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荒れるゴム相場[佐藤りゅうじ]

乱高下が続く天然ゴム価格

7月号で「伸縮激しいゴム相場の世界」と題し、天然ゴムの先物市場について述べました。その後もゴム相場の値動きは荒く、プライスリーダーである上海ゴム市場は値崩れを起こしています。これを受けて、東京ゴムも軟化しています。ただ今回の値動きには、ファンダメンタルズ要因はほとんど関係ありません。やや仕手化しているゴム相場に、今回はスポットを当ててみたいと思います。

天然ゴム先物市場といっても、値動きが頭に浮かぶ方は少数派でしょうから、まずはここ一年の値動きを確認してみましょう。チャート①の東京ゴム先限の週足チャート(呼び値1キログラム)をご覧ください。まず昨年2016年11月から今年2017年1月までの急騰が目につきます。11月は183.0円で始まっているので、1月31日の高値366.7円というのは2倍超です。

この急騰の背景には、産地の洪水による供給懸念に加え、当時、共産党大会を翌年に控えた中国が公共事業を増やすとの見方がありました。実際、2016年10月の中国製造業PMIは、中国建設ブームとなった2014年7月以来の高水準となっていました。また、中国政府が小型自動車の減税措置を打ち出していたことも支援材料となりました。そして、11月の米大統領選でトランプ氏が勝利したことから、今後、米国内でも公共事業が増加し、資源価格が上昇するとの思惑が強まり、ゴム価格も銅など他の資源価格上昇に追随する格好となりました。

しかし1月に入り、いわゆるトランプラリーが終了してゴム相場の熱気も一気に冷めると、3か月かけてほぼ倍になった相場は、今度は4か月かけて180円台に下落し、6月7日には178.8円まで水準を引き下げ、元の木阿弥となりました。その後、上海ゴムが上海鉄筋の上昇に追随し、9月6日には6月の安値から約31.4%高となる234.7円まで水準を引き上げましたが、9月22日には210円の節目を割り込むなど、再び下値を模索する展開となっています。

ファンダメンタルズ不在の値動きに

このように、過去1年の値動きをおさらいして気付くことは、ゴムのファンダメンタルズに基づいた動きは11月の一時期を除いて、ほとんど見られないことです。実際、今年6月から9月まで上海ゴム価格は上昇トレンドにありましたが、同市場の指定倉庫在庫をみると、6月2日の34万530トンから一貫して増加し、9月15日には43万735トンに達しています。在庫が積み上がりながら、価格も上昇しているのです。この背景には、天然ゴム相場のプライスリーダーである上海ゴムのプレイヤーの9割以上が短期の投機筋であることが挙げられます。短期の投機筋は、取引する銘柄の需給要因という比較的長期的な材料だけでなく、他の要因でも相場が動くとみれば積極的に仕掛けてきます。

6月からの上昇場面は、おそらく中国の公共投資の増加でしょう。同じタイミングでLME銅3か月物(チャート②参照)、上海鉄筋など、他の中国先物市場に上場されている資源関連の商品も上昇を開始し、10月の共産党大会を控えて9月にはピークアウトしています。マーケットの大きさから考えて、銅や上海鉄筋の値動きを見ながらゴムの取引をしていると考えられます。

このように他の銘柄に追随する動きは、ゴムに限らずこのところ増えています。主な要因として、中国経済が大きくなり、多くの商品市場においてプライスリーダーになっている点が挙げられます。規制により海外からの金融投資が限られる中、短期筋を中心としたマーケットが形成されているため、値動きも荒くなる傾向があります。

今後のゴム相場は?

話が少し大きくなりましたが、今後のゴム相場の鍵を握るのは、やはり中国でしょう。現在、ファンダメンタルズを材料視していないゴム相場ですが、総需要の約4割が中国向けであるのも事実です。同国の自動車販売は減税措置の縮小から、減速傾向にあります。ただ今後、同国は電気自動車(EV)市場の拡大を目指しており、EVについては再び優遇措置を打ち出してくるでしょう。そうすればタイヤとしてのゴム需要も高まることが予想されます。

また、EVは電気モーター内の巻き線や配線に銅を大量に使用します。国際銅協会(ICA)の試算によると、EVの急速な普及により、2027年には銅の需要が現在の約9倍となる174万トンになるといわれています。そう遠くない将来に、ゴムを含めた資源価格の全面高という場面があっても不思議はなさそうです。

※この記事は、FX攻略.com2017年12月号の記事を転載・再編集したものです 

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