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FX力を鍛える有名人コラム

忠ならんと欲すれば孝ならず孝ならんと欲すれば忠ならず[森晃]

 秋になると食べたくなる食材の一つが秋刀魚である。日本にいたときは9月になれば、家内が家の裏庭の七輪で焼いた秋刀魚を、キリンビールの「秋味」をくいっとしながらいただいた。

 ここで、秋刀魚のちょっとした豆知識を紹介しよう。江戸時代に、秋刀魚を食べると馬力が出るという意味で、秋刀魚ではなく「三馬」の字を当てていた。確かに、「秋刀魚が出ると按摩が引っ込む」ということわざがあるように、栄養豊富な秋刀魚を食べた人は元気になり病気がなくなる。

 さて、米国で秋刀魚を食べる機会がないのは残念である。しかし、脂の乗ったおいしいサーモンを年中いただけるので不自由はない。フライパンで焼いたサーモンに塩とネギで味つけし、カリフォルニアのワイン・シャルドネをいただくのは美味である。もしよろしければお試しあれ。

香港国家安全維持法

 6月30日に中国の全国人民代表大会は、「香港国家安全維持法案 ※」を可決した。そして、翌日7月1日にこの法律は施行された。

 この香港国家安全維持法は、「一国二制度」の原則を損ない、「香港人の自由」を狭めるとして欧米諸国は批判している。香港国家安全維持法によって、①分離独立行為(中国からの離脱)②反政府行為(中央政府の権力あるいは権威の弱体化)③テロ行為(人への暴力や脅迫)④香港に干渉する国外勢力による活動—の四つが犯罪行為とみなされるからである。

 これに対して7月2日、米上下両院は香港の自治侵害に関わる中国当局者や、その当局者たちと取引がある金融機関などに制裁を科すことができる「香港自治法案」を可決した。その後、7月14日にトランプ大統領がその法案に署名した。

全文の翻訳

HSBCホールディングス

 英国のメガバンクであるHSBCホールディングスは、中国と150年近くビジネスを営んできた。当初の事業は、茶や絹を扱う英国貿易商のために金を貸すことであった。その後、新たな貿易や中国の鉄道事業などへの融資を行い、事業を拡大していった。

 そのHSBCホールディングスの子会社である香港上海銀行のピーター・ウォン(王冬勝)副会長兼CEOが、香港国家安全維持法を支持する文書に署名した。この背景には、5月29日、香港前行政長官の梁振英氏が「HSBCの中国事業は一夜にして中国や他国の銀行に置き換えられることが可能だ」とフェイスブックに投稿し、香港国家安全維持法を支持するようHSBCに圧力をかけたことがある。

 また、HSBCは利益の大半を香港と中国本土で上げており(図①:香港で2019年120.5億ドルの利益を上げている)、中国でビジネスを維持する上で中国政府に気に入られ続ける必要があったとの報道がある。

HSBCの税引き前利益

 一方で、米国は「香港自治法」の施行により、香港の自治を侵害している金融機関へ制裁を科すことができる。例えば、HSBCは米銀との取引を停止される可能性がある(ホワイトハウスがHSBCのドルの調達を制限する措置を検討したとの報道もある)。

 このような環境の中、米国、中国の法律によりHSBCは非常に難しい対応に迫られることになる。例えば、米国政府は香港自治法のもとで、90日以内に制裁の対象となる個人や団体を特定し、HSBCに対して制裁の対象となる個人、団体の口座を凍結することを迫るであろう。しかし、HSBCが口座を凍結することは香港国家安全維持法の「外国勢力との結託」にあたると解され、中国政府から制裁を科される可能性がある。このためHSBCのビジネスは、米中貿易問題だけでなく香港自治区の問題の影響も受けて機会が大きく減少し、銀行の利益が縮小する危機に立たされる可能性がある。

20か国財務大臣・中央銀行総裁会議

 7月18日、20か国財務大臣・中央銀行総裁会議でいくつかの金融規制策が議論されたと思われる。会議後の声明文で、「このパンデミックは、送金を含め、より安価で迅速にアクセス可能で透明性のある決済を促進するために、クロスボーダー決済の仕組みを改善する必要があることを再認識させた。われわれは、積年の課題への対処を通じたクロスボーダー決済の改善のための、包括的な一連の構成要素を提示する決済・市場インフラ委員会(CPMI)の第二次報告書を歓迎する。われわれは、金融安定理事会(FSB)が国際機関および基準設定主体(SSBs)と連携して2020年10月会合までに報告する、グローバルなクロスボーダー決済の改善に向けたG20ロードマップに期待する。同ロードマップには、実務的な手順や例示的な所要期間が含まれる」としている。

 デジタル通貨の規制の議論も大いに気になるところである。昨年の20か国財務大臣・中央銀行総裁会議で、フェイスブックが押し進めるデジタル通貨「リブラ」に対して警戒が表明された。

 一方で、民間機関によるデジタル通貨の発行だけでなく中央銀行が発行するデジタル通貨「Central Bank Digital Currency(CBDC)」についてもどのような議論がなされるか気になるところである。特に、中国人民銀行による「デジタル人民元」については、米中(だけでなく他国と中国の間で)の新たな火種になる可能性がある。それは、どちらの国が「将来の基軸通貨」として通貨の覇権を握るかに大きな関わりがあるからである。もちろん、本誌でも議論しているが「人民元」が「ドル」にとって代わって「基軸通貨」の地位を占める可能性はないであろう。いずれにせよ、通貨とは外交政策の一部であることを読者の皆さまは忘れてはいけない。

 最後に、「忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず」とは、主君に忠義を尽くそうとすれば親に逆らうこととなり孝行できず、親に孝行しようとすれば主君に背くことになり不忠となる。大切な二つのものの板ばさみになって進退きわまった状態を表した言葉である(平重盛が、父の清盛と朝廷との間で苦悩したときの言葉である)。HSBCが置かれた窮地をよく表した言葉であろう。

※この記事は、FX攻略.com2020年11月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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