ロンドンに存在する二つの金融街を紹介
世界の金融街といえば、真っ先に浮かんでくるのは映画でもおなじみの米国「ウォール街」。それに比べ、外国為替取引高世界一を誇るロンドン金融街「シティ」の名前は日本ではあまり知られていません。そこで今回はシティ、そして英国第2の金融街ドックランズを紹介したいと思います。
金融街シティ 別名スクエア・マイル
シティは1平方マイル(スクエア・マイル)という狭い地域にロンドン証券取引所、ロイズ保険、イングランド銀行(BOE・画像①)などが密集している金融業発祥の地です。この地域における英国国内総生産(GDP)への寄与度は約5%と群を抜いて高いです。この地域は特別行政府として扱われており、儀式的な意味だけとはいえ、国王ですら行政府長(市長)の許可なく入ることが禁止されています。
シティは米ウォール街とは違って高層ビルがなく、低いビルばかりが立ち並んでいます。シティ内の建物の外観は昔のままですが、内部は近代的で斬新なデザインである点も特徴的といえるでしょう。シティ地域で生活する住民は約4500世帯、約9000人といわれていますが、日中の労働人口は52万人に上り、ロンドン警察庁とは切り離されたロンドン市警察により管轄されています。
第2の金融街 ドックランズの誕生
1980年代、金融業界の多様化に伴い、多国籍金融企業による大規模なスペース需要が持ち上がり、その期待に応えられなかったシティの代わりになる地域選びで白羽の矢が立ったのが、シティから東に5キロ離れたドックランズ地域でした。
ここは19~20世紀後半まで世界有数の商業埠頭として栄えましたが、港湾産業の衰退と共に埠頭は閉鎖され廃虚と化しました。1980年代に入り、当時のサッチャー英首相は地域の再活性化推進を目的とする「開発公社」を設立し、ドックランズ地域がその一つに選ばれました。
1987年、米系銀行数行とカナダ系大規模オフィス開発企業が手を組み、金融センター建設がスタート。それから10年後、大規模な高層オフィスが一気に供給され、第2の金融街としての地位を確立しました。シティとは違い、ドックランズは高層ビルが立ち並んでいます。ちなみに、ドックランズの「ドック」という英語は埠頭という意味です。
英シティは国際的
私がシティにある英系、米系それぞれの銀行で働いていた当時、米ウォール街にある同じ銀行の支店に何度か出張したことがあります。そのときに一番強く感じたシティとウォール街の違いは、そこで働いている人たちでした。ウォール街勤務の金融関係者の多くが米国人であるのに対し、シティでは欧州大陸・英国・米国・アジア・中東・アフリカと非常に国際的でした。そして、使用される言語がウォール街では「ほぼ100%英語、一部スペイン語」でしたが、シティは「共通語が英語」で、それと並行してフランス語、イタリア語など各国の言語が飛び交っているのが特徴的でした。
日本では全く知られていませんが、同じ金融系でもヘッジファンドや投資顧問のオフィスはシティやドックランズにはありません。これらが集中する地域は、ウエスト・エンドという地域です。そこはシティから西に約5キロ離れた最高級街で、高級品店が並ぶボンド・ストリートなどが有名です。ちなみに在英日本大使館も、このウエスト・エンドに位置しています。
最後になりますが、もし読者の皆さまがシティを訪れる機会があれば、ぜひ足を伸ばしてほしいのがレドンホール・マーケットです(画像②)。シティの地図(画像③)の水色の星がついたところがBOEで、そこから徒歩5分くらいの黄緑の星がついたところがレドンホール・マーケットです。
ここは14世紀から屋内市場として営業をしており、ハリー・ポッターをはじめとする映画の舞台にもなっています。私は日本からの訪問客が来ると、いつもスペインのタパスバーに一緒に行ったり、ワインセラーでおいしいワインをいただいたりしています。
※この記事は、FX攻略.com2020年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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