移動平均線は奥深くポテンシャルが高い
こんにちは、いいだっち先生です。前々回から引き続き移動平均線(MA)について詳しく実践的な解説をしていきます。MAは非常に奥深いのですが、その活用方法を詳しく解説している著書は意外と少なく感じます。せいぜい「ゴールデンクロス(GC)、またはデッドクロス(DC)で売り買いの判断をする」という解説止まりなのがほとんどです。そのためMAのポテンシャルや重要性に気づかず、すぐに他のインジケーターへ目移りしてしまう方も多いです。それではもったいないと思います。
まず、MAは上向きか下向きかというシンプルな判断基準だけでトレンドの見極めが可能です。これを長期線・中期線・短期線と組み合わせることによって、長期・中期・短期のトレンドが一目瞭然となり、売り買いを判断しやすくなります。今回は、実際のトレードに活用する方法をいくつかご紹介します。
MAの活用方法
①MAとローソク足の関係
短期のMAの意味や特徴を皆さんはどのくらい理解しているでしょうか。いいだっち先生は、短期のMAでパラメーターは【6】を使用しています。4時間足を使用した場合、6は24時間の平均値になるからです。これは【4】でも【5】でもあまり大きな違いはないです。
ここで重要なのは、短期のMAの特徴です。「GCやDCの目安」と解説している著書がほとんどですが、トレンドがきれいに発生しているときは短期線の上でローソク足が数珠つなぎで乗っかっている状態になるという特徴があるのです(チャート①)。これはどの時間足のチャートでも見られる特徴です。チャートの特徴や特性を利用するのがテクニカルトレードの基本ですから、これを利用しない手はありません。
②日足の短期MA
上昇トレンドがきれいに発生しているときは短期線の上でローソク足が数珠つなぎで乗っている状態になり、下落トレンドならばローソク足が短期線の下で数珠つなぎでぶら下がっている状態になります。これは日足チャートで見られる現象ですから、1時間足チャートに落とし込んでみましょう。
③日足の短期MAの特性を生かす
いいだっち先生が愛用している日足の短期MAのパラメーターは6ですが、この日足の短期6MAを1時間足に反映させると、1日は24時間ですから単純に24倍させて6×24=144になります。つまり、日足の短期6MAというのは1時間足チャートで144MAに相当します。
ここで、トレンド発生時は短期線に沿ってローソク足が数珠つなぎのように乗るという特性を生かすと、日足の短期6MAに沿ってローソク足が揃うわけですから、1時間足の144MAに沿って押し目買い、戻り売りのトレードをすれば良いのです。
④日足の短期MAとベガストンネル
日足の短期6MAは1時間足チャートに換算すると144MAに相当すると書きましたが、実は終値が六つの平均値と終値が144個の平均値が同じというのは少し無理が生じます。そこで終値が144個の平均値をより近似値に寄せるため、1時間足チャートでは144EMAを採用しているのです。
EMAとはExponential Moving Averageの略で、日本語では指数平滑移動平均線といいます。EMAの計算式はここでは省きますが、ざっくり説明すると近似値を重視した計算式になります。もちろんEMAも終値を基に計算しています。
144EMAとくれば、テクニカル分析に詳しい人ならばすぐに思い浮かぶのがベガストンネルです。ベガストンネルとは、英国在住のベガス氏が考案した144EMAと169EMAの2本のEMAの束のことをいいます。144の平方根である12のEMAを短期線としてGCやDCが発生したときに売り買いをする使い方が基本です。
いいだっち先生は別のアプローチから144EMAに行き着いたので、169EMAも採用しています。ただし、GCやDCをトレードの判断材料にはしません。むしろ、このベガストンネルを押し目買いや戻り売りの基準にする使い方をしています(チャート②)。
元祖であるベガス氏は、ポンドドルで中期~長期のトレードをしていたと推測できますので、トレンドが継続しやすい通貨ペアを長期トレードするならばGCやDCで順張りする手法は適しているといえます。しかし、いいだっち先生はダイナミックに上下しやすいポンド円で1~2日で完結させるデイトレードを行うスタイルですから、そのスタイルにアジャストして活用しています。
このようにトレード手法は、通貨ペアの特性やトレードスタイルによって使い方が変わってきますので、一つのやり方に固執せず、自身のトレードスタイルの特性を理解した上で活用していく必要があります。
※この記事は、FX攻略.com2021年1月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。