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才色兼備なフィスコ企業リサーチレポーターの何でもコラム 馬渕の目|第7回 中国の一帯一路はコロナでも拡大傾向―ドル円はリスクオフに警戒―[馬渕磨理子]

才色兼備なフィスコ企業リサーチレポーターの何でもコラム 馬渕の目|第7回 中国の一帯一路はコロナでも拡大傾向―ドル円はリスクオフに警戒―[馬渕磨理子]

「香港国家安全維持法」を支持表明する国の存在

 ドル円は値動きが小さい状態が続いていますが、世界では新型コロナウイルスの感染拡大が続き、警戒感が高まっています。また、各国の対中強硬姿勢が強まるなどリスクは内在化しており、今後徐々に市場でリスクオフ傾向になる可能性があります。

 中国政府が香港への統制を強める「香港国家安全維持法」を施行したことを受け、6月30日に日本や英国、フランス、ドイツなど27か国は、スイス・ジュネーブの国連人権理事会で中国に対して懸念を示す共同声明を発表しています。さらに、マイク・ポンペオ米国務長官は、6月末に「中国共産党当局者へのビザ制限」および「香港向け防衛関連技術や軍民共用技術の輸出の本土並み規制」などを発表しました。

 一方、同じ会合でキューバがエジプト、エチオピア、トルクメニスタンなど53か国を代表して香港国家安全維持法の支持を表明しています。中国の香港政策をめぐり国際社会が分裂した形となったのです。支持表明の中にはサウジアラビアも入っており、親米国のイメージがある国ですら中国支持であったのは意外な結果です。

中国の「一帯一路」はコロナでも拡大傾向

 中国への支持表明をした国の多くは、援助などを通じて中国と関係の深い国々とみられます。中国による「一帯一路」関係国への投資がここに来て、じわりと影響を及ぼし始めているのです。

 コロナショックで世界の海外直接投資は激減しています。国連貿易開発会議(UNCTAD)は、2020年の世界各国への海外直接投資総額が9240億ドルと、前年比で最大40%減少するという見通しを公表しています。2005年以来の1兆ドル割れが見込まれており、2021年も5~10%の減少が予想され、回復に転じるのは2022年という見通しです。

 しかし、コロナショックの影を全く感じさせないのが中国による一帯一路関係国への投資です。一帯一路投資は2013~2015年に拡大した後、多少の変動はあるものの、基本的に横ばい圏で推移しています。2020年1~5月の一帯一路への非金融直接投資は6.53億ドルでした(前年比16%増)。投資先は、シンガポール、インドネシア、ラオス、ベトナム、カンボジア、マレーシア、カザフスタン、タイ、UAE、バングラデシュなど54か国に上ります。これまでのところ、中国の投資力に陰りは見られないようです。

ドル円は今後、円高に転じる可能性がある

 中国台頭によって、世界はまるで二分しているかのようです。この先、米中対立の激化はますます避けられないでしょう。これが一気に地政学リスクにつながることがあれば、情勢はじわじわと緊迫化する可能性があります。市場がリスクオフに転じる可能性もあるため、常に警戒感は必要です。

 さらに、日本経済には「円高」のリスクがあります。11月の米大統領選挙の波乱や新型コロナウイルスの第2波の拡大などにより、「大幅な調整」の可能性は十分にあります。しかし、基本的には欧米日ともに、なりふり構わない金融緩和の政策を取っていることを大前提に、株価は一定程度下支えされるとみています。ただ、ドル円に関しては、今年の年末~1年後にかけて円高のリスクが存在します。過去、米連邦準備制度理事会(FRB)が最後の利上げを停止すると、その約2年後には円高に振れています。1989年5月、2000年5月、2006年6月の最後の利上げ以降、それぞれ24か月たったころから円高になっています。利上げによるドル高の効果が約24か月たつと薄れる傾向があるということでしょう。

 直近の最後の利上げは2018年12月で、そこから24か月後は2020年12月です。過去の値動きを鑑みると円高のリスクを拭い去れず、円高になれば輸出企業を中心に日本企業にとっては苦しい展開となります。

 第7回まとめ 

  • 香港国家安全維持法をめぐって世界が二分
  • 米中対立の激化からリスクオフのシナリオも考えるべき
  • 米国の最後の利上げから約2年後には円高に推移する傾向がある

※この記事は、FX攻略.com2020年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

ABOUT ME
馬渕磨理子
まぶち・まりこ。投資歴7年目。アベノミクスの立ち上がりの時期に企業で資産運用を任され、3年間の専業トレーダーを経て、フィスコの企業リサーチレポーターへ。現在は日本クラウドキャピタルでマーケティングの業務も行う。同志社大学法学部卒、京都大学公共政策大学院、公共政策修士。大学時代はミス同志社を受賞。
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