ドラギ総裁、ドヤ顔記者会見か?[松崎美子]

今週水曜日には、6週間ぶりに欧州中銀(ECB)金融政策会合と、ドラギ総裁定例記者会見が続きます。とくに、政策変更がない理事会となるため、マーケットの注目度が低くなるのかという質問を受けましたが、そんなことはないと思います。

最近のユーロ圏経済

最近になって、世界景気の足を引っ張っているといわれてきたユーロ圏の景気低迷にストップがかかったような兆しが見えはじめています。火曜日に国際通貨基金(IMF)が発表した、半期に一度の世界経済見通し(WEO)のなかでも、2015年のユーロ圏GDP見通しが、1.2%から1.5%まで改善されていました。そうはいっても、昨年からの原油価格下落の影響を受け、ユーロ圏ではデフレ懸念が根強いのは確かですが、最近になって「低インフレは、いったん底打ちしたのかな?」という数字が続いています。

チャート:ECBホームページ

3月31日に発表された3月分ユーロ圏消費者物価指数(HICP)は、予想通りに、前年比で-0.1%となりました。過去の数字を振り返ってみると、2014年12月 -0.2% → 2015年1月 -0.6% → 2月 -0.3% → 3月 -0.1%と、少しづつではあるものの、改善傾向が感じられます。これもひとえに、3月から始められた国債購入を含む量的緩和策(PSPP)のおかげなのかは、まだ確認できませんが、いずれにしても、ECBの頭痛の種であったマイナス・インフレから、脱却する日も近いのかもしれません。

とうとう増加に転じたバランス・シート

昨年9月の記者会見でドラギ総裁は、「the ECB aimed to expand its balance sheet “towards the dimensions it used to have at the beginning of 2012″ at the peak of the euro zone crisis. (欧州中銀は、ユーロ危機がピークに達した2012年のはじめの頃のバランスシート規模まで、拡大する意図がある)」と語り、2カ月後の11月理事会で正式に「バランスシート規模を2012年はじめの頃の規模まで増やす」ことを約束しました。この≪2012年はじめの頃の規模≫というのは、具体的には、【3兆ユーロ】くらいを意味します。ちなみに、これが決定された当時のECBバランスシート残高は、2兆520億ユーロでした。

そして、今年に入り、条件付き長期リファイナンス・オペレーション第3弾(TLTRO3)が成功したことに加え、3月から開始した国債を含む量的緩和策(PSPP)が順調に進んでいることが手伝い、突如としてバランスシート残高が増えてきたのです。

データ:ECBホームページ

一番最新の残高額は、2兆3341億2600万ユーロとなっており、昨年11月の決定以来、2800億ユーロ以上の増加を達成しました。これで、目標の3兆ユーロをちょっとだけ超えたレベルまで、あと約7000億ユーロとなっています。

ドラギ総裁記者会見での予想

今月の理事会では、金融政策の変更予想もありませんので、ドラギ総裁の記者会見に注目が集まります。とくに、開始から1カ月が経ち、現在も粛々と継続されている加盟国の国債購入に関して、記者からの質問が集中することは容易に想像がつきます。

それに加え、今まで一番頭痛の種であったインフレ率は、依然としてマイナス圏にはいるものの、改善が見えてきたことについて、ドヤ顔で語るかもしれません。

偶然かどうかはわかりませんが、民間貸付などの数字もここにきて改善しておりますし、ギリシャのユーロ圏離脱懸念(Grexit)が連日マーケットで話題にのぼっているにもかかわらず、欧州各国の株価は堅調に推移していることも、ECBの量的緩和策が効果的に機能している証拠とも受け取れます。気の早い金融機関は、量的緩和策がはじまったばかりだというのに、すでにテーパリング(量的緩和策の縮小)の話しをしているところが出てきていると聞きました。個人的には、この話題は少し時期尚早だと考えています。

ギリシャ問題について

私が一番気にしているのが、ギリシャ問題についてのドラギ総裁をはじめとするECB理事たちの対応です。IMFのWEOでは、「ギリシャのユーロ圏離脱 (Grexit) は、ユーロ圏加盟国に痛みを与えるだろうが、(ユーロ圏崩壊などのリスクはなく)どうにかこうにか乗り切れるだろう」と相当楽観的な予想をだしました。ただし、ECB理事会でも同様の意見を披露するのかは、正直疑問です。

先週開催されたユーロ圏副財務相レベルの会合では、ギリシャの改革修正案提出期限を4月17日(金)に設定しました。そして、この修正案内容について、24日に実施されるユーロ圏財務相会合で内容を協議する予定となっています。

まとめ

ギリシャの離脱懸念があるため、どうしてもマーケットはユーロ売りに傾きやすいです。火曜日にIMFが「Grexitは、どうにか乗り切れる」という見解を出しただけで、「ユーロ/米ドル」が150ポイント近く上昇したのを見ても、いかにマーケットがユーロ売り/ドル買いに傾いているかがわかります。

私がいつも見ている週足チャートでは、「ユーロ/米ドル」が下げ止まり、ここからは少し上に戻すかたちになっています。ただし、今月から来月にかけて、Grexitリスクは高まることは確実なので、ユーロを買ってみようという気になれず、今のところ、中長期のポジションはもっていません。

ユーロドル4時間足チャート

非常に短期のトレードとしては、ドラギ総裁の発言内容にもよりますが、IMFとは反対に、Grexit後のヨーロッパに悲観的な見解を出すようであれば、1.0720/30で売るのがおもしろいかもしれません。しかし、損切りはタイトに、30ポイントくらいで見ています。繰り返しますが、私自身は中長期のプライスのイメージと、目先のGrexitリスクとの整合性があわないため、長めのポジションはもっておりません。

松崎美子の写真

松崎美子(まつざき・よしこ)

スイス銀行東京支店でトレーダー人生をスタート。1988年渡英、1989年よりバークレイズ銀行ロンドン本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年に同じくロンドン・シティにある米メリルリンチ投資銀行に転職。その後2000年に退職。現在はFX取引に加え、日本の個人投資家向けにブログやセミナー、YouTubeを通じて欧州直送の情報を発信。著書に『松崎美子のロンドンFX』『ずっと稼げるロンドンFX』(共に自由国民社)。2018年より「ファンダメンタルズ・カレッジ」を運営。DMMで「FXの流儀」のオンラインサロンも始めた。

公式サイト:ロンドンFX

Twitter:https://twitter.com/LondonFX_N20

スクール:ファンダメンタルズ・カレッジ

オンラインサロン:FXの流儀 ~ファンダ・テクニカルを語ろう~

YouTube:FXの流儀

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