FX力を鍛える有名人コラム

次のFRB副議長は誰になるか?[森晃]

ドル紙幣を作るのにいくらかかるのか?

長年米国に住んでいるが、日本のような師走を感じることはあまりない。だが、11月から12月はサンクス・ギビング、ブラック・フライデー、クリスマスとイベントが続くため、何だか浮き浮きした気分になる。それは、ハロウィンのオレンジ色がクリスマスの赤&緑に変わっていく色の変化が季節を演出してくれるからかもしれない。

11月になると、エコノミストと来年の経済見通しがどうなるかについて話す機会が多くなる。最近、ある友人のエコノミストから「ドル」について豆知識を教えていただいたので紹介したい。そのエコノミストから1ドル札を作るのにいくらかかるかと聞かれた。見当がつかなかったので教えていただいたのだが、1ドル札を作るには5.5セントかかり、耐久年数は5.8年らしい。ちなみに、100ドル札を作るのに14.3セントかかり、耐久年数は15年とのこと。

そこで、ドル紙幣を作るためのコスト・パフォーマンスを計算してみた。1ドル札のそれは約0.94(=5.5÷5.8 )cents/years、100ドル札のそれは約0.95(=14.3÷15) cents/yearsであった。それぞれの紙幣を作るコスト・パフォーマンスは、ほとんど変わらないのである。

ボラティリティについての考察

2017年の各国の景気は緩やかに回復を続けた。世界的な株高やインフレーションが安定したことを背景に、輸出国では輸出が緩やかに増加を続けている。輸出国にとって、輸出が増加することで自国内の経済も刺激され好循環が生まれた。また、各国の中央銀行により資産購入がなされた結果、金融市場には過剰流動性がもたらされた。地政学的リスクが生じても、そのリスクを吸収できる環境にある。それにより、金融市場ではボラティリティの上昇による不安定化が生じていない(図①)。

ボラティリティに関して、現在のボラティリティは異常な低さを示すものでなく、過去のボラティリティが高かったとする論文があった。また、この低いボラティリティの謎について、ハーバード大学のジェフリー・フランケル教授は、低い政策金利に伴う低金利が投資家のリスク・テイクの選好を促したとしている。

2013年と現在の金融市場の違いは?

このような金利環境を基に、最近の金融市場を2013年と比較してみたい。2013年は、バーナンキ元米連邦準備制度理事会(FRB)議長が「テーパー・タントラム(taper tantrum):資産購入の買い入れについて減額」を口にした。当時は、それをきっかけに新興国から資金が流出。それによって新興国の通貨も安くなった。それに対して新興国の中央銀行は、自国の通貨防衛のために高金利政策を導入することで通貨安を防衛する対応を行った。しかし、今の金融市場は当時と大きく異なっている。

現在、FRBは利上げを続け、バランス・シートの縮小を始めている。しかしながら、長期金利は少し上昇したが、大きな上昇には至っていない(図②)。また、FRBの金融政策は失業率を重視した上、低いインフレーションを意識しており、利上げのペースは緩やかなものになった。その結果、新興国では通貨安を防衛することから、自国経済を刺激することに関心をシフトできた。実際、ブラジル中央銀行は75ベース・ポイントの追加利下げを行うことで自国経済を刺激する金融政策に転じている。

さて、この環境が2018年以降も続くかどうかを見通すことは、底流に流れる金融環境を知ることになり、ひいては大きな為替の動きを予想する鍵になるであろう。

パウエル議長誕生と次期FRB副議長

パウエルFRB議長の誕生により、金利環境の変化は大きくないであろうという見方が多い。ちなみに市場ではFRBの来年の利上げは2回と予想している。一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーは3回の利上げを予想。ただし、FOMCの顔ぶれも大きく変わるため、年末に来年の金利を予想するのにどれだけの意味があるのかと疑問を持っている。

一方で、筆者が気になる金融政策は金融規制の緩和である。金融規制が緩和されることにより、規制が強化された環境と比べ株式上場の企業数が増えることが期待されるからである。米国の株価についてバブルが議論されているが、この政策の変更が株式市場にどのような影響を与えるかに注目しておくべきであろう。

来年FRB議長はパウエル理事となり、金融規制担当のFRB副議長にクオールズ元財務官が就くのだが、執筆時点では経済政策担当のFRB副議長が空席である。そのため、この重要ポストに誰が就任するのかに市場の関心が集まっている。トランプ大統領のお気に入りで共和党支持のテイラー教授(スタンフォード大学)になるか、共和党支持のFRB議長誕生により民主党とのバランスを考慮して実務家のブレイナードFRB理事になるか、あるいは他の候補者になるか注視したい。

※この記事は、FX攻略.com2018年2月号の記事を転載・再編集したものです 

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