ポンド円の取引高が昨年比で約22%増加
英国の欧州連合(EU)離脱に絡む一連の動きを受け、今年に入りポンド関連通貨ペアのボラティリティが上がっています。そして、外国為替専門シンクタンクの外為どっとコム総合研究所が、年に1回発行する「外為白書」によると、今年のポンド円取引高は昨年比約22%の増加となっています。これは、日本の個人投資家の間でもポンド関連通貨ペアの取引が活発になっている証拠です。
しかし、自称ポンド専門のトレーダーの間でも、英国中央銀行(以下、英中銀)について、よく知っている人は少ないでしょう。そこで、今回は英中銀の金融政策決定について説明したいと思います。
インフレーション・ターゲット制を導入
英中銀が導入したインフレ・ターゲットは、前年比でインフレ上昇率が2%となっており、上下±1%のバンドが設定されています。ターゲットの設定主体は財務相で、現在のターゲットは2003年に設定されました。設定主体が財務相ということから、英中銀はインフレ・ターゲットを守り、物価安定の維持を心がけながらも、政府の経済政策を同時にサポートすることが最も重要な役割であるといえます(図①)。
金融政策のツール
英中銀の伝統的金融政策である政策金利は、オフィシャル・バンク・レート(主要政策金利)と呼ばれており、現在は0.75%です(図②)。
図② 出典:英国中央銀行ホームページ
2008年の世界的金融危機以降、英中銀は非伝統的措置として、①国債を含む資産買い入れプログラム(QE策)②将来の金融政策の方針を前もって市場にアナウンスする目的があるフォワードガイダンス③銀行融資の拡大を促す「融資のための資金調達スキーム(FLS)—などを追加しました。
金融政策委員会の開催
英中銀金融政策委員会は、Monetary Policy Committeeと呼ばれ、その頭文字を取り「MPC」と名付けられています。2015年夏までは、MPCは月に一度のペースで年12回開催されていました。しかし、同年8月からペースが6週間に一度となり、年8回となりました。この変更に伴い、それまでは数週間遅れで発表されていたMPC議事要旨も、政策金利発表と同時にリリースされるようになり、金融政策決定に至る過程について、主要中央銀行の中でも最も透明性に優れた中央銀行となっています。
伝統的にMPCは木曜日に開催され、時間はロンドン昼12時(日本時間は夏時間:20時、冬時間:21時)と決まっています。そして、2・5・8・11月のMPCでは、四半期インフレーション・レポート(2019年11月より、「金融政策報告書」へ名称変更)と、総裁・副総裁による記者会見が加わりました。この年4回のMPCは、「Super Thursday」という名称で知られており、このときだけは12時30分(日本時間は夏:20時30分、冬:21時30分)から総裁・副総裁の記者会見が実施されます。
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MPC9名のタカ派/ハト派
MPCは、英中銀から5名(カーニー氏、ブロードベント氏、ラムズデン氏、カンリフ氏、ホールデン氏)、外部から4名(ソーンダース氏、テンレイロ氏、ハスケル氏、ブリハ氏)、合計9名のメンバーにより構成されています。
どの中央銀行でも、構成メンバーによるタカ派/ハト派の内訳は重要です。英中銀に関しては、はっきり色付けができていたのですが、英国のEU離脱問題が長引き、経済活動の低迷が色濃くなってきた今年の秋以降、このバランスが一気に崩れてきました。これは、今後の金融政策のかじ取りに大きな影響を与えるだけでなく、2020年の英中銀金融政策についての見通しが、非常に立てづらくなったことを意味しています。
通常のMPCでの見どころは?
ポンド取引に従事する投資家なら経験していると思いますが、MPCで政策金利が発表されると、ポンドが大きく動くことがあります。それは、政策金利と同時に発表される議事要旨の中で、総裁・副総裁を含むMPCメンバー9名の投票配分が発表されるからです。
決定に対する投票配分のコンセンサスは、事前に出来上がっています。例えば、今回は「9対0で、9名のメンバー全員が据え置き支持」という具合です。しかし、実際の発表で「7対2で据え置きとなり、予想に反し2名が利下げ/利上げに票を入れた」ことが分かると、途端にポンドのボラティリティが上がります。
この場合、利上げ/利下げに票を入れた2名が、どうして据え置きに票を入れなかったのか? 次回のMPCでは2名以上が利上げ/利下げ票を入れるのか? トレーダーたちは瞬時にそれを判断し、マーケットは一足先に金融政策の変更を先取りして動き出すという具合です。
米国でも、投票配分は議事要旨で発表されますが、会合終了後3週間たってからです。欧州中央銀行(ECB)に至っては、具体的な配分は公開されず、あくまでも「コンセンサスでの決定」や「多数のメンバー」という感じで、ぼかして伝えられます。
それと比較すると、英中銀のように政策金利決定と同時に人数配分まできちんとマーケットに伝える、この透明感溢れた発表方式は中央銀行のクレジビリティー(信用)を高め、公平な決定をマーケットに伝える最高のツールであると考えます。
※この記事は、FX攻略.com2020年 3月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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