メンタリズム投資家の日々の生活や活動とは
井口 メンタリスト投資家として人気を集めているSaiさんですが、最近の活動や生活スタイルについてお聞かせいただけますか?
Sai 最近は企業からご依頼いただいているイベントに積極的に参加しています。理由はトークスキルを鍛えるためです(笑)
井口 そうですか? YouTubeを見るとトーク力がないようには見えませんが…。
Sai YouTubeは事前に準備がしっかりでき、編集機能があるので大丈夫ですが、ライブ配信をすると全然話せないです。最近は視聴者からの質問がすごく多くなったので、人前で話すスキルを身につけたいと思い参加しています。
井口 すごく意外です。YouTuberだけでなく、投資家としての一面もあるかと思いますが、基本的には自宅でトレードや動画撮影をしているんですか?
Sai あまり外出しないので、ほとんどそんな感じですね。
井口 トレードする時間帯は決まっていますか?
Sai 相場が動く時間帯の19時以降がメインです。私はスイングトレード派なので、チャートに張りついてはいません。ポジションを持って放置している時間は、読書や動画の台本作成などをしています。
井口 トレードに関しては欧州時間に合わせているということですね。
分かりやすい分析が人気を集める秘訣
井口 SaiさんのYouTubeチャンネルの登録者数は6万人を超えています。これはすごい数だと思いますが、登録者数が増えた秘訣は何でしょう。
Sai 最初は特に戦略はなかったです。投資についての会話ができる人が周りにいなかったので、知識や書籍で学んだことのアウトプットの一環として始めました。フィードバックも得られて自分のスキル向上になると思ったからです。
動画配信にあたって、いろいろなYouTuberを参考にしましたが、当初は再生回数が伸びませんでした。よく分からない人の動画なんて誰も見ないと思ったので、一発で覚えてもらうためにパンダの被り物をしました。また、心理学にハロー効果といって、ある対象を評価するときに、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価がゆがめられる認知バイアスというものがあります。私は顔が幼く見られることがあり、スキルなどを語る上でデメリットがあると思いました。余計な情報が入ることで中身の納得感が薄められることを懸念し、あえてサングラスと帽子を着用することで無駄な情報が入らないようにしました。単純に知識で勝負がしたかったんです。
井口 あのパンダの被り物にはそんな意味があったのですね。
Sai ビジュアルがふざけているからこそ中身はしっかりしないと見てくれなくなります。一回目でインパクトを与えてから、視聴者に「ふざけているけど、良いこといっているな」と思ってもらえるイメージでやっていきました。
実際に「勉強になりました」と数人の視聴者から感想をもらいました。リピーターも少しずつ増えましたが、1日10人くらいで急激には増えなかったですね。それからいろいろな投資系YouTuberを見ていると自分なりに思うことがあったので、誹謗中傷ではなく、その人の手法に対して私はこのように思いますという内容を動画にしたらバズりました。ただ、コメント欄は荒れましたけど…。
それでもきちんと分析して根拠もしっかりと固めたので、納得してくれる人もいました。ただ、中には否定的な人もいましたので、最近はあまり人名は出さないようにしています(笑)
井口 有名な人の取引手法について細かく分析し、分かりやすく動画にしていることが人気の秘訣だと思います。その他にはどのような戦略があったのですか?
Sai 投資系以外の、YouTuberを研究しました。リアルタイムで伸びている人がいたので、なぜ伸びているのかを分析して自分の発信スタイルに転用しました。具体的には、全てのセリフをテロップ化したんです。
井口 なるほど。今は全テロップだから見やすいのですね。
Sai 聞くところによると、通勤時の電車の中で動画の音を消して画面だけ見ている人もいるそうです。音がなくても文字があると、それだけで内容が理解できます。それも視聴者が増えた要因ですね。あとは波長です。動画を見てもらうと分かりますが、セリフに「えー」や「あー」のような間がないように編集しています。
井口 全然気がつかなかったです。いわれてみればセリフに隙間がないですね。言葉も早口でリズミカルなので心地よいと思います。
Sai 心理学的にあえてやっています。早口を嫌がる人も一定数いますが、早口の方が視聴維持率も高いです。伸びているYouTuberはほとんどそうでした。全てテロップ化し、セリフにもよどみがないように編集しています。その方が時間あたりの情報量も多いですからね。私もそのようなスタイルでやっていきました。
井口 FXの有益な情報が詰まっていて、Saiさんの動画を見ればスキルが身につくという感覚を覚えた視聴者が多かったのでしょうね。再生時間がそんなに長くなく、出勤前などのちょっとした時間で視聴できるのも人気の理由ではないでしょうか。ちなみに、6万人のチャンネル登録者はどのような属性ですか?
Sai 男女比は男性が93%で女性が7%ですね。
井口 女性7%は意外です。年齢別分布はどんな感じですか?
Sai コア層は35~40歳くらいが圧倒的ですね。割合だと全体の40~50%くらいあります。
井口 やはりFXに興味がある人はその年齢層になると思います。視聴者のFX歴については分かりますか?
