ミノリ ねぇ、サンドウィッチ間瀬君。日銀がマイナス金利政策をとっているのは知ってるんだけど、正直それがどんなことなのか理解できてないままなの。改めて教えてくれない？
間瀬 マイナス金利政策は、一般企業である市中銀行が、日本銀行に預け入れる「日銀当座預金」の一部に、マイナスの金利を設定することだよ！
ミノリ あれ、マイナスの金利になるのは、私たちの銀行口座ではなくて、銀行の日銀当座預金なんだね？ もう少しで自分の銀行預金からお金を全部引き出すところだったよ。ホッ。
間瀬 2016年1月、日銀は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定したんだ。マイナスっていう言葉のインパクトが強くて、一般の人が「自分の銀行預金の金利もマイナスになるのか」と混乱してしまうのも無理はないよね。
日銀は「銀行の銀行」と称されるように、市中銀行が保有する預金の一部を日銀当座預金で管理する役割もあるんだ。マイナス金利政策は、その日銀当座預金の一部にマイナスの金利を設定することを指すよ。マイナス金利政策の目的は、ざっくりいうと「市中に出回るお金を増やすことで、消費や投資を活発化させ、物価の上昇や経済の活性化につなげる」ことだよ。
ミノリ 銀行の日銀当座預金の一部をマイナス金利にすることで、なんでお金が出回るようになるの？
間瀬 まず、日銀当座預金とは何か、から説明するね。日銀当座預金とは、銀行同士の送金や、短期資金の融通をするコール取引の決済などに用いられる口座なんだけど、それ自体は「銀行は、お客さまの預金を元手に融資を行うのだから、預金の一定割合を日銀に預け入れなさい」ということを定めた「準備預金制度」の下で成り立っているんだ。
そして、日銀当座預金は「基礎残高」「マクロ加算残高」「政策金利残高」の三つに分けられていて、いわゆるマイナス金利が設定されているのは政策金利残高と呼ばれる部分だよ（図①）。
ミノリ へぇ！ 0.1％の金利がつく部分、0％の部分、マイナス0.1％の金利の部分と分かれているんだね！ でも、なんで政策金利残高をマイナス金利とすることで、お金が多く出回るようになるの？
間瀬 まず、政策金利残高にマイナス金利が設定される状況で、銀行がどう思うか考えてみよう。
ミノリ ん～、お金を預けているのに金利を払うなんて嫌だから、マイナス金利が発生する部分を減らしたいって思うかなぁ。
間瀬 そうだね！ そのときの銀行がとる動きとしては、政策金利残高を減らすべく、他の銀行に対して「金利をお支払いしますので、お金を借りてください」と、お願いするんだ。
ミノリ え！ お金を貸す側が金利を払うって…マイナス金利の貸し出しってことだよね!?
間瀬 その通り！ マイナス金利でも銀行が資金を貸し出すのには理由があるんだ。
例えば、政策金利残高にマイナス0.1％の金利が設定されていても、他の銀行に対してマイナス0.06％の金利で政策金利残高を貸し出すことができたら、銀行は差し引き0.04％の金利を日銀に支払わないで済むよね。次のイメージ図②を見ると、銀行はマイナス金利で政策金利残高の貸し出しを実行すると、400万円分の金利支払いを回避することができるのが分かるね。つまり銀行は、政策金利残高をマイナス金利で他の銀行に貸し出したとしても、マイナス0.1％よりも高い金利で貸し出すことができれば「マイナス金利政策による損失」を減らせるんだ。
ミノリ 0.1％の金利を支払うか、0.06％の金利を支払うかなら後者を選ぶもんね。
間瀬 銀行同士の資金の貸し借りにおける金利がマイナスで推移すると、個人や企業が銀行から借り入れる際の貸し出し金利にも低下圧力がかかると考えられるよ。貸し出し金利が下がると、個人や企業にとってはお金を借りるハードルが下がるよね。お金を借りやすくなることで、個人は車や家を購入しやすくなるし、企業は設備投資などに取り組むことができて経済活動が活発になるよね。
つまり、マイナス金利政策は低金利環境へ導くことで、消費や投資の活発化を図っているんだよ。
ミノリ なるほど、マイナス金利政策の仕組みがよく分かりました！
間瀬 マイナス金利は2020年4月現在、マイナス0.1％だけど、最近「マイナス金利政策の深掘り」がうわさされているよ。政策金利残高にかかるマイナス金利のマイナス幅をさらに広げるということだね。教科書通りだと、日本の市中金利がさらに低下し、円売り・株高へつながると考えられるけど、同時に銀行収益が悪化し、銀行はさらに厳しい状況になると考えられるよ。銀行が倒産すると取引先の資金繰りが悪化して連鎖倒産につながり、地域経済へのマイナス影響が考えられるね。マイナス金利政策はこの副作用が大きいとされていて、いろいろな批判もあるんだ。
ミノリ そうなんだね。日銀がどんな手を打つのか、今後も注意していきたいね。今日もありがとう。サンドウィッチ間瀬君。
※この記事は、FX攻略.com2020年7月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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