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商品相場から見る新型コロナウイルス[佐藤りゅうじ]

新型肺炎の影響

 新型コロナウイルスが年初から猛威を振るっています。厚生労働省によると、2月23日現在、国内感染者は132名(患者113名、無症状病原体保有者16名、陽性確定3名)だそうです。感染経路が不明のケースも見られるようになっています。中国では、感染拡大ペースは減速してきたとの話も聞かれますが、日本での感染拡大はこれからのようです。今回は、商品相場から見えるコロナウイルスの災禍とお金の流れについて見てみたいと思います。

金(ゴールド)が上伸

主要商品、主要株価指数、米10年債の年初から2月21日までの騰落率(終値ベース)

 まずは、チャート①をご覧ください。これは主要商品、主要株価指数、米10年債の年初から2月21日までの騰落率(終値ベース)を示したものです。年初から比べて上昇しているものが、ドル建て金(ゴールド)、米10年債(利回り低下、価格は上昇)、S&P500、ダウ平均株価です。一方、下落しているものは日経平均株価、シカゴ大豆、LME銅、そしてNY原油となっています。

 特に金の上昇が目立っています。年初から8.33%の上昇となっており、価格的には1517ドルから1648ドル(日中足)まで水準を引き上げました。これは、2013年2月以来、7年ぶりの高値水準です。この背景には、コロナウイルスの影響によるリスクオフの流れがあります。また、長期的な視点としては、多くの中銀がリーマン・ショック後の米連邦準備制度理事会(FRB)の緩和政策によりドルの信認が低下したと判断し、外貨準備における金の比率を高めていることが挙げられます(注:実は、パラジウムも年初から39.5%という強烈な上昇を見せているのですが、これはパラジウム独自の需給に起因しており、今回はチャート①から割愛しています)。

なぜ米株は上昇しているのか

 ここで一つの疑問にぶつかります。なぜ、リスクオフの流れから、金が上昇しているにもかかわらず、米主要株価指数のダウ平均株価、S&P500、ナスダック総合が市場最高値を取ってきたかということです。これは、昨年10月15日からFRBが始めた月額約600億ドルの財務省証券の買い入れ、いわゆるステルス緩和の影響が大きいです。また、トランプ米大統領が、11月の大統領選に向けて中間層向けの減税を実施するとの思惑も働いているでしょう。さらに短期的には、中国政府がコロナウイルス対策として積極的に財政・金融政策を推し進めるとみられていることも支援材料となっています。

 その一方で、米10年債が5.79%も上昇(利回りは低下)しているのを見ると、安全資産にもお金が流れており、リスク回避の動きも強いことが分かります。米株市場と米国債市場が共に買われるケースは、相場の変調の表れと捉えることもできます。株式ディーラーが比較的楽観的な見方を示す一方で、債券ディーラーは保守的な見通しを立てることが多いです。

銅の動きに注目

 どちらが正しいかはその時々ですが、コモディティ市場の値動きを見ることが、一つの手掛かりになります。コモディティ市場は、需給や景気の先行きを敏感に反映します。特に現在のようなお金がジャブジャブで、自社株買いを繰り返す株式市場の場合、コモディティ市場の方が景気に対する先見性が高いと考えています。前出の金の上昇がリスクオフの影響であるように、原油の下落や銅の下落の理由も同様です。コモディティ市場からのサインは目先の景気減速を示しています。

 銘柄別に見ると、原油価格はコロナウイルスの影響を受け、需要が減少するとの見方から大きく水準を引き下げています。また、石油輸出国機構(OPEC)プラスが協調減産を実施している一方で、米国の原油生産が過去最高水準にあることも売り材料となっています。

 景気のバロメーターと呼ばれる銅価格も下落しています。年初から6.62%下落していますが、特に値動きに注目です。1月24日と27日に大きなギャップをあけて下落しており、このギャップを埋めることができれば、目先の危機はひとまず回避されると考えても良さそうです(チャート②参照)。

LME銅3か月物の推移(日足)

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ドル円相場も一段高の可能性

 最後に少しだけドル円について述べると、2月19日に昨年10月から続いた107円台後半~110円台前半のレンジから上放れました。この日の値動きは、ドル買いではなく円売りです。ドルが売られた上、金は続伸となっていました。

 潮目が変わったのは、17日に発表された日本の2019年10-12月期国内総生産(GDP)です。あの日以降、日本経済に対し批判的な記事が海外で急増し、日本株の上場投資信託(ETF)などからの資本流出が目立っています。ドル円の一段高の可能性もありそうです。

※この記事は、FX攻略.com2020年5月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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