●聞き手:蛯沢路彦(編集部)
2019年の相場はEAにとって難しいものだった?
蛯沢 去年はあらゆるEAが好調でしたが、年末から調子が狂い始めて、今年には絶不調に陥ってしまった…と言われています。そのあたりの相場の流れを、どのように見ておられますか?
ねこ博士(以下、ねこ) 私はEAユーザーというよりは開発者側なので、参考になることが言えるか分かりませんが、確かに去年前半までに人気のあったトレンドフォロー型のロジックが、苦手とする相場になってしまったのかと思います。
似たようなロジックのEAの場合、普段は異なる場所でトレードする性質があったとしても、トランプ相場のような突発的な上下動が発生すると、近いところでエントリーしてしまい、それらが同時に負けてしまう…ということが、起こり得ます。
蛯沢 トランプ相場のドッタンバッタンという上下への大きな変動が、トレンドフォロー型にとって負けやすいものだったんですね。
ねこ 例えば私の「Pips_miner_EA」(ピップスマイナー)は、相場の変化の影響を受けなかったと思います。これはレンジを狙うもので、なおかつ朝の時間帯しかトレードをしないからです。EAには相場にマッチして調子の良いときと、マッチせずに調子の悪いときがあるものです。ひょっとしたらその悪いときが、その先ずっと続いてしまうかもしれない。そのあたりの見極めは難しいですね。
最近の相場にはAIや新しい技術が入ってきています。それらの影響で相場の性質が大きく変わっているのかもしれません。正月のフラッシュクラッシュのような今までにない動きは、そういったAIなどの影響かなと想像しています。
EAを選ぶときは多角的な情報から判断すること!
蛯沢 ご自身のブログや、投資ナビ+(※1)で、いろいろな記事を投稿されています。EAユーザーが一度は疑問に思う事柄を幅広くフォローしてくれている印象です。その記事にもまとめられていますが、良いEAを選ぶ優先順位とは、何でしょうか? ここで改めて教えてください。
ねこ 一つ、二つの項目ではなく、総合的に判断することですね。例えば、最大ドローダウン、トレード頻度、その開発者さんのそれまで作ったEAの成績、そのコミュニティにどんな内容が書かれているか、そういった事柄をより多くチェックするほど良いと思います。
蛯沢 よくありがちな「フォワードテストが良いから」「バックテストが良いから」「誰々がお勧めするから」…って単純な理由で選ぶのではなく、あらゆる角度から総合的に判断するということですね。
ねこ あらゆる方向から、くまなくチェックする必要があると思います。
蛯沢 EAのタイプ、ロジックの優位性を見抜く方法はありますか?
ねこ この先にどんな相場が来るかによるので、その質問への回答は難しいですね。今年の前半みたいにトレンドフォロー型が苦手な相場もあれば、時にはトレンドフォロー型が好調な相場もきます。基本的に、EAがずっと好調ということはなくて、必ず不調期がやってきます。好調と不調を繰り返すということは、頭に置いておかなければなりません。
蛯沢 勝ったり負けたりの波があって、その損益曲線に一喜一憂してはいけませんね。運用は長い目で見ないと。
ねこ とはいえ例外的に、明らかに勝ちすぎという状況が続いたら、そこで勝ち逃げするのもありかもしれません。その判断は、運用する人次第だと思います。
蛯沢 では、EA選びについてアドバイスをお願いします。
ねこ EAの選び方というのは、経験や能力によるんじゃないかと思います。勝てるEAを見抜くっていうのは、EAを開発するよりも難しいことかもしれません。たとえEAのコードが分かっていても、それが将来的に勝てるかどうかを判断するというのは、かなり難易度が高いと思います。そういう意味で言うと、どのEAでどんな利益を出しているかという情報は、貴重ですよね。お金を出してでも知りたいところです。
蛯沢 まさにそんな需要があって、実際にEAのポートフォリオや収益を公開するトレーダーさんのコミュニティが支持されているケースもあります。ただ、有料に限らず、しっかりとした無料の情報もあるので、ユーザーとしては質の高い情報収集を心がけたいですね。
ちなみにEA運用について、トレンド相場時にはトレンドフォロー型に、レンジ相場時にはレンジ型に切り替えよう!という考え方もあります。この考え方については、いかがでしょうか?
