2019年商品相場総括[佐藤りゅうじ]

騒乱と新秩序の元年

 2019年、米中貿易摩擦、英国のブレグジットをめぐる混乱、香港問題、ラガルド欧州中央銀行(ECB)新総裁の誕生など、さまざまな出来事が起こりました。後世の歴史家たちは、この年を騒乱と新秩序の元年と考えるかもしれません。

 相場として見ると、政治家などの要人発言や政局にずいぶん振り回された一年であったように思います。株式相場では、米国の主要株価指数が史上最高値を更新するなど非常に好調でした。一方、為替相場はドル円、ユーロドルが過去最少の年間変動率(2019年12月13日現在)となっています。相場によって全く違う顔を見せた2019年ですが、今号では商品相場の2019年を振り返ってみたいと思います。

パラジウム最強時代

 まず、今年の主要商品の騰落チャート(2019年12月13日現在、チャート①)をご覧ください。きれいな右肩上がりで、しかも年間50%以上の上昇となっている緑色の線がパラジウムになります。

主要商品の騰落率

 1月号でパラジウムについて述べましたが、そのときは1700ドル台後半であり、長期的には2000ドルが視野に入るとしました。しかし、なんと12月13日には1981ドルまで急騰する場面がありました。さすがに、2000ドルの手前では過熱感から売りを浴び、1900ドル台前半まで下落しましたが、2000ドル達成は目前となっています。パラジウムは、2016年初頭は500ドル前後でしたので、この4年で約4倍に跳ね上がったことになります。

 パラジウムが上昇を続ける背景についての詳細は別号で述べたいと思いますが、一言でいってしまえば供給不足です。供給量の約8割がガソリン自動車の触媒として使用されるパラジウムは、2017年のフォルクスワーゲンのディーゼルエンジン排出規制に対する不正問題以降、ガソリン自動車の生産増により、需要が拡大しました。

 その一方で、主な生産国である南アフリカとロシアは電力問題や労使問題を抱えている上、パラジウム自体がプラチナや銀の副産物であることから、増産には至っておりません。これだけの高値をつけた以上、乱高下は避けられないですが、ファンダメンタルズ要因から買われており、売り一巡後は買われる展開が続きそうです。

堅調地合い継続の金

 2019年は要人発言や政局に振り回された一年と述べましたが、そういったリスクが高まると注目されるのが金です。2019年の金は約15%の上昇となっており、7月ごろから地合いを引き締めているのが目立ちます。これは、8月から米連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げに動いたことと関係しています。

 金利を生まない(厳密には違うが)金は、利下げ局面でドルに対して相対的に価値が高まります。また、米中貿易摩擦や香港の混乱などといったリスク要因も金にとっては強材料となります。これまで金の売り手であった各国の中央銀行も金買いに動いています。特に、米中貿易戦争や経済制裁の影響から、中国やロシアの金買いが目立っています。また、これまであまり目立っていなかったポーランドなど、新興国の金買いも増えており、2020年も金価格が大崩れする可能性は低そうです。

原油価格の上値は重いか

 原油価格ですが、年間の上昇率では約31%とパラジウムに次いで高い数値となっています。これは、今年の始値が46ドル台と発射台が低いことが影響しています。石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成するOPECプラスは2016年末から協調減産を実施。2019年12月には2020年1月から3月まで協調減産の規模を現行から50万バレル拡大し、日量170万バレルとすることを決定しました。ただ、それでも国際エネルギー機関(IEA)は、2020年のOPECプラスの生産量は予想される原油需要を上期に日量70万バレル、下期に100万バレル上回る見通しとしています。

 米国の原油生産の拡大は、コストの関係から減速するとみますが、原油価格は上値の重い展開が続きそうです。

コーンは上値重くゴムは春までは高い?

 農産品の代表としてシカゴコーンを見てみます。2019年のコーンは天候不順により、6月に464セントまで上昇し、2014年6月以来の高値をつけました。ただ、その後天候が回復すると340セントまで急落し、年初からの騰落率は-2.4%となっています。以前なら、一度作付けが遅れると取り戻すのが難しかったのですが、今は天候が回復すれば自動運転により、昼夜を問わず作付けを実施。種が害虫や病気に強くなっており、難なく遅れを取り戻します。2019年の値動きは、このことを如実に表した相場です。このため、今後も天候要因などから急騰することがあるでしょうが、そこは売り場になる可能性が高そうです。

 最後にゴムですが、産地でゴム樹が真菌病にかかっていることから、価格が上昇しています。ただ、病気という割には産地価格の上昇は限られています。天然ゴム価格は、タイが乾季となる3月に向けて上昇する傾向があり、2020年も3月くらいまでは、急落場面はありながらも高値を維持しそうです。

※この記事は、FX攻略.com2020年3月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

佐藤りゅうじの写真

佐藤りゅうじ(さとう・りゅうじ)

1968年生まれ。1993年米大卒業後、マーケティング会社を経て、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(後の株式会社オーバルネクスト)入社。マクロ経済分析をはじめ、為替、商品、株式市場のアナリストリポートの執筆、トレードに携わる。2010年より「エイチスクエア株式会社」を起業、アナリストレポートを執筆、「FOREX NOTE 為替手帳」等の企画・出版を行うかたわら、投資関係のラジオ番組キャスターを務める。個人トレーダー。国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト。ラジオ日経「ザ・マネー ドイサトの相場予測」(月曜15:00〜)メインキャスター。

公式サイト:佐藤りゅうじブログ

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