小さいころ、甲子園に高校野球をよく見に行った。おじいちゃんの家が兵庫県にあり、小学生であった筆者は甲子園で高校野球の観戦を楽しんだことを今でもはっきりと覚えている。
筆者は野球小僧ではなかったが、PL学園の大ファンであり、KK(桑田・清原)コンビにはすごく憧れた。甲子園で、かちわり氷を片手に持ち、「PL」の人文字を見ながらの試合観戦は迫力満点であった。特に、PL学園が負けているときに演奏される「ノックアウトマーチ」を聴くと気持ちが高ぶり、PL学園が必ず逆転すると強く信じて応援していた。
大人になってから為替の仕事つながりで、PL学園野球部に所属し甲子園で活躍された元高校球児を紹介していただいた。その方は謙虚で礼儀正しく、真面目で優しい紳士である。筆者が日本を飛び立つときに、「これは巨人のクロマティ選手が自主トレで使っていたボールや。苦しくなったらこのボールを見て諦めずに頑張りー」といってボールをくださった。いただいたボールを眺めると、為替に関わる仕事をやっていて良かったといつも思う。
送金方法の地殻変動
昨年の日本経済新聞の記事によれば、アリババグループ傘下でスマホ決済「Alipay(アリペイ)」を運営するアント・フィナンシャルは、2018年にブロックチェーンの技術を活用し海外送金を無料で可能にするサービスの提供を開始したという。
これにより、香港で働いているフィリピン人の家政婦が本国に送金する手数料が無料となった。また、マレーシアからパキスタンへの海外送金についてもブロックチェーン技術を提供した。これにより、マレーシアに出稼ぎにきたパキスタン人の本国への送金手数料が無料となった。
暗号法2020
2020年1月から、中国で「暗号法」が施行された。この法律により、暗号技術は中国共産党、中国政府の管理の下にしっかりと置かれることになった。
習近平国家主席は、2019年10月、同法案が通過する2日前に、「ブロックチェーン技術の応用は、新たな技術革新と産業のイノベーションにおいて重要な役割を担う。我が国はブロックチェーンのコア技術を自主イノベーションの重要な突破口として、力を入れていかなければならない」と述べている。加えて、「世界の主要国家がこぞってブロックチェーン技術の発展を支援している。我が国も積極的にブロックチェーンを経済・社会に導入し、発展を図っていく」とも述べ、こうした発言を材料にビットコインの価格が上昇したことは読者の皆さまにとって記憶に新しいであろう(チャート①)。
投資家はビットコインの価格が上昇したことで舞い上がったが、この背景についてよく見ておくことが非常に大切である。米国でも経営者や経済学者だけでなく、政治学者、軍事専門家、外交専門家、法律家などの間で、中国がデジタル通貨分野で世界の覇権を握るためにこの法案を可決したのではないかということについて、幅広く議論がなされた。
明確なことは、米欧がデータの流通分野で国際基準を作成している中で、そのデータの流通を支える暗号技術も法案化し施行したことである。そして、その動きが非常に早かったことである。
人民元はドルの地位を脅かすであろうか?
暗号技術と暗号法に支えられ、デジタル人民元の発行とその行方について考えることは、筆者だけでなく読者の皆さまにもとても興味があることであろう。
昨年、中国国家外為管理局(SAFE)の陸磊副局長が、「われわれは国境を越える貿易金融やマクロプルーデンス管理にブロックチェーン技術を応用する試験プログラムの範囲を徐々に拡大していく」「同時に(政府は)暗号通貨に対応するため外国為替改革の将来に向けた研究を推進すると共に、新しい状況下における外為規制と技術システムの構築を模索する」と述べている。これは、ブロックチェーン技術をクロスボーダーでの金融貿易に応用することを意味するものと思われる。
国連の気候変動問題担当特使となったイングランド銀行(BOE)元総裁のカーニー氏が、昨年8月にジャクソンホールで行われた米連邦準備制度理事会(FRB)主催の経済シンポジウムで、「ドルの優位性により、超低金利政策が流動性の罠や世界経済の低成長のリスクを増大させた」と発言している。加えて、「ドルの基軸通貨としての重要性はブレトンウッズ体制の崩壊時と変わらない」とも述べている。
確かに、先進国と比べて新興国の経済活動の割合は増加している。そして、ドル以外の決済方法についての試みがなされている。しかしながら、国際貿易の半分以上はドルで決済されている。そのため、ドルの地位が転落することはないであろう。
しかし、「人民元」を基軸通貨の候補とする議論は盛んである。確かに、基軸通貨としての役割は産業革命後にポンドからドルに移行した。長い視点で考えた場合、もしブロックチェーンが生み出す新たな決済技術がある程度浸透し一定のボリュームとなるなら、基軸通貨としてのドルに、それなりの影響を与える可能性は否定できないであろう。しかしながら、人民元が単独で基軸通貨になることはないものと筆者は確信している。
ノックアウトマーチ
これまでの資本主義国の経済成長は、新たなイノベーションが原動力になってきたことは自明の理である。そして、このイノベーションが「資本主義」という仕組みへの信頼を支えてきた。
中国経済がこれまで急激な成長を続けてこられたのは、「社会主義経済」から資本主義経済にうまく転化できたことが成功の鍵であったと筆者は考えている。しかし、これからの中国がブロック化した世界の構築や孤立した世界観への道を選択するようであれば、それは中国経済だけでなく世界経済の未来にとっても深刻な問題となる。
読者の皆さまに理解していただきたいことは、「グローバル化」に逆行する流れは世界の誰をも不幸にすることである。グローバル化に逆行する動きには、ノックアウトマーチの応援を受け、強い気持ちを持って立ち向かうべきではないだろうか。
※この記事は、FX攻略.com2020年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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教育コンテンツ | 配信されるマーケット情報や投資家向けコンテンツの有無。 |
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