米国雇用統計を都合よく解釈 11月はドル上昇のアノマリーも[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2017年11月6日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、113-114円台で底堅い動き。金曜日には、米国10月の雇用統計で非農業部門雇用者数と平均時給が予想を下回ったことから、発表直後はドル売りの反応となったが、12月の利上げ判断に影響はないとの見方から押し目買いも入り、一時114.43円まで反発した。なおFRB新議長にはパウエル氏が指名されたが、大方の予想通りとあって新たな反応は見られなかった。

米国雇用統計の影響は?

米国雇用統計は、非農業部門雇用者数が+26.1万人と予想の+31.3万人に届かなかったが、8月分と9月分が合計9万人上方修正されており、実質的には予想を上回っているとも言える。また失業率は4.1%と16年10ヶ月ぶりの低水準となり、労働市場の逼迫が一段と強まっていることを示している。ちなみに10月28日までの週の新規失業保険申請件数(4週移動平均)は23.25万人に減少し、なんと1973年4月以来44年6カ月ぶりの低水準となった。労働市場にはもはや働ける失業者がほとんどいない状態と言っても過言ではないだろう。12月FOMCでの利上げ見通しに影響はない。

一方、平均時給は前年比+2.4%と予想の+2.7%を大きく下回り、期待はずれとなった。高すぎた9月分の反動と見ることもできるが、その9月分も2009年以来の高値だった+2.9%から+2.8%に下方修正されている。労働参加率が低く、長期失業者の割合が高いといった質的なスラックも解消されておらず、完全雇用下でもインフレ期待が高まらない状況が続いている。FRBは利上げを急ぐ必要はなく、イエレン氏から議長のバトンを受け取るパウエル氏も、従来の穏健路線を踏襲すると見ていいだろう。利上げ期待を材料にドルが独歩高となる可能性はひとまず後退しそうだ。

ただし、インフレ懸念が高まらず、FRB新体制が穏健路線を引き継ぐことは、株式市場にとっては安心材料となる。米国景気は堅調で、緩やかな利上げと株高が共存できる、市場にとって都合の良い状態だ。このようなゴルディロックス(適温経済)が続くとすれば、緩やかな金利上昇に応じたドル高とリスクオン型の円安が同時進行する可能性が高くなる。

114.50円を上抜けして一気に上昇加速か

これからクリスマス休暇シーズンまでの1ヶ月、投機筋も今年最後の勝負に打って出てくるはずだ。11月は米系企業のリパトリや本邦機関投資家の外債投資などでドルが上昇しやすい時期でもあり、実際2012年以来5年連続でドル円が上昇しているというアノマリーもある。今年のドル円相場はこれまで107円~118円台と非常に狭いレンジで推移しているが、その分相場の変動エネルギーはマグマのようにたぎっているかもしれない。今週はドル円が重要レジスタンスである114.50円を上抜けして一気に上昇が加速するシナリオを想定しておきたい。

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雨夜恒一郎(あまやこういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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