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・現役為替ディーラーが、話題のアノ人と語り尽くす Trader’s対談|ゲスト YEN蔵 前編[トレイダーズ証券みんなのFX 井口喜雄]
クロス円以外での取引も視野に入れる
井口 ご自身のトレード手法について可能な範囲で教えてください。
YEN蔵 最近だと、4時間足の移動平均線とかRSIを使っています。
井口 4時間足はローソク足で見ているんですか?
YEN蔵 ローソク足で見て、4時間足と移動平均線でトレンドができたときにその方向に入ります。4時間足で100pipsくらいのトレンドが出るのを見計らって、移動平均線で優位性が生まれたときが狙い目です。また、RSIは6とか7の期間が短いものを使って、ダイバージェンスが起きているところを探し、4時間足が移動平均線の上に来たら買いでエントリーする感じです。
井口 トレンドを取りに行くということですね。流行りのスキャルピングはしますか?
YEN蔵 スキャルピングはやらないですね。
井口 市場別にどの時間帯が取引しやすいなどはありますか?
YEN蔵 ずっとチャートに張りついているわけではなく、トレンドが出たところを取りに行くので特にないです。ただ、やはり海外市場の方が動きますね。特にオセアニア通貨は東京時間でも動きますし、面白いです。何かしらの通貨ペアにトレンドは出ているので、そういう通貨ペアを探していくのも手法としてありかもしれないです。
日本人はドル円を取引することが多いですが、何でドル円やクロス円にこだわるんだろうと思います。確かにリスクオン・リスクオフのときはクロス円が一番おいしいんですが、そうでないときにはドル円やクロス円以外を取引した方がいいです。トレイダーズ証券さんが率先して「円以外のクロス取引をやってみよう!」と呼び掛けてもいいんじゃないですか。
井口 クロス取引はあまり人気がないですね。
YEN蔵 取引自体は同じことなんですけどね。
井口 やはり皆さん、円が絡んだ通貨ペアでないとダメみたいです。
YEN蔵 そうするとトレンドを見つけにくいですよ。クロス円以外の通貨ペアの方がトレンドは発生しますからね。
井口 本当はそうなんです。クロス円以外の取引を普及させていくのも私の仕事だとは思っています。
YEN蔵 マイナー通貨でクロス取引をやるのもありですよ。ドル円が動かなかったら他の通貨ペアで取引しましょうという方がいいんじゃないですかね。
井口 私も業界に10年以上いますけど、クロス取引は需要が少ないですね。取引する人が来ないからマーケティングでもお金をかけられないです。クロス円になると一定の動きになってしまいますし、円以外のクロス取引もやってもらいたいと思います。話を戻しますが、得意な通貨ペアというのは特になくて、動いているものを見つける。それは別に何でもいいということですね。
YEN蔵 そうです。私は他のFX投資家の方よりもクロス円で取引する比率が低いと思います。どちらかというと、ドルストレートをメインでやっています。豪ドルやNZドルをやるなら対ドルで取引することの方が多いです。
井口 一つの通貨ペアに特化する方が強みもあるんじゃないかという思いもあります。職業柄かもしれませんが、昨日の高値と安値がどういう動きをしたかが気になる場合、あまり手を広げすぎると相場観が鈍る気がします。
YEN蔵 どちらかじゃないですかね。おっしゃるように通貨ペアを二つくらいに絞り込んで、指標発表時の動きを徹底的に追及するのも一つのやり方だと思います。特にポンドや豪ドルは指標でよく動きます。指標で動く通貨ペアに特化して、深堀りしていくのもありかもしれません。
井口 最近は指標で動いてくれる通貨が減ってきたので、その中ではポンド、豪ドルはまだまだ突き抜けてくれるありがたい通貨だと思います。
ゲームチェンジの可能性が出てきたか
井口 2020年の為替相場はどのように動いていくと思われますか? 最大のテーマは米大統領選になるとは思いますが、お聞かせいただきたいです。
YEN蔵 大きい話をすると、米大統領選は重要です。中国との戦いが続き、株価もそんなに下げられないと思うので、金融相場が続くと予想しています。そして、ブレグジットの行方にも注目です。ブレグジットだといわれたらポンドが売られて、合意なき離脱が回避されたら買い戻されました。おそらくジョンソン英首相は移行期間の延長はしないでしょう。そうすると、来年の1月に合意なき離脱と実質同じ離脱の仕方になる可能性があります。
あとは相場とは関係ありませんが、米国・英国・インド・日本で海洋国家の連合を作ろうとしていて、中国・ロシア・欧州に対抗していくという大きな地殻変動がもしかしたら起こり始めたのかなという考えもあります。1989年にベルリンの壁崩壊が起きてから約30年がたちました。ここから世界が変わっていき、マーケットが大きく動くかもしれないというロマンがあって面白いなと思います。
井口 世界規模の大きな話ですね。
