米国の通貨政策の読み方 「建前の強いドル」と「本音のドル安」[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2018年1月29日号

先週のドル円相場

先週の為替市場は、米国要人のドル発言に翻弄された。まず米国の通貨政策を司るムニューシン財務長官がダボス会議で「貿易に関して言えばドル安は良いことだ」と発言。ドル円は109円台を割り込み、一時108.50円と昨年9月以来の安値をつけた。一方で長官は「ドルの強さは米国経済の強さ」とし、長期的には強いドルを支持する考えも表明。その後、トランプ大統領が「ムニューシン財務長官の発言は文脈の問題。最終的には強いドルが望ましい」と発言したことから、ドル円は109.70円近辺まで反発した。

 ドル高?ドル安?トランプ大統領の好みは?

「殴ってからさする」のは米国の常とう手段だ。米国は長らく「強いドルが国益にかなう」という題目を掲げてきたが、それを額面通り信じている市場参加者はまずいない。自国製品や技術の国際競争力を高めるにはドル安のほうが有利だし、インフレが目標を下回っている現在、物価管理上もドル安のほうが都合がよい。米国の歴代財務長官は「強いドル」という空念仏を唱えながら、たびたび意図的なドル安誘導を行ってきた。トランプ大統領自身も「アメリカ・ファースト」と保護主義を隠そうとしていないし、ドル高とドル安本当はどちらが好みかと尋ねれば、おそらくドル安と答えるだろう。

ただし、あまり露骨に「弱いドル」「ドル安政策」を掲げてしまうと、投資家のドル資産離れを招き、巨額の貿易赤字のファイナンス(=海外からの米国債投資)に支障が生じる恐れがある。米国が本音である「ドル安歓迎」を口にすると、必ず「長期的には強いドル」という建前がセットで出てくるのはこのためだ。それに今どき自国通貨安政策を露骨に掲げれば、他国から貿易戦争だの近隣窮乏化だのと叩かれる。今回のムニューシン発言に対しても、さっそくECBのドラギ総裁から「われわれは通貨安競争を禁じられており、為替レートをターゲットにできない」と批判の声が上がった。どこの国も内心は自国通貨安がいいと思っているが、口には出さないのがルールなのだ。

それでもトランプ政権のそこかしこからドル安発言が漏れ出てくるのは、ドル安にしたい下心がよほど強いからとしか思えない。今後は「ドル安歓迎」と「長期的には強いドル」の比重が次第に前者に傾いていき、しまいにはなりふり構わぬドル安政策一色になってしまう恐れもあるのではないか。手っ取り早い景気刺激策である自国通貨安の誘惑というのは、それほどまで強いものなのである。

ドル安の流れに注視が必要

もちろん米高官の発言一つでドル安になるというものではないが、注意すべきは、すでにドル安の流れが固まってきたところにこういう話が出てきたということだ。ドルの底割れを促すダメ押しとなる可能性があり、今後も注視していく必要があるだろう。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

twitter:https://twitter.com/geh02066

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