Sai 初期のころは投資歴が長い人が多かったイメージがありますが、最近は初心者や未経験者も増えてきました。私はLINE@を使って個別で相談を受けていますが、「FXをこれから始めたい」との質問も来ます。中には高校生からの相談もありました。露出が増えたことで、いろいろな人に見てもらえるようになったことが要因ですね。動画は初心者から中級者で、あまりうまくいっていない人が見ているのではないかと思います。
井口 今後はもう少し初心者寄りの動画になっていく感じですか?
Sai その方向にシフトせざるを得ないでしょうね。
井口 人気の秘訣が何となく見えてきました。しかし、高校生からの質問は意外です。未来の投資家たちに動画を見られているのは良い傾向ですね。
人間の心理を把握し投資メンタルを作る
井口 次の質問ですが、「心理学と投資を融合させた投資メンタリズム」とは具体的にどのようなスタイルなのでしょうか。
Sai もともと心理学が好きで、メンタリストDa iGoさんの動画や書籍をよく見ていました。それと並行して投資の勉強をしていた時期があり、DaiG oさんの理論は投資でも使えると感じました。一般的に心理学は他人に使うイメージがあります。例えば、恋愛心理学だと仕草などで相手の感情をコントロールする方法があります。
私の場合は人に対してではなく、自分に対して使います。メンタリズムを自分に使って自己をコントロールしながら投資をするというイメージです。投資はメンタルが大事だと皆さん分かっていると思います。
井口 確かにメンタルがしっかりしていないと投資で勝つことは難しいです。
Sai しかし「具体的にメンタルって何?」と疑問に思うことがあると思います。メンタルは奥深く、何十年と勝っているトレーダーもメンタルのせいで全資産を失ってしまうこともあります。投資で勝つにはメンタルを安定させるための基盤を作っておく必要がありますが、メンタルをコントロールするには知識だけでは足りません。
例えば、エントリーした瞬間に含み損を抱えてしまい、手法としてはすぐに損切りするべきだけど実際には損切りできないことが多いですよね。行動心理学のプロスペクト理論によると、人間は利益は一刻も早く懐に入れたいと思い、損失はできるだけ回避したいと思う傾向があります。なのでトレードで含み損を抱えても、損切りができないことが多々あります。感情をなくして機械的にトレードすることが重要だとよくいわれていますが、完全に感情をなくすことは人間には無理です。
そのようなときは、機械的になれない理由の根底にある人間の心理を理解することが重要になります。機械的に損切りできない心理状態を知っていれば、あらかじめ対処方法を考えることができますし、そのような状況になっても落ち着いて対処できるようになるからです。
井口 私の場合は何千回、何万回という取引経験から損切りには慣れているので機械的にトレードできますが、初心者の方が悩まずに損切りできるようになるにはどうすれば良いでしょうか。
Sai トータルで考えることですね。何年も続ける前提で投資をすれば、目先の金額は気にならないはずです。
井口 Saiさんはメンタルを非常に重要視していると思いますが、取引手法はどうされていますか?
Sai 基本的に逆張りはしません。通貨ペアはドル円とポンド円がメインです。ドル円は長期目線、ポンド円は短期目線で見ています。昔は逆張りでしたが、ぼろ負けしていました。順張り、逆張りのどちらが良いかは人それぞれだと思いますが、逆張りは合わなかったですね。今は全て順張りで、押し目買いについてはほぼしません。
井口 抜けたところをついていくイメージですか?
Sai 具体的には抜けてすぐエントリーはしません。事前に仕込むこともありますし、基本的に大きな時間軸には逆らわないです。
井口 なるほど。トレードはファンダメンタルズ分析とテクニカル分析のどちらがメインですか?
Sai テクニカル分析が8~9割です。ファンダメンタルズも一応は見ていますが、ほぼ捨てています。
井口 長い時間足のチャートを見ながら順張りするのが基本スタイルで、ポジションに対しては資金管理やルール通りにやっていくということですね。ちなみに、先ほど機械的なトレードが重要だとおっしゃっていました。それならば本物の機械やEAのようなシステムが一番強いと思いますが、いかがですか。
Sai 自動売買がずっとうまくいくことはないと思います。例えば、一つの手法があったとして、それがうまくいく周期みたいなものがあり、一定の期間が過ぎると全く勝てなくなることがあります。システムに任せることは良いと思いますが、通貨ペアや取引のアルゴリズム、稼働させる期間を決めるのは人間です。機械的に取引することは大前提ですが、EAなどを使う場合はどのように使っていくのかが重要です。
(対談は次号に続きます)
※この記事は、FX攻略.com2020年2月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
【後編はこちら】
・現役為替ディーラーが、話題のアノ人と語り尽くす Trader’s対談|ゲスト Sai 後編[トレイダーズ証券みんなのFX 井口喜雄]
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約定力 | 狙った価格で注文が通りやすいかどうか。 |
スワップポイント | 高水準かどうか。高金利通貨の取り扱いの数。 |
取引単位 | 少額取引ができるかどうか。運用資金が少ないなら要チェック。 |
取引ツール | 提供されるPC・スマホ取引ツールの使いやすさ。MT4ができるかどうか。オリジナルの分析ツールの有無。 |
シストレ・自動売買 | 裁量取引とは別に自動売買のサービスがあるかどうか。 |
サポート体制 | サポート内容や対応可能時間の違いをチェック。 |
教育コンテンツ | 配信されるマーケット情報や投資家向けコンテンツの有無。 |
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