ねこ その考え方は良いと思うんですが、課題はどうやってトレンド相場とレンジ相場を見分けるかですね。今までトレンド相場だったという過去のことは分かるけど、それからどんな相場になるかという未来のことは分かりません。それなので、いつEAを切り替えれば良いのかという判断が難しいです。
(※1)GogoJungle(ゴゴジャン)の記事投稿サービス
十年前から人気の朝スキャEA!
蛯沢 これまでEAユーザーを取材してきて、意見が真っ二つに分かれているのが、EAは動かしっぱなしが良いのか、経済指標やイベントでオンオフした方が良いのかというテーマです。いかがでしょうか?
ねこ う~ん、それは難しいテーマですね。どちらが良いとは言い切れません。EAの種類にもよりますし、それを使う人の考え方にもよると言えるでしょうね。ただ基本的には、指標発表前にEAを止めた方が、安全性は高いかなとは思います。というのも、指標発表時にはスプレッドが拡大しやすいので、そこでエントリー・決済などの動作をしてしまうと、スプレッドが広い分だけ、損をしやすくなるからです。
ただし、実際にはゴゴジャンさんに出品されているEAの多くは、経済指標などでも動かしっぱなしなのですが、それでも良い成績を残しているものが、多数あります。これは、スプレッドフィルターの機能があることで、指標発表時などでのエントリーが制限されているから、と言えると思います。なので、「指標発表前には止めた方が安心ではあるけれど、動かしっぱなしでも特に問題がないEAも多い」というのが、実際のところかと思います。
ただ、指標発表前にEAを停止するという行為はある意味、EAの動作を“邪魔する”ような形にもなりますので、それがEAのパフォーマンスを下げるという可能性も、ゼロではないと思います。なので、これはなかなか難しい、永遠の議題かなと思います。
蛯沢 では質問の角度を変えまして、動かしっぱなしで良い成績が出るものが、EAの理想型だという考え方もあります。開発者として、どのように考えられていますか?
ねこ 基本的には、そうなることを目指しています。ただ、どんなに優位性があるロジックでも相場が変わってしまったら、通用しなくなってしまう可能性が常にあります。
蛯沢 それでは、これまた別の議論で、バックテストの期間について、どれくらいが適切なのかというテーマがあります。長く見た20年が良いのか、その半分の10年で十分なのか、それとも古い期間はノイズと考えて直近の相場だけの2~3年で良いのか。
ねこ 基本的には長い方が良いかと思っています。ただ、短いからといって絶対ダメということもないですね。そこは開発者さんの考え方によるんだと思います。
蛯沢 そんなバックテストについて、チェックすべきポイントを教えてください。
ねこ あまりにもきれいな右肩上がりのグラフは、カーブフィッティング(過剰最適化)かもしれないですね。開発者目線の話になりますが、一番良いのは、大した最適化をしていないけど、勝てるというものです。シンプルなコードで作ったら、ものすごく勝てた、みたいな。私のEAでいうと、ピップスマイナーがそうでした。こういう開発者側の事情はユーザーさんに見えることはないですが、そのようなEAを集めると、良い成績になるかもしれませんね。
蛯沢 個人的な経験ですが、多くのEAトレーダーさんから、ピップスマイナーを推薦されてきました。それほど評価が高いんですが、ねこ博士さんご本人としても自信作なんですね。
ねこ いろいろEAを作りましたが、ピップスマイナーは我ながら良くできていると思います。朝の時間帯特有の動きがあって、利益を取りやすいんです。そこを狙います。
蛯沢 いわゆる朝スキャですね。
ねこ 朝スキャのEAは、私がEA開発を始めた十数年前からあったんですよ。そのころから、朝スキャ、朝スキャと人気があって、皆さんが勝ちまくっているというときもありました。
蛯沢 そうなんですか! 定番の相場攻略なんですね。では、朝スキャが苦手な相場とは、どんな状況でしょうか?
