世界的景気後退懸念で長期金利がなかなか上がりにくい状態です。

 特に円相場ではこの債権の金利差、その中でも米国10年債をよく見ておく必要があります。ドル円ともう一つのチャートを見るとするならば、この米国10年債になります。それくらい重要な指標ということです。

要人のスタンス変化と米国の為替政策

山中 米国の政策金利を決定する機関に、米連邦公開市場委員会(FOMC)、さらに米連邦準備制度理事会(FRB)があります(画像④)。FRBは日銀に相当します。FOMCのメンバーはFRBの理事に加え、連邦銀行総裁といった金融や経済に詳しい専門家が中心になっています。なので、その人たちがどういうスタンスなのかはあらかじめ分かります。

米連邦公開市場委員会(FOMC)について

 以前述べた「経済指標は市場コンセンサスに対してどういう結果が出てくるのかが大事」なのと同じように、ハト派・タカ派の人がどういう発言をするのかが大事になります。この場合のハト派は緩和推進派、タカ派は引き締め推進派という意味です。

陽和 対比的にこの表現をよく使いますよね。

山中 ハト派の人がスタンスと同じ発言をしても驚きません。今現在のFRBやFOMCメンバーはハト派に傾いている状況です。それまで中立やタカ派であった人もハト派寄りになってきています。

陽和 そうなると緩和傾向になるということですか。

山中 これはFOMCに限らず、日銀の政策委員会やECBにも同じことが言えます。例えば、ECBの次期総裁候補であるドイツ連銀のワイトマン総裁はタカ派で有名ですが、彼がタカ派でなくなった場合に、「ECBは利下げ方向に動くのではないか」という見方ができます。もともとその人がどういうスタンスなのか、それに対してどんな発言をするのかが非常に重要になります。

陽和 要人のスタンスの変化は金融政策に大きく影響するんですね。

山中 最後に、米国の為替政策について紹介します(画像⑤)。連載第1回で為替政策には全てを変えるパワーがあるとお伝えしましたが、特に米国の為替政策が非常に重要です。米国では毎年2回、4月と10月に財務省が作成する為替報告書が議会に提出されます。その中に監視リストというのがあり、このリストに入る国は要注意となります。現在監視リストに入っているのは9か国で、中国、日本、ドイツ、韓国、イタリア、アイルランド、シンガポール、マレーシア、ベトナムです。

米国の為替政策

陽和 日本も監視リストに入っていますね。

山中 日本は監視リストの中では常連です。

陽和 そうなんですね。これはブラックリストみたいなものですか?

山中 そうですね。監視3要件というのがあり、①対米貿易黒字が200億ドル以上 ②経常黒字が国内総生産(GDP)の2%以上 ③GDPの2%以上の為替介入—という要件に全て当てはまると制裁対象となります。だいたい中国、日本、ドイツは①と②に当てはまってしまいます。日本は③の為替介入こそしていませんが、①と②に当てはまるため監視リストに入っています。中国は実際に人民元安の誘導をしているので、米中間の協議で為替介入の話が出てきています。米中摩擦に対する今後の米国の為替政策にも注目しておきましょう。

陽和 ファンダメンタルズは用語も難しくて少し苦手意識がありましたが、こうやって山中先生に勉強を教わると、どんどん頭に入ってきて面白いですね。次回も山中先生にいろいろと教わっていきたいと思います。ありがとうございました。

ななみんと学ぶFX 第4回 ファンダメンタルズ分析の基礎④まとめ

※この記事は、FX攻略.com2019年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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