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新型コロナウイルスによるグローバル・リセッションはあるか?[森晃]

 2020年3月24日、本原稿を執筆している。読者の皆さまが本誌を読まれるころ、新型コロナウイルスのさらなる感染拡大(画像①)により経済環境および市場環境が変わっていることが考えられる。3月24日時点での筆者の個人的な経済見通しとして本原稿を読んでいただきたい。

 3月13日、トランプ米大統領は米国内での新型コロナウイルス感染拡大に対処するため国家非常事態を宣言。米国内の経済活動が制限された。翌日、筆者もスーパーに買い物に出かけたが、ある特定の商品(水、冷凍食品、ピーナッツバター、消毒液、ジュースなど)がなくなっていることに驚いた(画像②)。物流はストップしていないので、数日たてば商品は購入できるだろうと判断し、必要なものだけを買って帰宅した。案の定、数日後には商品が補充され、必要な商品を購入することができた。しかし、この出来事には非常にびっくりしている。

グローバル・リセッション

 日常生活から、飲食などのビジネスだけでなく米国民の行動も制限されたことで、米国の経済活動が大きく落ち込むことは間違いないと感じた。米国経済について、ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは、Q2(4-6月)の国内総生産(GDP)は前期比年率で-24%になると予想した。また、JPモルガン・チェースは、Q2のGDPは前期比年率で-14%になると予想した(図①)。ブラード総裁(セントルイス連銀)は、「失業率は30%悪化し、GDPは50%減少する」と発言している。

ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは、Q2(4-6月)の国内総生産(GDP)は前期比年率で-24%になると予想

 そして日本経済も、東京オリンピックが延期されたことによってマイナス成長は避けられないであろう。あるシンクタンクは、GDPが-1.1%になると予想した。新型コロナウイルスによる日本経済へのショックは一時的なものであるため、終息後に今までの経済活動に戻ると考える人もいるであろう。

 しかし、筆者はそうならない可能性が高いと予測している。なぜなら、バブル崩壊後に日本経済が経験したときのように、需要が大きく屈折し元に戻らない可能性が高いと考えられるからである。加えて、インバウンド消費の大きな落ち込みだけでなく、(昨年も本誌で日本経済の先行きに関して指摘したが)不動産、宿泊・観光セクターに過剰に積み上げられた債務が、コロナ・クライシス(昨年の時点では、将来の円高)により不良債券化する可能性があるからである。もちろん、これから議論される名目GDPの経済対策により、このような事態をある程度回避することができるであろう。現時点では米国経済や欧州経済と比べると、ましであることは間違いないであろう。

 世界経済の16%を占める中国経済は、Q1(1-3月)のGDPは前期比年率でゼロ%を割り込む可能性がある。また、公開された欧州委員会の資料(新型コロナウイルスの影響により、GDP成長率が-2.5%:内部資料は-3.9%)を基に欧州のGDPを算出すると、-1%になることが予想される。

 これらの予想を踏まえ、グローバル・リセッションは避けられないであろう。予想される最悪のシナリオは、世界経済が「ニューノーマル(日本化:ディスインフレーションの恒常化、金融政策はゼロ金利かマイナス金利、債務残高が増えること)」となる世界である。

二つのクライシスと大恐慌についての議論

 さて、コロナ・クライシスとリーマン・クライシスの違いは何であろうか。リーマン・クライシスは、米国の金融(証券化された住宅ローン)が住宅バブルを崩壊に導き、企業活動を停止させた。一方、コロナ・クライシスは店舗の営業停止などにより、経済活動がストップしたことで企業の売り上げが急激に減少し、金融市場が収縮した。

 コロナ・クライシスを乗り越えて金融市場を安定化させるために、米国は追加の金融政策(0〜0.25%への政策金利の切り下げや、無制限の量的緩和政策など)を発表した。また、金融政策だけでは十分な政策とはならないため、財政政策(総額2兆ドルの財政出動、国民1人あたり1000ドルの現金を給付など)を米国議会は可決した。米国当局者は、あらゆる政策手段を動員し、新型コロナウイルスによる経済の落ち込みの問題を解決しようと試みている。

 さて、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、長期にわたり経済活動が制限された場合、1929年から1933年に起きた大恐慌に匹敵する不況になり得るかどうか、エコノミストの間で議論がなされている。現時点での筆者は、そのような悲観的な見通しは持っていない。

 ただし、長期の経済活動の制限以外に気掛かりなことが三つある。一つ目は、原油安(WTI原油先物は一時10ドル台まで下落)が米国経済の成長を押し下げることである。二つ目は、レバレッジドローン価格指数やFRA-OISスプレッド(資金需給逼迫の指標)が示すように、米国企業の債務過多が米国経済に与える影響である。三つ目は、バーナンキ元米連邦準備制度理事会(FRB)議長とイエレン前FRB議長がフィナンシャル・タイムズ紙に投稿した「How the Fed can lessen lasting damage from the pandemic」記事にあるように、新型コロナウイルスにより経済活動が止まると、企業の倒産、失業の問題が生じ、一度倒産した企業、失業者が経済に復帰することが難しいことである。

ドル高の動きは継続するか?

 米国の株価が急落すると同時に、ドル円は101円台までの円高となった。その後、さらに株価が下落を続けてもドル円は円高が加速することなく、逆に112円台まで円安となった。このドル円相場は、疑心暗鬼に陥った典型的なヨーヨー相場である。

 では、なぜドルが買われたのであろうか。FRBが量的緩和政策を再開したにもかかわらず、「ドル・クランチ(ドル不足)」が解消しなかったのはなぜだろうか。それは、金融市場でクレジット・スプレッドが急激に拡大し信用収縮が起きたからである。簡単にいうと、世界的なドル資金の需給逼迫(手元のドル資金を確保する動き)が起きたからである。ドル預金を持たない非米系の大手金融機関がドルでのビジネスを展開していたことも、ドル逼迫に拍車をかけた。

 このドルの強さはいつまで続くのであろうか。FRBは日本銀行、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)以外にも豪州、ブラジル、韓国などの中央銀行と共に米ドルを融通し合う「通貨スワップ協定」を結んだ。この協定により、ドルの資金調達市場で見られるドル不足は緩和されるであろう。また、3月23日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で決定した第2弾の金融緩和政策も、ドル資金の需給逼迫の緩和に効果を発揮するであろう。

 ドル円の方向はどうなるか。基本シナリオとしては、円高が進行すると思われる。ただし、リーマン・クライシス並みの円高レベルには到達しないと予想している。一方で、円安の継続も予想される。「クジラ」と呼ばれるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の外国債券の保有比率は25%近くあると思われるが、外国債券の目標値を15%から25%に引き上げたことで、外債購入の玉が出ることが予想される。

 余談であるが、円とドル以外の通貨の将来の動きについても触れたい。現在、円はドルの次に強い通貨である。その主要因は、円と他通貨の名目金利差が縮小したことである。金利差およびファンダメンタルズの温度差から、ドル以外の通貨に対する円の強さはしばらく継続するであろう。

新型コロナウイルスの影響と将来の展望

 新型コロナウイルスの影響により、米国民は経済の落ち込みだけでなく、医療保険制度に対しても不満を募らせるであろう。こういったトランプ大統領の再選を阻む材料は注目しておくべきであろう。サプライ・チェーンの断絶から、グローバリゼーションの脆弱な面を論ずる記事もあるが、これまでの世界経済成長の原動力はグローバリゼーションによるところが大きいことを忘れてはいけない。

※この記事は、FX攻略.com2020年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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