ねこ 朝なのに、トレンドが出てしまう相場ですね。そもそも日本時間の朝は、上がっても下がるか、下がっても上がるという動きが多いんです。だからそこを逆張りで狙う優位性があります。ただ、ごくまれにトレンドが出てしまうことがあって、それが苦手なパターンですね。
蛯沢 いっそのこと、朝スキャEAだけに絞るという戦略はどうでしょうか?
ねこ その優位性は…分からないですね。結局は、今後どんな相場が来るか、ですから。
ねこ博士の十八番はポンドドルのEA
蛯沢 EA開発を始めたきっかけについて教えてください。最初からFXだったんですか?
ねこ そうですね。最初は裁量トレードを少しやってみたんですが、理系の人間なので、自分の感覚でやっても勝てないだろうと思いました。それに、トレード手法を思いついたとしても、検証作業が面倒だなと。それなら、プログラムを書いて機械にやらせた方が早いだろうって、EAを作り始めました。
蛯沢 検証が面倒だからプログラムを書こうって…根っからの理系脳なんですね。
ねこ EAは、開発が好きじゃないと作れないと思いますよ。かなり地道な作業を繰り返す必要がありますから。
蛯沢 そんな始まりから、自信作のピップスマイナーが生まれたのは、いつごろなんですか?
ねこ 初期のものではないですが、比較的早めです。3分の1くらいのときですかね。こんなのができた、なんだろこれって思ったら、すごく良い成績でした。
蛯沢 開発者さんの中で、ロジックはシンプルであるほど良い、という派閥もあります。どう考えますか?
ねこ 難しい質問ですね。シンプルなロジックで勝てるのは、確かに良いような気がします。条件をたくさん入れるほど、カーブフィッティングになってしまう傾向がありますからね。ただ、裁量トレードが上手な人は、視覚的にだったり感覚的にだったり、かなり複雑なことをやってらっしゃいます。それをコードで表現するとなると、複雑にならざるを得ない傾向もあります。なので、一概には答えられません。ただ、シンプルで勝てるロジックは、そうそう見つからないです。それを見つけるのは、相当ハードルが高いと思います。
蛯沢 今回、ねこ博士さんのEAの熱心なユーザーから、質問を預かってきました。「ポンドドルのEAが突出して高いパフォーマンスを維持していると思いますが、この通貨ペアに何か特徴があるのでしょうか?」という質問です。
ねこ 特徴的な値動きから優位性のあるパターンが出て、かつスプレッドが狭く、広がりにくいのが、ポンドドルです。豪ドルカナダドルや豪ドルNZドル、ユーロ豪ドルなども特徴的な値動きをするんですが、これらはスプレッドが広がりやすいんです。そのために勝ちにくくなっています。そこをかいくぐってトレードするようにプログラムを組まないとうまくいかなくて、なかなか手強いんです。
スプレッドで言うと、ドル円やユーロドルが最も狭いわけですが、ポンドドルよりは勝てるパターンが抽出しにくい面があります。これは開発者によって意見は異なると思うんですけどね。
蛯沢 勝ちパターンの抽出とスプレッドにおいて、ポンドドルが最も適しているんですね。では今後、ポンドドルの新作が出たとしたら、期待して良いですか?
ねこ そうですね、今までにないタイプのものを作り出そうとしているところです。
蛯沢 では、期待させていただきますね。質問がもう一つありまして、「レボリューション系やピップスマイナー系のタイプ、吹雪や粉雪、ブリザードのタイプは、他の開発者さんにはないロジックだと思います。これらの型を開発した経緯を教えてください」というとてもマニアックな内容です。
ねこ 確かに珍しいと言えば、珍しいかもしれませんね。開発の経緯と言いますか、トレンドフォローなどに偏らずに、いろんなタイプのロジックを作るようにしています。それは、いろんなロジックの作り方を知っている方が、汎用性が高いと言うんでしょうか、その後の開発にもつながると思うからです。
蛯沢 まだまだ作りたいロジックはたくさんある…といったところでしょうか。
ねこ そうですね、今後も良いEAを作って、皆さんに提供できればと思っています。いろいろなEAを作って、何かの調子が悪くても、他の何かの調子がフォローしてくれる…というようにしたいです。
(取材日:2019年10月8日)
※この記事は、FX攻略.com2020年1月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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