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FX力を鍛える有名人コラム

これからの外国為替場の行方 第117回(月刊FX攻略.com2020年1月号)[田嶋智太郎]

米株価指数が最高値更新ならドル円も一段の上値を追う

 前回更新分の本欄では、9月のNYダウ平均について「今年7月につけた史上最高値=2万7398ドルに迫る動きが見られた」と述べたうえで、一気にリスク選好ムードが盛り上がった市場に関しては「9月を通じて上昇した米・日株価にも、さすがに目先の高値警戒感が募ってきている(一旦調整の可能性がある)」とも述べておいた。

 そして案の定、10月に入って間もなく米・日の株価は一旦大きく下押す場面を迎える。直接的な要因として大きかったのは、10月1日に発表された9月のISM製造業景況指数が10年ぶりの低水準になったことである。その結果、NYダウ平均は一時的にも2万5700ドル台まで大きく下落することとなった。

 このケースでは、米指標の悪化によって市場で米景気の減速懸念が強まったことが株安の一因となったわけではあるが、やはりそれ以前に一旦大きく株価がリバウンドしたことで、当面の高値警戒感が拭えない状況にあったことも軽視はできない。その意味で、執筆時点において再び米株価が史上最高値水準を試すような展開となってきていることに対して、あらためて目先の警戒を要すると心得ておく必要があると考える。

 もちろん、目先の調整もソコソコに、ひとたび主要な米株指数が史上最高値を上抜ける展開となった場合には、そこから一段の上値余地が拡がる展開へと発展する可能性も大いにある。そうなれば、自ずとドル円やクロス円が位置するところにも大きな変化が生じるかも知れない。

 なにしろ、ドル円について言えば、今年は年初来の高値(=112.40円)と執筆時までにつけた安値(=104.45円)との値幅が8円弱しかなく、やや異常と言えるほど小さい値幅のなかでの値動きに留まってしまっている。昨年(2018年)ですら、ドル円の年間の値幅は10円ほどあったわけで、今年もせめて同程度の値幅は生じると考えるなら、これから年末までに114円台半ばぐらいまでドル高・円安方向に振れる場面があってもおかしくはないと言えよう。

FOMC後はどう転んでもドル買いが基本となる!?

 ちなみに、執筆時点においてNYダウ平均は7月につけた史上最高値まで「あと数百ドル」という水準。その一方で、S&P500種については10月25日に一時3027ポイント台まで上値を伸ばし、7月につけた史上最高値=3038ポイントにほぼ顔合わせする展開となっている。

 今後、ひとたび史上最高値を上抜ける展開となれば、そこから一段と上値余地は拡大し、S&P500種については少し長い目で3200ポイントあたりが次の上値の目安になってきてもおかしくないものと見る。

 むろん、そうなればNYダウ平均も自ずと史上最高値を更新する展開となり、少し長い目で3万ドルを意識した展開へと発展して行く可能性が大いにあろう。つまり、執筆時において200日移動平均線(200日線/執筆時は109円処の節目水準に近い)に上値を押さえられた状態を続けているドル円(チャート①参照)が、今後、晴れて同線をクリアに上抜けるようになるかどうかは、一つに「主要な米株価指数が史上最高値を更新する強気の展開となるかどうかにかかっている」ということになる。

 なお、その点については10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果も大きく関わってくることと思われるが、まだ執筆時点では結果が判明していない。執筆時の市場では「今回のFOMCにおいて今年3度目の利下げ実施を決定する」と見る向きが大勢を占めている。そういった市場のムードをしっかり掌握しているはずの米連邦準備制度理事会(FRB)が、事前に何ら特別な動きを見せていないことから推察するに、おそらくサプライズはないのであろう。

 そうなると、次に市場の関心は「12月のFOMCにおける追加利下げの有無」に移ることとなろうが、どうやら市場には「今回で一旦休止」と見る向きが少なくないようである。そうであるとするならば「FOMC後の記者会見でパウエル議長は休止の可能性を示唆するような何らかの発言をする」と見る向きもあり、場合によって市場は強くドル買いで反応する可能性がある。

 もともと、今年3回目の利下げを実施すれば、その時点で出尽くし感からドル買いが生じるとの見方は以前から市場にある。もちろん、仮に利下げが見送られればなおさらであるし、会見で一旦打ち止めが示唆されてもドル買いムードは強まりやすい。

 どう転んでも「FOMC後はドル買いが基本」ということであるとするなら、いよいよドル円が200日線をクリアに上抜ける場面を迎えるということも十分にあり得る。実のところ、執筆時のドル円は一目均衡表の日足の遅行線が日々線と日足「雲」を上抜けてきているうえ、週足ローソクが足下で31週移動平均線(31週線)を終値で上抜けてきており、これらも立派な強気シグナルの一つと見ていいと思われる。

 仮に、ドル円が200日線をクリアに上抜けてくれば当然、次は8月1日高値の109.32円を試すこととなり、同水準をも上抜ければ110円台も視野に入ってくることになると見る。

米中「一旦休戦」で米国経済はバブル化?

