FX女優である陽和ななみさんがトレード成績向上を目指してFXのスペシャリスト山中康司さんからFXで利益を出すために必要な全てを皆さんと共に学んでいきます。今回はファンダメンタルズ分析の基礎を一から詳しく教えていただきます。
ファンダメンタルズは何を見れば良いのか?
陽和 皆さんこんにちは。野中ななみと申します。これから山中先生にFXのいろいろな知識を教えていただきます。私自身もFXの取引をしているので、いろいろ勉強させていただきたいと思っています。初回のテーマは「ファンダメンタルズ」です。先生、よろしくお願いします。
山中 よろしくお願いします。今回はファンダメンタルズということですが、ななみんは既に2年ほどFX取引をしているとのことですから、あまり簡単なお話をしてもしょうがないので、実際に私が市場のどんなところを見ているのかを順に説明していこうと思います。
さまざまな要因
山中 今回の内容は、ファンダメンタルズ、フロー、主要市場と時間、金利市場、周辺市場というFXのトレードをするときに知っておきたい知識についてです。そしてFX市場だけではなく、さまざまな市場が絡みあって動いているのが金融市場ですので、金利市場を中心に見ていこうと思っています(画像①)。それではファンダメンタルズって何でしょう?
陽和 経済指標の発表や、トランプ大統領の発言、どこかで起きている戦争などを大きくまとめたものがファンダメンタルズでしょうか。
山中 そうですね。ななみんがいった通りですが、そもそもファンダメンタルズとはなんぞやというところです(画像②)。広義に捉えるとまず一つは経済、そして需給(フロー)ですね。あとは政策といった各要因です。その中で一番皆さんが気にしているのは各種経済指標だと思います。特に米国の指標が重要です。
次に実需ですね、実需というのは輸出入です。あとは投資で、これは海外の会社を買ったりすることですね。他には為替政策も含めて良いのかなと思います。最近の日本ではほとんどないのですが、他の新興国などでは介入も行われています。それは為替政策に沿ったものになります。
他には政治的な要因、これはいわゆる政治です。為替市場を含めた金融市場でよく気になるのが軍事的な動きで、この辺りもマーケットを動かす要因となります。そして他市場の影響としては、金利市場。金利市場というのは大きく分けて短期金利、長期金利があり、長期金利は債券市場になります。それと株式市場、商品市場があります。
こうして広義のファンダメンタルズを並べてみるだけでもかなり多くのことが含まれていると思います。テクニカル分析とファンダメンタルズ分析といわれるように、テクニカル分析に使われる、いわゆるチャートに使われるもの以外は全てファンダメンタルズと思った方が良いと思います。ですから、ファンダメンタルズはテクニカル以外の全てだということで理解できると思います。
注目されていた米国の「双子の赤字」
山中 最初に相場を動かすファンダメンタルズとして、経済要因=各種経済指標が挙げられます(画像③)。注目される経済指標は時代によって全然違います。今だと何が注目されていると思いますか?
陽和 米国の雇用統計とかですか?
山中 そうですね。雇用統計も一時期注目されていたと思いますが、最近は雇用統計が出てもあまり動かないことが多いです。その背景には、米国の失業者がほとんどいなくなっていることがあります。もともと米連邦準備制度理事会(FRB)が目指していた完全雇用状態にほぼほぼ近づいてきたということで、それほど注目されなくなってきているといえます。
陽和 確かに最近は失業率がずっと3%台ですね。
山中 はい。ずっと低い状態で、低位安定という好ましい状況といえます。では一昔前は何が注目されてきたのかというと、80年代、90年代初めぐらいでは米国の「双子の赤字」、いわゆる財政赤字と貿易赤字です。特に財政赤字は米国に頑張ってもらわないと仕方がないという面がありました。
貿易赤字は、当時の日本の貿易黒字が非常に目立っていて、貿易赤字の発表があるたびに、特に対日赤字が多いと指摘されるたびに、ドルが売られて円が買われるという時代もありました。今はまたトランプ大統領による米中通商協議が注目されて、今ちょうど3月なのでおそらく今月中に最終合意がまとまるのではないかという段階まで来ています。今度は、4月以降に始まる日米通商協議で、再び貿易赤字が注目されるようになるかもしれません。それ以外にどんな時代にも比較的注目される景気を反映する経済指標に関しては、後ほど触れたいと思います。
実需やオプションで分析したい視点
山中 次はフロー(需給)ですね。よく「110円の大台には大量の売りがある」とか、今だと111円台半ばなので逆に「110円あたりにはそれなりの買いがある」とかいわれることがあります。そのようなときに、どの辺りに大きな買いのオーダーや売りのオーダーがあるのか見ていくわけですが、特にその中で大きなものが実需です。例えばトヨタ自動車などは、あちこちに車を輸出していて、その代金が仮に外貨で入ってきた場合に、外貨を円に換えることによって収益を上げていきます。そうするとドルやユーロを売るという大きな企業のオーダーは非常に重要になってきます。