YEN蔵 もっと絞り込んでいくと、欧州連合(EU)は英国が離脱することによってすごいダメージを受けると思うんですよね。EUにとって英国は輸出の大きな相手国で、関税も変わりますから。そして、英国はEU圏でドイツの次に拠出金を出している国です。その拠出金がなくなればEUとしては痛手です。なぜジョンソン英首相が今年のブレグジットにこだわったかというと、2021年からEUの新しい会計期間になり、各国は拠出金を払う必要があるからです。ジョンソン英首相は、できるだけそれを払いたくないのでしょう。
井口 「2020年の離脱」を推し進める背景には、そんな理由があったのですね。
YEN蔵 そういった地殻変動が起こってきたら、為替はもしかしたら今年だけでなく、長いタームで動き続けるかもしれません。今年に関してはやはり、米大統領選やブレグジットの行く末がどのようになるのかの見極めが必要です。豪州も英国連邦の枠組みに入ってくると思うので、豪ドルの動きも面白いかなとは思います。
井口 もしかすると、ポンドが巻き返して強くなるかもしれないですね。ポンドが注目通貨になっていくかもしれません。
YEN蔵 そういうときこそ、ファンダメンタルズや大きな歴史で見ていくと面白いですね。今年はゲームチェンジになるのかどうかを見極めたいと考えています。
井口 ぜひゲームチェンジしていただきたいです。ここ3年はドル円がほとんど動かなかったので、いいかげんにしてくださいという思いもあります。
YEN蔵 ちなみに、国際決済銀行(BIS)の為替報告書は3年ごとに改正されるのですが、2016年から2019年で全体の出来高は30%くらい増えています。毎日の出来高が円相当で500兆円くらいだったのが650兆円くらいになっているんです。ただし、唯一ドル円だけ8%のマイナスです。それには二つの要素があると考えていて、一つは安倍首相・トランプ米大統領の関係がうまくいっていることです。昔だったら米国からガンガン要求が来ていましたが、最近は意外に静かです。
井口 安倍首相がうまくコントロールしているのかなという印象ですね。
YEN蔵 もう一つは貿易収支です。井口さんは「日本は貿易立国」と社会の授業で習いましたか?
井口 習いました。
YEN蔵 今の日本の貿易収支はトントンか赤字くらいになっています。だから輸出売りが吸収されていますね。貿易の10倍、20倍、30倍の投機の資金が動いているけれども、投機による資金は1分後か3年後かは別として必ず買い戻す資金じゃないですか。貿易の資金もニュートラルになったということは、為替が動かなくなります。他には中国のバブルがいつ弾けるのかも注目ですね。日本は1990年代に弾けて米国にやられてしまいました。日本は巨大な国なので強烈な通貨安にはなりませんでしたけど、韓国は通貨安を仕掛けられて銀行が全部外資系になりましたよね。米国は賢いので日本の労働人口が増え、国内総生産(GDP)も上昇し続けてピークを過ぎた90年代に入ったところで仕掛けてきました。今度は中国の労働人口が減ったところを狙って米国が仕掛ける可能性があります。通貨安にして中国を締め上げるつもりでしょう。ただ、中国は簡単には白旗を上げないと思います。
井口 中国の場合はインパクトが大きすぎますよ。
YEN蔵 話が大規模になりすぎましたが、そのようなことが2020年から長期にわたって起こるかもしれません。為替はそのようなゲームチェンジが起こったときにはドラスティックに動くので、注意が必要です。
井口 米国株はどうですか? 米大統領選までは下げずに頑張るとは思いますが、さすがに調整が入る気もします。
YEN蔵 そろそろ下がると思います。今年は金融相場の最終コーナーを回るんじゃないですか。どこまでかは分からないですが、少なくとも第1クオーターくらいまでは持つかなと思っています。株価を4~6月ぐらいまで維持しておけばトランプ大統領は大丈夫だと思います。7・8月に株が暴落してもおそらく再選すると思いますが、それは暴落の程度にもよりますね。
井口 第1クオーターまでは頑張るだろうと。そこから先はリーマン・ショックから11~12年目ですので、サイクル的には本当は危ないんじゃないかという話もあります。
自身の手法を見つけ焦らず長期的な視点を
井口 最後に読者に向けてアドバイスをお願いします。
YEN蔵 誌面の中でいろんな人がさまざまな手法を紹介していると思いますが、それをうのみにしないまでも参考にして、自分のエッジを早く見つけることが大切だと思います。マーケットは明日も明後日も、10年後もおそらくあると思うので焦らないことですね。例えば「このドル円のロングで億万長者だ」とか思わないで、あまり一つのポジションを愛しすぎないことです(笑)。手法を見つけたら淡々とこなして、その手法が通じなくなったら微調整をする。これを繰り返して自分に合うエッジのある手法を見つけることが相場で生き残る道だと思います。
井口 今回は憧れの存在であるYEN蔵さんからお話を聞けてうれしいです。ありがとうございました。
※この記事は、FX攻略.com2020年5月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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