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金融リテラシーが身につく YEN蔵の投資大学(アカデミア)第4回[YEN蔵]

金融リテラシーが身につく YEN蔵の投資大学(アカデミア)|第4回[YEN蔵]

新型コロナウイルス感染拡大でリスク回避の動きが加速

 2020年2月の最終週は、新型コロナウイルスの感染拡大が東アジアにとどまらず世界各国に広がりました。とりわけイタリアでの感染拡大は欧州への感染リスクを高め、このことが市場に大きな影響を与えました。今回の動きには、目に見えないウイルス感染に対する恐怖心があるのかと思います。この辺りは、東日本大震災による原発危機のときの動きが参考になるかもしれません。

 年初まで市場のテーマとなったのは米中通商問題と、中東での米国とイランの対立でした。このときは、何か悪いニュースが出ても短期で下落が終了して株式市場が反発。為替も比較的安定して推移する期間が続きました。

 米中通商問題は、今から思えば予想が比較的可能なリスクでした。トランプ大統領がツイートで何をつぶやくか分からないといったリスクはありましたが、関税の有無によってその後の経済活動への影響を予測することは簡単とはいえないまでも、予想の範囲を絞ることはできました。

 一方で今回の新型コロナウイルスは、まず感染の拡大がいつ止まるかということの予想が難しくなっています。次に、感染拡大が終息したとしても、そこまでに経済活動が縮小していますから、その影響がどれぐらい出るのかという予想も難しいです。そのため経済の先行きに不透明感が漂い、市場が急速に弱気になっているのでしょう。

 仮に経済減速が予想されていても、それがある程度予測可能であれば株価は下落するにせよ暴落とはなりません。しかし、市場が一番嫌うのは不確実性です。不確実性があるから暴落が起こります。

 日本でもイベントの中止延期や外出を控える動きが広がっており、この影響が経済活動を減速させることは間違いありません。終息のめどがついて通常の経済活動に戻るまでは予想が難しいです。こういった不安感が株価の下落を加速させ、債券に資金がシフトする、いわゆるリスク回避の流れになっています。

 為替の動きとしては、リスク回避の流れということで、結局円高になりました。ドル円は2月20日に一時112円台まで上昇し株安、円安という嫌な流れとなりましたが、その後は107円台に下落し円高が復活しました(チャート①)。

2020年以降のドル円の推移

出所:TradingViewによるUSDJPYチャート

 円高前の円安の流れに関しては、いろいろな説が飛び交っていますが、一部には日本機関投資家のドル買いなのではないかとの説もありました。仮に日本人投資家の需給だったとしたら、その資金はどこに向かったのでしょうか。おそらく米国債などに向かったのではないかと思います。

 2月19日の米10年債利回りは1.55%、30年債利回りは2.01%でしたが、3月3日には前者が1.00%を、後者が1.65%を割り込みました(チャート②、③)。

2020年以降の米10年債利回りの推移

出所:TradingViewによる米国債10年利回りチャート

2020年以降の米30年債利回りの推移

出所:TradingViewによる米国債30年利回りチャート

 米中の通商問題は2018年から始まって、既に1年以上が経過しましたが、結局米中合意でいったんこの問題はマーケットの注目材料から外れました。また、米国とイランの問題はおよそ1か月で終息しました。

 今回の新型コロナウイルスの問題は、2月中旬からスタートして執筆時の3月初めまでの間にまだ終息していません。3月2日の時点でドル円は107.40円、日経平均先物は2万450円、ダウは2万4681ドルまで下落しています。このレベルがいったん底になるのかどうかが重要なのですが、しばらくは乱高下が続くのではないかと、この時点では考えています。

市場のリスクの種類

 市場は神経質なものです。特に先が見えないという不安に対して変動を加速する傾向があります。市場はたとえ悪いニュースが出たとしても、そのことによって先が予想できるようであれば、少なくともパニック的な売りや買い(例えばオプションなど)は沈静化に向かいます。

 マーケットはいろいろな材料によって動きますが、その材料がどれだけマーケットを動かす力があるのか、言い換えればその材料がいつまで旬な状況にあるのかを考えなければいけません。

