今回からはこれまで紹介した数々のテクニカル指標にファンダメンタルズ的な視点も交えながら、ドル円・ユーロ円・豪ドル円という3大人気通貨の未来を実際に占っていきたいと思います。原稿執筆から発売まで約1か月半のタイムラグがありますが、上昇・下落・横ばいのシナリオ別に「テクノ&ファンダ分析」で相場の未来を読み解く方法を紹介していきます。
※この記事は、FX攻略.com2017年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
200日移動平均線で見たドル円相場は米国長期金利との連動性に注目する
今月号からは「3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析」と題し、テクニカル分析の視点にファンダメンタルズを加味した未来予想の方法をご紹介していきたいと思います。
取り上げるのは、ドル円・ユーロ円・豪ドル円の3大通貨。外為オンラインでも常に取引高の上位を占める人気通貨で、私もホームページ上で毎週、レンジ幅の予想を更新しています。そんな3大通貨ペアに発生したテクニカル指標のシグナルを基に、背景にあるファンダメンタルズの変化を読み解きながら、毎月、未来の値動きをシナリオ別に分析していきます。
そもそもテクニカル分析とファンダメンタルズ分析は、どちらか一方だけ、というものではなく、両方を使って相場予想するのがプロでは至極当たり前になっています。例えば、「移動平均線のゴールデンクロス」は有名なテクニカル指標の買いシグナルですが、為替相場というのは「移動平均線がゴールデンクロスしたから」という理由で上昇するわけでは決してありません。
移動平均線のゴールデンクロスが発生するような為替レート上昇の裏には、必ず、何らかのファンダメンタルズ的な出来事が起こっています。為替市場を取り巻く経済状況の変化、そしてその変化に世界中の投資家たちがどのように反応するかという「投資家心理」こそが為替レートが値動きする決定的な原因です。ある意味、テクニカル分析はファンダメンタルズの変化が為替レートにどのように織り込まれたか、もしくは織り込まれずにスルーされたかを探るための道具なのです。
「値動きは全ての情報を織り込む」という観点に立てば、単純にテクニカル指標の売買シグナルだけで実戦取引しても全く構いません。下手にファンダメンタルズ分析に走って、誤った固定観念にとらわれるのは大失敗のもとです。
しかし、テクニカル指標の売買シグナル発生につながったファンダメンタルズ上の変化が「どんな要因で起こり、その影響力はどれぐらい強いか」を値動きから判断することで、より高精度な未来予想が可能になるのもまた事実。
第1回となる今回は、私が最も重視している「200日移動平均線」を使って3大通貨の現状を分析して今後の値動きを展望してみましょう。
まずは通貨ペアの王様といって良いドル円です。チャート①は2015年10月からのドル円日足チャートに120日移動平均線、200日移動平均線を表示したもの。まずは為替レートと200日線、サブ指標である120日線の位置関係や傾きに注目してください。
200日線は為替相場の長期的なトレンドを見る上で非常に重要な指標で、世界中の投資家が注目しています。為替レートが200日線の上にあれば強力なサポート役、下にあればレジスタンス役。為替レートが200日線を上抜け/下抜けたら、トレンド転換と判断します。
チャート①では、長らく120日線の下で推移してきたドル円がAの地点で120日線に続き200日線も上抜け、勢いよく上昇しています。
2016年11月9日の米国大統領選で共和党候補のドナルド・トランプ氏が大統領に選出されたことが、この上昇のきっかけになりました。通常、上方にある120日線や200日線はレジスタンス帯として機能するので、その近辺でもみ合ってもおかしくなかったのですが、Aの地点では全くお構いなしに200日線を一気に突破しています。トランプ新大統領に対する期待感の強さが鮮明に表れたブレイクとなっており、その勢いを察知できていれば、ドル円買いで急上昇に便乗できました。Aの地点のブレイクはそれぐらい強いものでした。
その後、ドル円はトランプ新大統領への期待感だけで就任前の2016年12月に118円60銭台の高値をつけました。その背景には、
「トランプ新大統領が打ち出す減税やインフラ投資などで米国は好景気になる。トランプ氏の積極財政出動で米国債が大量に発行される可能性も高いので、債券価格が下落し、逆に金利が上昇する」
というシナリオがあります。
実際、このシナリオのもと、2017年のドル円は米国債10年物の利回り(=長期金利)ときわめて密接に連動して動くようになりました。
200日線を挟んだ攻防で揺れるドル円、上昇トレンド入りしたユーロ円
チャート②は今年に入ってからのドル円の値動きをクローズアップしたものです。4月中旬にはトランプ大統領によるシリア爆撃や北朝鮮によるミサイル発射といった地政学的な緊張の高まり、さらに昨年のトランプ大統領の選挙戦にロシアが関与していたのではないかという「ロシアゲート問題」が浮上します。
金融市場全体でリスクオフの流れが台頭し、米国債に資金が流入。米国債の価格は上昇、逆に金利は低下して4月18日には2.16%の安値をつけました。ドル円も4月17日に108円13銭まで下落しましたが、このときは200日線が見事なまでにサポート帯として機能し、ドル円は反転上昇しました(チャート①のBの地点、チャート②の①の地点)。
その後、4月下旬から5月上旬にはフランス大統領選挙が行われ、中道派の新勢力・マクロン氏が第25代フランス大統領に就任。極右勢力のルペン候補が敗れてフランスのユーロ離脱が遠のいたこともあり、金融市場ではリスクオンの流れが加速します。
米国10年債は売られて利回りは上昇。5月11日には直近高値の2.42%台に到達し、ドル円も114円36銭の戻り高値をつけました(チャート②の②の地点)。とはいえ、このあたりから、
