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欧州ファンダメンタルズ入門|第7回 欧州中央銀行について[松崎美子]

欧州ファンダメンタルズ入門|第7回 欧州中央銀行について[松崎美子]

金融政策における枠組みの見直し

 2020年の欧州中央銀行(ECB)は大きく変わります。一つは、金融政策決定における枠組みそのもの。もう一つは、6名の専務理事たちの顔ぶれです。

 米連邦準備制度理事会(FRB)に続き、ECBも金融政策決定における枠組みの見直しに入りました。2019年最後の記者会見でラガルド総裁は、2020年1月から見直しを始め、できる限り年末に完了したいと語っています。

 どうして米欧共に、このタイミングで見直しに踏み切ったのか? ECBが最後に見直しを行ったのは2003年です。それ以降、グローバル化やデジタル化などにより世界情勢や経済構造そのものが変化しました。

 ECBの責務は、「物価安定の維持」です。それを測る物差しとして、「中期的なインフレの上昇率が2%未満だが2%近く」という定義があります。しかし、ユーロ圏のインフレ率と期待インフレ率は共に長期にわたり下振れしており、いくら政策金利を下げても、実質金利の水準(名目金利から期待インフレ率を引いたもの)が十分に下がりません(図①)。こうなると一体、何のための緩和なのか、分からなくなってしまいます。これと同じ現象が日本でもずっと起きており、言い方を変えればECBは何が何でも「日本化」を避けたいため、見直しに踏み切ったというのが本音ではないでしょうか?

ユーロ圏の消費者物価指数とECB期待インフレ率(四半期ごと)

図① 出典:ECBホームページ

金融政策のツール

 ECBの伝統的金融政策手段である政策金利は、3種類あります。主要政策金利である「メイン・リファイナンス・オペ金利」。そして、短期金利の誘導基準として「限界貸出ファシリティ金利」を上限、「預金ファシリティ金利」を下限としています。2014年6月、預金ファシリティ金利はマイナス圏に切り下げられ、現在は-0.5%、メイン・リファイナンス・オペ金利は0%、限界貸出ファシリティ金利は0.25%となっています(図②)。

ECB三つの政策金利

図② 出典:ECBホームページ

 2008年の世界的金融危機以降、非伝統的措置として、

①国債を含む資産買い入れプログラム(QE策)

②将来の金融政策の方針を前もって市場にアナウンスする目的があるフォワードガイダンス

③緊急流動性支援(ELA)

—などを導入しています。

金融政策理事会の開催

 ECBは、2014年末まで毎月一回、金融政策理事会を開催していました。しかし、2015年1月からは6週間ごとに変更。これに加え、あまり知られていませんが、この6週間の間に一度、金融政策以外の話し合いをするための会合が持たれています。

 金融政策理事会では、現地時間13時45分(日本時間は夏時間:20時45分、冬時間:21時45分)に政策金利の発表。その後、14時30分(日本時間は夏時間:21時30分、冬時間:22時30分)より、総裁の記者会見が行われます。3・6・9・12月の理事会では、マクロ経済予想「スタッフ予想」を発表します。

記者会見と議事要旨

 ECB金融政策理事会は、他の主要国中銀とは記者会見と議事要旨がちょっと違います。

⃝議事要旨

 米国も英国も、出席した理事全員の投票内容を議事要旨で公開しています。しかしECBの場合、決定は全てコンセンサスに基づき、具体的な投票配分を公開していません。ECB理事会は専務理事会の6名と加盟19か国の中銀総裁、合計25名からなる大所帯のため、コンセンサスを重視するようです。

⃝記者会見

 投票配分を公開しない代わり、決定過程を公表し不透明感を出さないためにも、ECBは会合のたびに記者会見を実施し、総裁自ら背景説明をするというやり方を続けてきました。米連邦公開市場委員会(FOMC)も随分遅れて、2019年1月から会合のたびに総裁の記者会見実施に踏み切りましたが、英国中銀はいまだに年4回の記者会見に留まっています。

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専務理事会メンバーはほぼ総入れ替え!

 2019年10月末で任期満了となったドラギ前総裁。その後任は、国際通貨基金(IMF)の前専務理事であり、元仏財務大臣を務めたラガルド氏です。その前年に交代した副総裁は、スペインの元経済大臣であるデギンドス氏。つまり、ECBは主要国中銀としては珍しく、総裁と副総裁が共に中銀での勤務経験がなく、エコノミスト出身でもないのです。

 それ以外でも、2019年には首席エコノミストと2名の専務理事も交代し、メンバーの中で残っているのはメルシュ専務理事のみとなりました。この総入れ替えにより、ECBのタカ派・ハト派の構造が変わってきます。2020年はその辺りを探る動きが出てきやすいと予想しています。特に、最も新しいメンバーであるパネッタ理事とシュナーベル理事の講演には注目が集まるでしょう。

※この記事は、FX攻略.com2020年4月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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ABOUT ME
松崎美子
まつざき・よしこ。スイス銀行東京支店でトレーダー人生をスタート。1988年渡英、1989年よりバークレイズ銀行ロンドン本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年に同じくロンドン・シティにある米メリルリンチ投資銀行に転職。その後2000年に退職。現在はFX取引に加え、日本の個人投資家向けにブログやセミナー、YouTubeを通じて欧州直送の情報を発信。著書に『松崎美子のロンドンFX』『ずっと稼げるロンドンFX』(共に自由国民社)。2018年より「ファンダメンタルズ・カレッジ」を運営。DMMで「FXの流儀」のオンラインサロンも始めた。 スクール:ファンダメンタルズ・カレッジ オンラインサロン:FXの流儀 ~ファンダ・テクニカルを語ろう~
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