女優・投資家である陽和ななみさんがトレード成績向上を目指してFXのスペシャリスト山中康司さんからFXで利益を出すために必要な全てを皆さんと共に学んでいきます。今回もテクニカル分析の基礎について教えていただきます。
値幅観測について
陽和 山中先生にさまざまな分析方法を教わってきましたが、今回は値幅観測とその他のテクニカル指標を教えていただきます。
山中 テクニカル分析では「どこで買うのか?」「どこで売るのか?」「今はトレンドがどうなっているのか?」を考えますが、「どこまで行くのか?」も重要です。例えば、価格が下げ始めたときに「どこまで下がるのか?」、下げている途中で戻しがあれば「どこまで戻すのか?」などを知りたいときに「値幅観測」という手法が大切になってきます。
今回はこの値幅観測の中で、よく使われているフィボナッチ比率を使った「プライス・リトレースメント(以下、リトレースメント)」と「プライス・エクスパンション(以下、エクスパンション)」の二つを紹介します。リトレースメントが戻し、エクスパンションが延長や拡大を意味します。日本では、上げに対する調整を「押し」、下げに対する調整を「戻し」と使い分けますが、英語では両方ともリトレースメントとして扱っています。日本の相場用語は歴史が長いだけあって洗練されていると思いますね。
陽和 ローソク足や平均足など日本で作られたものも多いですよね。
山中 相場の流れはN波動の連続です。Nのような形で連続してジグザグ状に上昇していくことをN波動、反対に下降していくのは逆N波動です。このN波動、逆N波動の一つ目の値幅に対して三つ目がどこまで伸びるのかを観測するのがエクスパンションです。一方で二つ目の値幅を見るのがリトレースメントです。どちらも「1、1、2、3、5、8…」というように一つ前の数字を足していくフィボナッチ数列を基に算出した比率を使います。例えば、フィボナッチ数列の中の34、55、89、144と四つ続く数字の関係から比率を導き出してみます(画像①)。
まず34を三つ離れた144で割ると34÷144=0.236となります。また、55を二つ離れた144で割ると55÷144=0.382になります。さらに隣同士は89÷144=0.618です。これはフィボナッチ数列のどこの数字から取っても必ずこの比率になります。例えば、55÷89を計算すれば隣同士なので0.618になります。反対に、大きい数字で小さい数字を割ると144÷89=1.618、二つ離れた144÷55=2.618、三つ離れた144÷34=4.236になります。これらは黄金分割ともいいますが、要するに落ち着きの良い数字です。
陽和 ピラミッドやパルテノン神殿などの建造物でも使われていますよね。人の顔も黄金比率に近いと、美しいと感じるそうです。
山中 他にも、銀河系の星を見ると渦を巻いている形状ですが、その比率もフィボナッチ比率だったりします。
陽和 ロマンがあって面白いですね。1.618などはエクスパンション、0.618などをリトレースメントで考えればいいんですか?