「ロシアゲート問題で揺れる米トランプ政権が減税やインフラ投資の政策を速やかに実行するのは難しい」という思惑が台頭したのも事実です。
6月14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で今年2回目の利上げが決定された前後には、米国の長期金利も2.1%台まで、実に7か月ぶりの低水準まで落ち込みました。ドル円は200日線の少し上のレベルで推移しているのが現状です(チャート②の③の地点)。今後も米国の長期金利がさらに低下するようだと、4月17日につけた今年のドル円の最安値108円13銭(チャート②のライン①)を割り込む可能性もあります。
目先を見ると、今後は9月20〜21日に開かれるFOMCでイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長がさらなる利上げに踏み込むかどうかを遠目に見ながら、模様眺めの展開が続く可能性が高いといえるでしょう。
チャート②の焦点になるのはやはり、ドル円が今年の最安値108円13銭を割り込むかどうか。割り込んだ場合は、200日線割れが決定的となり、トランプ相場の起点となった昨年11月9日の1ドル105円台まで下落する展開も考えられます。
上値に関しては右肩下がりの120日線が1ドル110円台まで下落しており、今後のドル円の動きに影響を与えそうです。ただし、一目均衡表の雲は薄く、それほど強い抵抗帯になりそうもありません。200日線をサポート役にしてドル円の反発上昇が続き、5月高値の114円36銭(チャート②のライン②)を上抜ける可能性もあります。この場合は一種の「三角保ち合い上放れ」となり、1ドル120円台到達を目指したドル円の長期上昇も考えられなくはありません。
ただ、「米国の年内利上げは6月で打ち止め」という見通しもある中では米国長期金利の上昇も見込めず、よってドル円も下方向へ動く可能性もあるように思えます。とはいえ、今一つドル円の方向感がつかめない背景には、ユーロ円や豪ドル円のかなり力強い上昇があります。
チャート③はユーロ円の2015年10月からの日足チャートですが、フランス大統領選の第1回の投票でマクロン氏が優位に立った4月24日(Aの地点)、ユーロ円は土日を挟んで大きな窓をあけて200日線、120日線を軽々と突破しました。
既に昨年12月高値の1ユーロ124円台を越えてきており、足元では力強い上昇トレンド入りを果たした、といって良い水準です。下値は120日線が強力なサポート役になりそうです。その背景にはユーロ圏の経済が思った以上に好調なことや、それを受けて欧州中央銀行(ECB)が量的緩和策の打ち止め(テーパリング)に向かうのではないか、という思惑があります。
昨年6月24日に英国のEU離脱(ブレグジッド)決定で急落して以降、ユーロ円はおおむね112円〜122円のレンジ内で推移してきました(Bのゾーン)。ECBの政策変更の可能性を考えると、今後はBのレンジを一段切り上げて、122円〜132円のレンジ(Cのゾーン)で推移する可能性もあります。
さらに、中国経済の影響を受けやすい豪ドルにも力強い動きが出ています。
上昇の勢いが鮮明な豪ドル円。トリプルボトム完成なら目標高値は87円50銭
チャート④は豪ドル円の2015年10月以降の長期日足チャートですが、まさに最直近の6月14日に200日線を勢いよく突破して、1豪ドル84円台前半まで上昇。今後は120日線を完全に越える値動きに期待できそうです。
その背景には、6月15日に発表された5月の豪州雇用統計の内容が良かったことで、利上げはまだ先のこととしても、利下げの可能性がほぼなくなったことがあります。5月の豪州の正規雇用者数は5万2100人と、市場予想を大きく上回ったばかりか、失業率も5.5%と約4年ぶりの水準まで低下しています。
これまで豪州では個人消費と労働市場の低迷が続いており、利下げの可能性も残っていました。一方でシドニーやメルボルンなどの都市部では住宅価格の上昇が続き、利下げもできない状況でした。もうしばらくはデータを見る必要がありますが、労働市場の安定が見込めるようなら、利上げの可能性も浮上することになります。
チャート⑤は今年に入ってからの豪ドル円の日足チャートです。今後、5月につけた84円50銭の高値(ネックラインB)を明確に抜けると、いわゆる「トリプルボトム」のチャートパターンが完成し、そうなると4月19日安値の81円50銭台(安値A)から84円50銭(中間高値B)まで約3円の値幅分、ネックラインBから上昇する可能性もあり、その際の目標高値は87円50銭台(Cのライン)になります。
今年2月の高値88円10銭台(D)と4月安値81円50銭台(A)を結んでフィボナッチリトレースメントを行うと、直近の豪ドル円は50%ラインの84円80銭台到達が間近で「半値戻し」に成功しそうです。そうなると、次の61.8%戻しの85円60銭台が抵抗帯になりますが、ここを抜けるとトリプルボトム完成の目標高値87〜88円台到達も視野に入ってきます。
依然、200日移動平均線の前後で方向性がはっきりしないドル円ですが、ユーロ円、豪ドル円などクロス円通貨の力強い動きを見ると、ドル円においても上方向へのバイアス(偏り)がより鮮明になっていると考えて良いでしょう。とにかく7月末〜8月にかけては、9月に立て続けに開催される欧州ECB理事会、米国FOMC、日銀の金融政策決定会合といった中央銀行の金融政策を睨んだ動きが続きそうです。
※この記事は、FX攻略.com2017年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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