2013年の展望を知るために必要なこと
2012年も12月の中旬を迎え、今年も残すところわずかとなりました。
1年間の外為マーケットを振り返ると、「ドル/円」や「ユーロ/円」は下げ渋ってはいるものの、依然として下落圧力が強い相場であったために、2007年のアメリカ住宅バブル崩壊を起因とする円高局面から抜け出せずにいます。
5年近く続く円高の流れが続き、「ドル/円」や「ユーロ/円」は下落傾向の流れを続けていますが、2013年の相場では、円安の転機を迎えることができるのか? 答えを出す前に、中央銀行が外為マーケットに与える絶大なパワーを理解することで、2013年の動きを予想する際の理解度を高め、皆さまにも2013年の展望を深く理解して欲しく思います。
アメリカに伝わる有名な相場格言として、“FRB(≒Fed)とは戦うな”という相場格言があります。
FRBとはアメリカの中央銀行のことをいい、日本でいえば、日本銀行に該当する組織ですが、金融政策を実行できる権限を国内で唯一もっています。
FRBはあまりにも巨大すぎるが故に、FRBと戦っても勝ち目がない銀行や企業、個人にとっては、FRBの政策を理解し、未来を予想する必要があります。
中央銀行の政策スタンスを見ると、自然と為替の方向性も見えてきます。
そもそも、中央銀行の政策以外の材料は、マーケットに与える影響は一時的で限定的なのです。
最近の報道では、『日本の貿易収支がマイナスになった』『パナソニックが巨額赤字決算になりそう』『米消費者物価指数が予想よりも悪い結果になった』といった材料が注目されていましたが、外為マーケットに与える影響は微々たるもので、中央銀行の政策と比べると、小さな影響力しかありません。
中央銀行の2つの政策から、為替を大局的に読む
中央銀行が採用した政策で、円高になった要因は2つあります。
“低金利政策”と“量的緩和策”です。
日本とアメリカの中央銀行の政策スタンスを見れば、円高になった理由が簡単にわかります。
まず、図1を見てください。図1は、日本、アメリカ、ユーロ圏、イギリス、オーストラリアの政策金利を比較した表となります。
政策金利とは、中央銀行が銀行にお金を貸す際の金利となります。2008年1月の時点で、アメリカの政策金利は3.0%。対する日本の政策金利は0.5%。
一方、2012年11月時点のアメリカの政策金利は0~0.25%。対する日本の政策金利は0.1%です。
日米の金利差が縮まったことから、米ドルの魅力が低下し、ドル離れが起こっているのです。
同様に、ユーロ圏は2008年1月に4.0%をつけていた政策金利が、現在は0.75%まで低下していることがわかります。
日本は政策金利引き下げ余地がないなかで、欧米の政策金利の開きが縮まったが、なぜドルやユーロが買われにくくなるのでしょうか?
たとえば、私たちが「ドル/円」を買ってもつ際も、2008年には多くのスワップポイント金利がついたはずですが、今は「ドル/円」でもっていても、スワップポイントはほとんどつきません。
それは、日米金利差が縮小したからですが、個人トレーダー・投資家でももらえる金利が少なくなれば、企業や銀行も「ドル/円」をもちたくないのは当然のことです。
そのため、ドル離れがおき、円高となりました。
次に、米の量的緩和政策(QE1、QE2、QE3)も円安に強い影響を与えています。
量的緩和策に関しては、図2を使って説明します。
アメリカの中央銀行であるFRBの中央銀行が量的緩和策を実行したケースを考えてみましょう。
図2を見てもらうと、FRBは国債、株式、住宅ローン担保証券をアメリカの市中銀行から買い取ることで、ドルを市中銀行に対価として支払い、銀行はそのドルを貸し出したり、投資を通じて市中にばら撒いているマネーの流れを把握できます。
つまり、量的緩和策を簡単にいえば、ドルのバラマキ政策ですが、ドルが増えれば、需給の関係よりドルは売られます。
一方、日本の量的緩和策の規模は欧米に比べて小さいため、円安の影響は限られています。
需給の関係は、通貨の価値を決めるだけではなく、モノの価値を計る場合でも当てはまります。
欧米のバラマキの量が多い一方で、日本のバラマキの量が少なければ、需給の関係より、ドルやユーロは売られ、円に買いが集中します。
ドルの供給量が増えているなかで需要が一定であれば、ドルの価値が低下します。
ドルがマーケットで増えれば、ドルの価値が下がり、モノの価値やそれ以外の通貨の価値が上がるのは当然のことです。
金の価格が歴史的高値の水準をつけていることは、簡単にいえば、ドルやユーロに対しての信用が失墜したために、実物資産にマネーが流れていることの表れでもあるのです。
アメリカと比べ政策金利を下げる余地がなく、量的緩和の規模もアメリカと比べ低い日本は、このような要因から安くなるドルを嫌気して、円に買いが殺到しているのです。
円高の理由は、中央銀行の政策スタンスに最大の原因があることがわかりました。
この視点に立って、アメリカ、日本、ユーロ圏の金融政策を予想すると、日米欧ともにほぼゼロ金利であり、政策金利はもう引き下げる余地はほとんどありません。
一方、量的緩和政策に関してですが、この政策に消極的であった日本も、次期首相となる可能性が高い安倍自民党総裁が、日銀に2%~3%のインフレを起こさせる位の量的緩和策をすべきだと強調しています。
このことから、円のバラマキ政策にようやく拍車がかかり出すことが予想されます。
もし仮に、安倍総裁がアメリカの圧力を顧みず、有言実行のスタンスをとると仮定すると、円安の大きな転換点になることでしょう。
日銀の金融政策以外にも、もちろん外為マーケットに影響を与える要因も存在しますが、日米欧の金融政策の動向で、2007年以降の動きはすべて解説できます。
2013年の「ドル/円」相場はついに上昇か?
