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米国雇用統計は好結果だがドルの上値は重い[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2018年6月4日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、イタリアの政局混乱や株安を背景としたリスク回避型の円買いと、米国債利回り低下の流れを背景としたドル売りが先行し、一時108.11円まで下落した。しかし週後半はイタリアの政局懸念が後退し、買い戻しの流れに。金曜日には、米国5月の雇用統計が予想を上回ったこともあり、109.73円まで反発した。

米国雇用統計の結果は利上げを後押しするか?

米国雇用統計は、失業率が3.8%と2000年4月以来の水準へ低下するとともに、非農業部門雇用者数は+22.3万人と予想+19.0万人を上回った。今月12-13日に開催されるFOMCでの利上げを後押しする内容といえるだろう。FF金利先物はすでに今月の利上げを90%以上織り込んでいる。

一方、注目の平均時給は、前月比+0.3%、前年比+2.7%と予想(+0.2%、+2.6%)を上回ったものの、2016年10月につけた2.8%のピークを越えられずにいる。当時から失業率は1%低下し、ほぼ完全雇用状態となっているにもかかわらず、賃金の伸びが加速しないという「謎」が継続していることになる。

平均時給の伸び(前年比%) 出所:米国労働統計局

賃金が伸び悩み、インフレ目標の達成がおぼつかない中では、FRBは利上げを急ぐ必要がない。先週木曜日に発表された米4月のPCEコアデフレータも前年比+1.8%(3月は+1.9%から+1.8%に下方修正)とインフレ目標の2%に届かなかった。FF金利先物が織り込む利上げ確率を見ると、年内あと2回の利上げ(2.00-2.25%)の確率が46.9%と、「あと3回」の32.4%を依然上回っている。つまり雇用統計を受けて利上げ期待が高まったわけではないのだ。米国債利回りも先月のピークと比べれば大きく低下したままであり、金利面からはドルを押し上げるプラス要因は感じられない。

出所:CME Group

リスクオン効果はどうか?

では地政学リスクや政局リスクの低下によるリスクオン効果はどうか。米朝首脳会談はすったもんだの末に当初予定通り6月12日にシンガポールで行われることになった。またイタリアではコンテ首相を軸とした連立政権が発足し、総選挙は回避されることになった。確かに先週前半の極端な不安感は払拭されたかもしれない。しかしそれらは、悪材料が顔をのぞかせたあとに引っ込んだにすぎず、別に好材料が出てきたわけではない。むしろトランプ政権の関税発動による貿易戦争の懸念や、中東情勢や国内政局など不透明要因はまだいくらでもある。リスクオン型の円売りもまた限界がある。

ドル円が先月のピークだった110-111円台を突破していくには、マイナスがゼロになるだけでなくプラスになる必要があるが、現段階ではそういった兆候は見られない。今週もダウンサイドの警戒を怠らないほうがいいだろう。

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