トレイダーズ証券の井口喜雄による【Dealer’sEYE】をお届けします。
先週のドル円は予想以上の強い展開に
先週米ドル/円は107円台を絶好の戻り売りポイントと考えていましたが、予想以上に強い展開となっております。先週末の弱い米雇用統計の結果にも下振は一瞬でしたし、IMMの投機筋円買いポジションがピークアウトしているようにかなりのショートポジションが調整局面に入っているのかも知れません。
さらに麻生財務相の再三にわたる円売り介入発言も功を奏したようで、仕掛け的な売りを躊躇させることに成功したようです。介入への催促相場から下値を模索する値動きを予想していたため、このあたりは完全に読み違えてしまいました。
また、ここにきて読みにくいのがFOMCメンバーの発言です。ニューヨーク連銀ダドリー総裁は「年2回の利上げが妥当」とハト派とは思えない発言をしてドル上昇を加速させています。ハト派の急先鋒で知られる総裁が年2回と言ったことに相当違和感があるのですが、これで6月利上げのシナリオも無視できない展開となっており、今後の動向には注視する必要が出てきました。
ドル円上昇のシナリオは見えず
チャートを見ても上向きの気配が確認できます。
日銀政策金利発表前の高値111.88円から5月安値105.54円の半値戻しとなる108.72円のほか、21日移動平均線、一目均衡表基準線、転換線などがさしかかる111.70円を一気に上抜けるなどテクニカル的な地合いは強そうです。長期的な下落トレンドは継続しているものの、短期的には111.883円から105.548円の61.8%戻しとなる109.46円、そして心理的節目の110円が意識されそうです。
今後の展開ですが、米ドル/円が大きく上昇するシナリオは描きにくく、長期的な円高スタンスに変化はありません。ショートカバーの調整もほぼ消化されており上値はある程度限定できると思っています。しかし、テクニカルの急所を上抜けたことで下げにくくなってきたことも事実です。現段階では積極的に売り進むにはややリスクが高く、一旦冷静になって売りポイント探してみたいと思います。
週末にかけては主だったイベントがないので、株式市場(モメンタム)債券市場(米金利)、商品市場(原油価格)の動向、当局者や要人による発言を注視しつつ、シナリオを練り直したいと思います。
<長期展望>
米ドル/円は、中国を始めとした世界的な先行きの不透明感からリスクオフ地合いが簡単に払拭されるとは考え難く、円高に振れやすい地合いが続くと見ています。また、米利上げペースの鈍化、日銀金融緩和への限界などネガティブな材料は多く、長期的なターゲットとして100円付近までの下値を想定しています。
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