山中 そうです。エクスパンションではそこまで伸びずに、1.272の割合になることが多いですね。対するリトレースメントの0.618は値幅に対する61.8%ですが、半値の50%を越えるような場合にはその次の78.6%ラインまで戻ることが多いです。値幅観測としては、この78.6%の割合が一番多用すると思います。では、実際にチャートで確認してみましょう(チャート①)。
陽和 トライアングルを抜けるかもしれない局面のドル円月足チャートですね。
山中 今後下放れするとした場合に「どこまで行くのか?」を考えます。最安値の75円56銭から最高値の125円85銭までの値幅に対してどこまで押すのかを考えると、2016年には半値押しになっています。その後は38.2%辺りが節目になっていて、ここを下抜けると100円の大台になると思います。そこをさらに抜けていく場面を考えると、次に61.8%ラインに注目することができ、さかのぼると2013年ごろに小さいペナントが形成されていたラインだと分かります。
陽和 そこが抵抗になりやすく、抜ければさらなる下降につながるということですね。半値の50%ラインを越えたときは61.8%の94円77銭、または先ほどおっしゃっていた78.6%の86円32銭が大きく下げる場合のターゲットになりそうですね。
山中 今回は大きい月足を使いましたが、普段は日足などで見るのが良いでしょう。リトレースメントを確認したので、次はエクスパンションです(チャート②)。
見方としては、年初来高値の112円40銭から6月安値106円80銭までを逆N波動の最初の下げ、その次が109円31銭までの戻しです。そこから直近の安値を下抜け始めたので大きな逆N波動を考えます。形としては戻しの109円31銭から最初の下げ幅と同じ値幅だけ下げる103円69銭というのが一番きれいですが、実際にはその前に戻しています。細かく見ていくと一度78.6%のところで止まって、次も同じラインで反発しています。このラインを抜けてくれば、103円69銭が安値のターゲットになると予測を立てることができます。このように値幅がどんどん加速していくときにエクスパンションを使います。
その他のテクニカル
山中 これまで紹介してきたもの以外のお勧めのテクニカル指標として、経済指標の表示機能に注目してみます(チャート③)。
陽和 TradingViewの機能ですね。
山中 表示してみると、やはりチャートが動いているときには何かしらの経済指標も出ていることが多いです。その他にも個人的に便利だと思うのは、米国シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物のポジションです(チャート④)。こちらはポンドドルのチャートですが、価格が高値のときはシカゴのポジションはロングが多くなっています。
陽和 これはどういったものなのでしょうか。
山中 いわゆる投機筋のポジションですね。相場では実需と、実需に基づかない投機筋のポジションの二つがあります。為替の場合には、この投機筋のポジションと実際の値動きがよく連動しています。チャート④を見ていくと、高値のところからずっと下げていくときにロングからショートに転じています。
陽和 ショートが減ってくるとチャートも戻しの動きをしていますね。
山中 その後にまたショートポジションが増えていくと価格も下げてきています。実際に何が起きているのか、テクニカルでどうなっているのか、ポジションはどうなっているのかという視点で見ると参考になることが多く、為替との相性が良いです。この指標は毎週公表されていますので、CMEが出している対ドルのものに関しては週足チャートに表示させましょう。CMEでは原油など為替以外にもいろいろ取引されているので、興味のある方は調べてみると面白いと思います。他にもTradingViewではいろいろなチャートを見ることができます。有料のアカウントであれば米金利も足し算・引き算で表示できます。例えば、米国10年債金利から2年債金利を引いたものを表示させ、逆イールドを察知することも可能です。
陽和 二つのチャートを見比べなくても、金利差だけを一つの指標で表示すれば「マイナスになったから金利が逆転した」と一目で確認できますね。
山中 いろいろな指標を使いこなしていけるようになると、テクニカルの達人になれると思います。
陽和 使いこなす方法もそうですが、まだまだ学びたいことがたくさんあります。よくテクニカル分析とファンダメンタルズ分析は二大派閥のように捉えられることも多いですが、山中先生からどちらも学んだことによって相場を長期で分析するときの目線がより深くなった気がします。
山中 テクニカル分析は、エコノミストなどファンダメンタルズを中心に分析する人たちからすると、「当てにならない」と批判されることもあります。ですが、なぜこんなにもテクニカル分析の息が長く、いろいろな種類があるのかというと、局面によっては有効に使えるときがあるからです。常に使い続けることができるわけではありませんが、「使える場面で使おう」というスタンスでいれば、相場での勝率は間違いなく上がっていきます。
陽和 山中先生、今回もありがとうございました。
第10回まとめ
- 値幅観測は、「価格がどこまで動くか」を分析する上で重要な方法
- フィボナッチ比率に基づいてプライス・リトレースメントやプライス・エクスパンションで価格の動きを分析・予測する
- 経済指標をTradingViewのチャートに表示することでテクニカル分析に利用できる
- 投機筋のポジションと価格の推移は連動しやすいので要注目
※この記事は、FX攻略.com2020年4月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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シストレ・自動売買 | 裁量取引とは別に自動売買のサービスがあるかどうか。 |
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