米ドル/円予想レンジ 113.00-117.50
「Protection will lead to great prosperity and strength(保護主義は繁栄と強さに結びつく)」-。これは1/20のトランプ第45代米大統領の就任演説だ。米国益を最優先にする姿勢を鮮明にした。ここに極まる、の観である。
3つの壁が円安を抑制か
トランプ政権が保護主義姿勢を強めるなかで、筆者は次の3点に警戒感を覚える。
1点目はトランプ大統領が1/26の共和党上下院集会で「通貨安誘導に対し極めて強い制限を導入していく」と、今後の通商協定に為替条項を盛り込む表明をしたことだ。本邦2016年貿易統計速報では対米貿易黒字が前年比4.6%減の6兆8347億円と2年ぶりの減少が1/25に判明し、同日の参院本会議で安倍首相は「主張すべきは主張」とした姿勢を示した。しかし、TPP離脱を決めたトランプ政権との通商交渉は今後、2国間交渉に収束する可能性が高く、外交交渉が円安を抑制する可能性も否めない。シカゴIMM通貨先物では11月以降、円ショートポジションが急増したが、1/17時点では高水準ながらもその勢いは鈍化し高止まり傾向を示している。2/10の日米首脳会談に向けては思惑が先行し、調整的な円買い戻し、膨大な円ショート整理が進捗しかねないのではないか。
2点目は米・メキシコとの国境沿い約3200キロ(≒日本列島)に壁を造るとした問題である。米税関・国境警備局が政権移行チーム向けに作成した概算費用は113億ドル超との観測で、これはインフラ投資とも捉えられる。しかし、メキシコへの課税検討報と併せると日系企業の部品供給網がメキシコにあることから、その影響は日本株安→円高を危惧させる。
3点目は中国の習近平国家主席が1/17のダボス会議で「中國也無意透過人民幣貶值提升貿易競爭力,更不會主動打貨幣戰(中国には人民元安によって貿易競争力を高めるとした通貨戦争の意図はない)」と呼びかけたことだ。裏を返せば米財務省の為替報告書(次回4月末)が、中国を為替操作国認定する不安への表れとも言えよう。本邦貿易統計によると中国は貿易相手国第2位であることから同国経済の衰退、打撃は日本製品の需要低下、景気圧迫に繋がる恐れとなる。
中長期観点では米景気拡大・インフレ利上げ・ドル高、とした軌道を見込むものの、政治が為替(円)を突き動かす展開も覚悟しておく局面となろう。1/30週の米ドル/円上値焦点は日足一目均衡表の雲上限(115.47-116.12)、1/11高値116.88、1/9高値117.545。下値焦点は月足ボリンジャーバンド中心線114.052、1/25-26安値113.045、1/24安値112.52を推考。
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