それでは次に、チャート分析をすることで、2013年度の「ドル/円」「ユーロ/ドル」「ユーロ/円」の方向性を予測していきましょう。
図3は「ドル/円」の週足チャートとなり、チャート期間は2010年5月から2011年11月までの約1年半の動きを表しています。
この動きを見ると、序盤こそ一貫して下落波動の動きをしていることがわかります。
しかし、その後、ボックス的な方向感に乏しい展開となっており、どうも動きがつかみにくい三角持ち合いの展開です。
まず注目したいことは、84.20円の高値を上に切り上げるか否かです。
このポイントを上に抜けてくれば、テクニカル分析でいうところのWボトムの完成となり、上昇波動が完成することになります。
逆に、75.30円を下抜ければ、下落波動の流れが続く可能性が高まり、さらに、下に動くことも考えられます。
今は方向感がない展開ですから、チャート分析からは未来予想をすることは正直、難しいのです。
ただ、ひとついえることは、円買い圧力が弱まっているということだけです。
そこで、先ほどの安倍自民総裁の量的緩和策の有言実行度合いが注目となり、積極的な金融政策を実行する可能性が高いことを考えると、「ドル/円」は買われる可能性が高いと考えています。
もちろん、アメリカの“財政の崖”というブッシュ減税が切れ、債務削減に取り組む2013年のアメリカの景気後退の局面を迎える問題をどれほど解消しているかも、キーポイントになります。
アメリカが“財政の崖”をうまく切り抜けるという前提で見ると、「ドル/円」は上昇をさらに描きやすいでしょう。
もちろん、“財政の崖”問題があるために、「ドル/円」の乱高下は厳しいものになる可能性は高いと見ます。
2013年の「ユーロ/ドル」「ユーロ/円」相場はどうなるか?
次に、「ユーロ/ドル」のチャートを見ていきます。
「ユーロ/ドル」は月足チャートのほうが値動きを確認しやすいので、「ドル/円」よりもより長い時間軸である月足チャートで動きを確認していきます。
月足チャートの期間は、1997年4月から2012年11月までの動きとなります。
図4でチャート全体の動きを確認すると、上昇波動をつけたものの、アメリカのリーマンショックの影響を強く受け、下落圧力がやや強い展開が続いています。
しかし、1.162ドル付近のラインを確認すると、この辺りで強い反転のサインが2回見られます。
そのため、私はこのラインを下抜けることはないという前提に立っており、いったん上を目指す可能性が高いと考えています。
仮に、1.162ドルを大きく下抜けると、下に推移する可能性も想定しています。
最後に、「ユーロ/円」に関してですが、「ドル/円」と「ユーロ/ドル」は反転する予想を立てていますので、「ドル/円」と「ユーロ/ドル」の影響を受ける「ユーロ/円」も上昇する可能性が高いと判断しています。
2012年末から円安になる機運が高まり出しています。
2013年は約5年間続いた下落波動からの逆転相場になりやすいだけに、「ドル/円」や「ユーロ/円」の反転は下落していた分強くなり、大きな利益を上げやすくなりそうです。
常日頃からFXのトレード力を磨いておき、大転換期の大相場に乗り遅れないように爪を磨いておくと、良い年を迎えやすいでしょう。(月刊FX攻略.com 2013年2月号掲載)
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スプレッド | FX取引における取引コスト。狭いほうが望ましい。 |
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約定力 | 狙った価格で注文が通りやすいかどうか。 |
スワップポイント | 高水準かどうか。高金利通貨の取り扱いの数。 |
取引単位 | 少額取引ができるかどうか。運用資金が少ないなら要チェック。 |
取引ツール | 提供されるPC・スマホ取引ツールの使いやすさ。MT4ができるかどうか。オリジナルの分析ツールの有無。 |
シストレ・自動売買 | 裁量取引とは別に自動売買のサービスがあるかどうか。 |
サポート体制 | サポート内容や対応可能時間の違いをチェック。 |
教育コンテンツ | 配信されるマーケット情報や投資家向けコンテンツの有無。 |
キャンペーン | 新規口座開設時や口座利用者向け各種キャンペーンの内容。 |