米利下げは25bpが濃厚!材料出尽くしの先取りが始まるか[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2019年7月8日号

先週のドル円相場は

先週のドル円相場は、米中貿易戦争の「一時休戦」を好感して週初に108円ミドルまで上昇。その後、欧米の債券利回りの低下を背景に相対的な円高が進んだことから107.53円まで下押ししたが、金曜日に発表された米国6月の雇用統計が強い結果となったことから、108.64円まで上昇し、およそ半月ぶりの高値をつけた。先週の当コラムでは、FRBの大幅利下げ観測の後退や米中貿易摩擦の緩和を背景にドルがしばし堅調に推移すると予想したが、おおむねそのような展開となった。

大幅利下げの確率は低下

米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が+22.4万人と予想の+16万人を大幅に上回った。前回5月には+7.2万人と下振れしたが、過去12か月の平均では+19.3万人と巡航速度そのもので、米国の労働市場は完全雇用の下でも依然健全なペースで雇用を生み出し続けていることがわかる。この結果を受けて米国長短金利は上昇し、今月のFOMCで50bpの利下げが行われる確率は30%から5%未満まで低下した。

大幅利下げの期待は大きく後退 出所:CME

利下げサイクル入りは確実

一方、平均時給は前年比+3.1%(前回+3.1%、予想+3.2%)と予想の範囲内であり、賃金上昇は依然緩やかでインフレリスクも小さいことを示している。アトランタ連銀が算出する「GDPNow」によると、第2四半期の成長率は+1.3%(前期比年率)と前期の+3.1%から大きく減速し、2017年第1四半期(+1.2%)以来の低成長となる見通しだ。市場が利下げを完全に織り込んでいることもあり、7月FOMCでの利下げサイクル入り(25bp利下げ)はほぼ確実と見ていいだろう。

第2四半期GDP成長率は1%台か 出所:アトランタ連銀

利下げ開始ならドル上昇?

かかる状況下で、今後のドル円相場をどう予想していくべきだろうか。米国の利下げサイクル入りでドル下落だろうか。否、相場は常に先回りするものという大前提に立てば、逆のシナリオが浮かんでくる。FF金利先物はすでに年内25bp×3回の利下げ(目標レンジ1.50-1.75%)を強く織り込んでおり、米2年債利回りは1.8%台と2回分の利下げを織り込んだ水準にある。つまり市場金利はすでに利下げを先取りして低下しており、為替市場もそれに従っていると考えるのが合理的だ。

FF金利先物は年内3回の利下げを予想 出所:CME

FRBが利上げサイクルに入ったのは2015年の12月だが、ドル円はその半年前に125.85円でピークを付けており、利上げ開始後は逆に急落した。他の要因もあったにせよ、わずか半年で99円まで下落している。市場は利上げを先取りしてドルを買い上げ、利上げ開始後は材料出尽くしでドルを売ったのである。

ドル円週足 出所:NetDania

この経験則を現在に当てはめれば、7月30-31日のFOMCで想定通り25bpの利下げが行われると、材料出尽くしでドルが上昇するという予想が導かれる。景気は減速するといってもリセッションにはならないゴルディロックス(適温経済)が前提だから、米国株式市場は利下げを好感してさらに上昇する可能性が高く、リスクオンの円安にもつながるだろう。

7月31日にかけて、ドル円は幾分売られる可能性があるものの、ドル安トレンドも最終局面に差し掛かっていると考えたほうがよい。このようなシナリオは、長く相場をやっている者であれば誰でも容易に思いつくため、実際はもっと早く「材料出尽くしの先取り」が始まる可能性もある。今週はドル弱気スタンスを撤回し、ドルショートを解消する方針で臨みたい。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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