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原油相場が暴落 サウジVSロシア[佐藤りゅうじ]

2002年以来の安値

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、金融市場は大荒れとなっています。ダウ平均株価は、1日で2000ドル超の値動きを見せ、異様ともいえる展開となっています。この金融市場の大混乱を助長したのが、原油価格の暴落と考えられます。今回は、19年ぶりの安値まで暴落した原油相場の行方を考えていきたいと思います。

 3月6日、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアをはじめとする非加盟国(いわゆるOPECプラス)の閣僚会議で、OPECによる追加減産と減産延長に関する提案をロシアが拒否しました。これにより、2016年12月に合意したサウジアラビア主導のOPECプラスの協調減産が終わりを告げ、一転して価格競争へと突入しました。

 NY原油は、協調減産体制の崩壊を受け、3月6日に約10%下落し、41.28ドルで引けると、週明けの9日は米国株の暴落もあり、場中に27.34ドルまで下落。そして、20日に2002年2月以来の安値となる19.46ドルまで一時下落しました(チャート①参照)。

NY原油週足チャート(期近つなぎ足)

各国増産体制へ

 暴落の背景には、産油国が増産体制にかじを切ったことが挙げられます。協調減産の崩壊を受け、サウジアラビアはこれまで協調減産と自主的な減産を合わせて日量970万バレルまで生産を減らしていましたが、4月の生産量を日量1230万バレルまで引き上げる計画を表明しました。

 これを皮切りに、ロシアの国営石油最大手ロスネフチが4月から生産量を日量30万バレル引き上げることを発表しました。また、ロシアのノバク・エネルギー相は、ロシアは50万バレルの増産も可能だと語っています。これに加え、UAEのアブダビ国営石油会社(ADNOC)は日量300万バレルから日量400万バレルに増産する準備があると表明しています。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的な景気減速が叫ばれる中、産油国は“不毛な戦い”に足を踏み入れました。

協調減産破棄の背景

 そもそもなぜ、ロシアは協調減産体制を嫌がったのでしょうか。そこには、協調減産体制を主導してきたサウジアラビアとロシアの両国が望ましいとしている原油価格の水準に大きな隔たりが生じていることが挙げられます。

 ロシアは、最近の原油価格の下落を受けて、財政における原油への依存度を引き下げた上、原油高の際に積み立てた財政資金があります。現在、ロシアの歳入に占める原油収入の割合は、3分1にも達していません。連邦予算で設定している原油価格は、1バレル42.2ドルです。このため、昨年のように原油価格が50~65ドル前後で推移するなら、追加減産ではなく、むしろ増産が望ましい状況です。ロシア財務省は今回の原油暴落を受けて、25~30ドル水準が続いても今後6~10年間は対応可能だとの見解を示しています。

 一方、サウジアラビアは中東情勢の緊張を背景に防衛費の拡大が続いており、6年連続で財政赤字となっています。また、歳入の約68%を石油分野に依存し、均衡財政のための想定原油価格は70ドルを超えているとみられます。国際通貨基金(IMF)の試算では、78.3ドルとなっています。サウジアラビアから見れば、2019年の50~65ドルのレンジでは財政が回らないことになります。

 サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコのナセルCEOは、2019年の原油生産コストは1バレル2.8ドルであり、原油価格が30ドル程度の価格でも問題ないと自信を示していますが、同国の財政における原油の依存度を考えると、原油価格下落への耐性はロシアより限られるでしょう。

 サウジアラビアがロシアとの価格戦争に踏み込むのは、理屈には合わないように思われます。ただ、それでも価格戦争に動くのは、協調減産体制を主導してきたサウジアラビアのムハンマド皇太子のメンツの問題との見方もあります。

今後の行方は?

 消耗戦と化した原油相場は、全ての産油国にとって得るものはないでしょう。次回のOPECプラス会合は6月に開催が予定されており、サウジアラビアのファリハ・前エネルギー相はロシアのノバク・エネルギー相と折衝を続けています。

 また、原油価格が米シェールオイルの生産コストを下回ったことから、トランプ米大統領はロシアとサウジアラビアの対立について「適切なときに関与していく」と述べています。サウジアラビアのムハンマド皇太子は米国との関係を重視しており、手打ちとなる可能性もありそうです。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的に景気が減速しており、仮に手打ちとなっても戻りは40~50ドル台に限られそうです。

※この記事は、FX攻略.com2020年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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