続いてもう少し短期的なものとして、よくいわれるのがオプションのストライクがあるかどうかです。ストライクというのはオプションをある一定の価格で売る権利や買う権利のことです。特に為替市場で気にされているのは一定の水準を超えたらオプションの権利が消失するというノックアウトオプションです。そういったオプションがどこにあるのかが重要となります。なぜならそのようなオプションがあると、その水準でいったん価格が止まったり、そこを超えると急に動いたりすることがあるからです。
また、時間的な要因や季節的な要因も挙げられます。時間的な要因は、例えば午前10時になると東京の仲値の発表があります。オプションについても東京のオプションカットの時間などに注目ですね。一方の季節要因ですが、これは毎月あるいは四半期ごとに重要なタイミングが訪れます。
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通貨政策と金融政策
山中 次に政策についてですが、いわゆるファンダメンタルズの中で最も重要で、それが出たら全てを変えてしまうものが通貨政策です。特に米国のドルは基軸通貨なので重要です。もしドルの通貨政策が変わるということがあれば、それは他の全てのファンダメンタルズよりも優先して考えなければいけないことになります。
歴史的に見ると、1985年の9月にプラザ合意がありました。プラザ合意は実質的にドルを切り下げることを、G5という主要国が集まってプラザホテルで決めたからプラザ合意と呼ばれています。プラザ合意の直前の水準が242円くらいで、その年の年末が200円くらいですから、わずか2か月半で約40円動いてしまったということです。
日本は通貨政策をやったら大変なことになりますので表立ってはないですが、例えばスイスはスイスフランが他国通貨に対して強いのか弱いのかを気にしている国です。他の国でも通貨政策、特に介入と密接に結びつくものに関しては、これが全てを変えてしまうという意味で最も影響のある要因になります。
陽和 介入というのは国がその通貨を買ったり売ったりすることによって価格を変えることですか?
山中 そうですね。よく日銀が介入といいますが、日本の場合だと財務省が通貨当局となるので財務省の代わりに日銀が行う、指示をするのは財務省です。ただこれは国によってどのような規定があるのか微妙に違いはあります。中銀が決定する場合もありますし、日本の財務省のようなところが決める場合もあります。要は介入も含めて通貨政策は非常に重要ということです。
あとは皆さんもかなり気にしていると思いますが、金融政策ですね。日本の金融政策だと日銀、あるいは米国だとFRB、欧州だと欧州中央銀行(ECB)とか英国の中銀であるイングランド銀行(BOE)といったところがどのような金融政策を行うのかに注目です。
さらにそういった政策に伴って、大臣や次官級の要人たちの発言、あるいは通貨当局者の発言とかにも注目します。例えば介入などに直接関係するところですと、財務省の財務官の発言とかは結構重要になります。要人・高官の発言が相場を動かすという意味では非常に重要な部分だと思います。
米国の経済指標が最重要な理由
山中 ではもう少し細かく見ていきたいと思います(画像④)。「米国の経済指標が最も重要」と一行目に書いてあります。先ほど雇用統計はあまり動かないといいましたが、実はそれなりに動きます。例えば日本の経済指標で日本の雇用統計、いわゆる失業率や有効求人倍率ももちろん同じように発表されていますが、それでは動きません。よほど予想から外れたら動くこともあると思いますが、要は米国の経済指標が最も重要で、皆が注目しています。なぜでしょうか?
陽和 ドル円やユーロドルのように、皆がドルを絡ませた取引をしているからですか。
山中 おっしゃる通りです。さすが、ななみんですね。米ドルは基軸通貨なのでドル円、ユーロドル、ポンドドル、ドルスイスフランというように、インターバンク市場における為替の取引でドルが絡む取引はおそらく8割以上だと思います。ユーロ円やポンド円といったドルが絡まない通貨ペアはインターバンク市場で取引がないのかというと、あるんですけれども圧倒的に少数ということになります。欧州だとユーロポンドやユーロスイスフランはそれなりに取引量がありますが、ほとんどの場合はドルが絡んでくるので米ドルを自国通貨とする米国の経済指標が最も重要であるということです。
※この記事は、FX攻略.com2019年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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