 もっとも、FRBが「一旦打ち止め」を示唆するようなことになれば、これまで利下げ期待によって支えられてきた米株価が下げ基調に転じ、結果的に市場がリスクオフのムードに包まれることから、為替は円高方向に触れるのではないかと危惧する向きはあろう。その点については、米中貿易戦争が一旦「休戦」状態に突入するということを新たな“前提”として、あらためて熟考する必要があると思われる。

 そもそも、今年に入ってから複数回行われた米利下げは、基本的に「米中貿易戦争の行方が不透明であることから、その悪影響をある程度考慮して“予防的”に実施するもの」とされていた。ところが、ここにきて米中両国が一旦「休戦」で合意する可能性が高まっているという。両国は11月半ばに行われる「アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議」の場において米中首脳会談を行い、所謂「第一段階の合意」を正式に署名する方向で話し合いを進めているとされる。

 ここでの署名が実現すれば、12月15日に米政府が予定している対中追加関税の発動も見送られる公算が大きい。つまり、米中貿易戦争は実質的に「休戦」ということになり、それを米国の世論が好意的に受け入れるとすれば、よほどのことがない限り、米中関税合戦は当分の間、再開されることはないと考えることができそうである。すると、これまでの“予防的”な金融政策措置は、一体どのように作用することになるのだろうか。

 結論を急げば、それは確実に経済のバブル化を招くことにつながると考えることができる。前述したとおり、そもそも足下の米株価は実際に史上最高値の水準にある。よって当然、その資産効果というものが今後存分に発揮されることとなろう。

 株価が歴史的な高値水準にあるというのだから、FRBが暫くの間、利下げを打ち止めにする方針を掲げたとしても、それは当然である。一方で、米債券利回りはジワジワと上昇するので米債券価格は弱含みとなり、米債券市場から資金シフトが生じやすくなる。その結果生じるムーブメントが、世界の「債券バブル」を終焉に導く可能性は高い。

 そして、いよいよ債券市場から株式&ファンド・マーケットへの大掛かりな資金シフトが始まることになると見る。もちろん、米国経済全体がバブル的な様相を呈することとなれば、当面の米企業業績は総じて上向くと考えられ、いよいよ株式市場は金融相場から真の業績相場へと移行。そうした場面では、米金利が強含みの状態を継続するなかで米株価も上値追いの展開を続ける。

 また、米金利が強含みとなるのであるから為替はドル高・円安に振れやすくなる。結果、日本株の上値余地も拡がり、そのこと自体がドル円の上値期待につながりやすくもなる。

対ポンド&ユーロで引き続きドルは強みを発揮

 なお、ドルの強みは引き続きポンドやユーロに対しても発揮され続けるだろう。英国は「10月末の合意なき(EU)離脱」という最悪の事態だけは回避したものの、いまだ今後の展開は定かになっていない。総選挙は行われるのだろうが、その結果は不透明。なにしろ、ブレグジットを巡って国は完全に二分してしまったのである。

 仮に、最も穏便な形で欧州連合(EU)からの離脱を成功させたとしても、その後は各国との関税交渉にあらためて着手しなければならない。各国と自由貿易協定を結んで行くとしても、それは気が遠くなるほどの時間を要する。よって、どのみちポンドの戻りは自ずと限られることになると見る。

 一方、ユーロについては、執筆時のユーロドルが「31週移動平均線(31週線)に上値をガッチリ押さえられ続けている」ところと「週足の遅行線が週足ローソクを上抜けることができない状態で推移し続けている」という点(チャート②参照)がとくに印象深い。さらに、その上方には62週移動平均線(62週線)や一目均衡表の週足「雲」も控えており、依然として上値のプレッシャーはかなりのものと言える。

ユーロドルのチャート

 米中協議が進展している模様であるうえ、英国の「合意なき(EU)離脱」という最悪の事態が回避されそうになっていることもあり、10月はポンドやユーロを買い戻す動きがある程度進んだが、それも「そろそろ一旦出尽くし」ということになろうか。

 次期欧州中央銀行(ECB)総裁のラガルド氏が「意外にもタカ派」ということはなさそうであるし、11月からECBは再び月200億ユーロの量的緩和をスタートさせるわけであり、そのような状況下でユーロが力強く上値を追うという様は、やはりなかなか想定しにくいというのが正直なところだ。

※この記事は、FX攻略.com2020年1月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

ABOUT ME
田嶋智太郎
たじま・ともたろう。経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。 慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
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