ドル円のダウンサイドリスクは小さいと考える理由[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2019年12月2日号

先週のドル円相場

米国感謝祭をはさんで市場は薄商いだったものの、米中貿易協議の進展期待が広がる中、リスクオンの円売りが優勢となり109円台を回復。米GDP改定値など景気指標が堅調だったこともあり、109円台半ばまで上昇した。金曜日には一時109.67円まで上昇し、5月31日以来の高値を示現した。

閑散に売りなし

まさに「閑散に売りなし」の相場格言通りの展開となった。先週一週間の値幅は1円少々。動かない相場で高金利通貨(ドル)をショートしていてはスワップコストの払いでじわじわと損が積み上がってしまう。逆に低金利通貨(円)をショートしておけば、動かない相場で自動的に利益が積み上がっていく。膠着相場では高金利通貨買い・低金利通貨売りのキャリートレードが圧倒的に有利だ。

さらに言えば、感謝祭が終わり12月に入れば世間も市場もクリスマス休暇ムード。参加者は急激に減少し、年度末決算前に収益をブレさせたくない者は、大きな取引を控えるようになる。今週も相場が一段と膠着感を強める中で、先週と同じようにドルが底堅い動きを見せる公算が大きい。

米国雇用統計の読み方

とはいえ、市場が薄いだけに、突発的な要因(サプライズ)があれば相場が大きく動く可能性も排除できない。たとえば金曜日に発表される11月の米国雇用統計。市場予想は、失業率3.6%(前回3.6%)、非農業部門雇用者数が+18.8万人(前回+12.8万人)、平均時給が前年比+3.0%(前回+3.0%)とまずまず良い数字となっている。結果が予想から大幅に乖離すれば、相場は大きく動くかもしれない。

ただFRBが10月に当面の利下げ終了を決めた直後だけに、たとえ結果が予想を大きく下回ったとしても、政策が直ちに利下げ路線に戻ることは考えにくい。結果を見て瞬間的にドル売りが出ても、下落は長続きせず元に戻る可能性が高い。逆に予想を大きく上回る好結果となった場合は、株高・金利上昇・ドル高の流れが勢いづく可能性が高い。今回の雇用統計は、強いて言えばダウンサイドリスクが小さく買い方有利と読む。

米中貿易協議フェーズ1合意はあるか?

もうひとつサプライズがあるとすれば、米中貿易協議の第一段階(フェーズ1)だろう。これが合意できれば、12月15日に予定されている追加関税第4弾の発動が避けられる。今週から来週にかけて交渉はヤマ場を迎えるが、中国側がこれ以上の失血を防ぐために歩み寄る可能性は小さくなく、その場合、株高・円安の流れが加速する公算が大きい。逆に合意できず来年に持ち越しとなった場合は、今と変わらないわけだから、サプライズやショックはさほどない。協議の行方は予断を許さないが、相場へのインパクトとしてはダウンサイドよりアップサイドのほうがはるかに大きいといえる。

「閑散に売りなし」、そして「サプライズがあるとすればアップサイド」だとすれば、戦略としては引き続きドル強気が適切だ。今週も押し目買いスタンスを維持したい。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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