「Thank you. Thank you very much, everyone. Sorry to keep you waiting(ありがとうございます。皆さん、お待たせしました)」-。
これは11/9夕刻、米大統領選挙で当選確実となったドナルド・トランプ氏の勝利宣言だ。積極財政・インフラ投資も明言したことで株価急騰、金と債券は急落。米10年債利回りやドルインデックスが上昇し、米ドル/円の11/10終値は106.85に。予見性の低いトランプ氏に対しリスク回避を強めていたのが緩み、反転巻き戻しとなったのだ。
警戒「11.17」。アベ・トラ会談
菅官房長官は安倍首相がトランプ氏と11/10に電話会談し、11/17にNYで会談する方向で調整していることを明らかにした。筆者はその日が米ドル/円方程式を解くヒントになると読んでいる。
国際政治銘柄とも言える米ドル/円は、政治に突き動かされて帰趨する可能性が高く、11/17の「アベ・トラ会談」でどのような同盟関係が示されるかが重要と考えられるからだ。「TPP」、「北方領土・沖縄問題」、そして「アメリカ・ファースト」という選挙スローガンに沿った保護主義政策などの変数を米ドル/円方程式に組み込む場面となるのではないか。
注視「11.17」。イエレン議会証言
1年前の11/17、イエレンFRB議長は米下院要人らに書簡を送付し、FRBに対する議会の監督強化法案「FRB監査法」を採択しないよう要請した。一部の永田町要人は「当選するために見せる顔と当選してから見せる顔は違うのかもしれない」との見方を示すが、トランプ氏は同法案成立には積極的だ。FRBの独立性を脅かし、再度イエレン氏の処遇に言及した場合は、ドル売り警戒となる。
一方で金融規制緩和に意欲的だ。新財務長官にウォール街に精通する候補ら挙がるなどの現実路線や、来年1月の大統領就任後のハネムーン期間(100日間)に巨額減税を柱とする経済再生策を断行する姿勢を市場は好感視している。
2005年のブッシュ政権時、米多国籍企業の海外留保資金を米国内に送金すれば税負担低減となる時限立法「HIA本国投資法」がレパトリ(資金の母国回帰)を促し、ドル高基調を強めた。今回も明確な減税策を打ち出せば、同様の推移を意識するのではないか。
11/14週の米ドル/円はテクニカル観点では月足一目転換106.365、200日線106.565に注視。通貨オプション市場からは1ドル108-110円コールの対応も指摘されているが、まずは、7/21高値107.505、6/9高値107.915超が課題。超えれば6/3高値109.15が視野。下値焦点は106円台維持、11/10東京正午時の戻り安値圏105.00-20。割れると11/10安値104.945、20日線推移の104.50圏を推考。下抜ければ11/9東京時間21時頃の戻り安値103.00圏が試されそうだ。
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