 私は実際の売買をテクニカルでやることが多いです。個別株の売買は、その企業のファンダメンタルズが重要です。企業のファンダメンタルズでは、その会社の業績はどうか、製品やサービスが業界で評価されているのか、その企業の経営者の能力は高いのかどうか、などの材料に注目する必要があります。

 一方で、先物取引や為替の場合はファンダメンタルズも重要ですが、多くの時間帯はテクニカルで動いていることが多いと思います。しかし、だからといって先物の取引や為替の取引でファンダメンタルズを無視していいわけではなく、大きな相場の流れは把握しておかなければなりません。

 執筆時点で市場がテーマにしているのは、新型コロナウイルスの感染拡大がどこで止まるのかということです。そして、この感染拡大によって経済活動がどこまで影響を受けるのかということも相場の大きなテーマになっています。

 日々のマーケットの動きでは、ファンダメンタルズやテーマの影響は限られていますが、市場が大きく動くときには必ずファンダメンタルズの変化や新しいテーマが出てきます。ですから、大きな流れを捉えるためにも市場が今何をテーマにして動いているのかを理解しなければなりません。そして、市場がそのテーマに沿って動いている間は逆張りは禁物で、テーマによるメイントレンドの方向にポジションを持つのが基本です。

 やがて市場はそのテーマでは動かなくなります。あるいは悪いニュースが出ているのに、そのニュースに反応しなくなるなど相場の潮目が変わるときが来ます。それをうまくキャッチすることが、テーマ投資の重要なポイントです。

自然災害を参考に市場への影響を見る

 今回の新型コロナウイルスによる市場への影響は、過去のケースと比較すると自然災害などに当てはまるのではないかと思います。具体的には、1995年の阪神・淡路大震災、2005年に米国で起こったハリケーン・カトリーナ、2011年の東日本大震災が当てはまるのではないでしょうか。また自然災害ではないですが、2001年に起こった9.11米同時多発テロも、このケースと同じようなパターンだと思います。

 過去に起こったこれらの自然災害的、あるいは突発的な事象による影響で、明確に経済成長率が低下したのは米国の9.11のケースと、日本の東日本大震災のケースだけでした。

 去年市場に大きな影響を与えたテーマは、米中通商交渉でした。このテーマは1年かけて続いたので、自然災害型のテーマというよりは地政学的なリスクに近いテーマでした。米中の通商摩擦によって貿易の停滞が起こり、成長率が低下した部分はあったと思います。ただ、米国では成長率が維持されましたが、中国の成長率は低下しており、それがどれだけ世界に、そして日本に影響を与えたのか見極めるのにはまだ時間がかかりそうです。

 今回のケースは、新型コロナウイルスの感染拡大によって経済成長がどれだけ低下するかが重要なのですが、感染拡大が短期に終わるのかどうかもポイントになります。もし感染の拡大が短期で終了すれば、過去のケースから見るとハリケーン・カトリーナが当てはまるのではないでしょうか。

 一方で感染拡大が長引いた場合は、米国における9.11や日本における東日本大震災のケースと同様の動きになる可能性があります。

 ここで、危機が起こったときの投資行動がどのようなものかも比較してみましょう。かつて戦争などが起こった場合は、「有事のドル買い」といわれドルが買われるケースが見られました。しかし2000年代に入ると、何か危機が起こるとリスク回避の動きということで円やスイスフランが買われています。よく「安全資産の円が買われて…」という表現が使われますが、この安全資産として買われるという表現には問題があると私は考えています。なぜ円が買われるかについては、また別の機会に詳しく書きたいと思います。

 また、危機が起こったときには「株式が売られて、国債が買われる」というパターンも見られます。国債というのは現金に次いで信用のある資産なので、「安全資産として国債が買われる」という表現は正しいと思います。

 そして、その中でも最も信用力が高く、流動性の高い米国債が買われる傾向にあります。米国債が買われるということは、米長期金利が低下しますから、ドルが売られるパターンになります。もちろん、いろいろな国で国債が買われますので、他の国の長期金利も低下するのですが、今回は特に米国債の金利低下が顕著になっています。執筆時点において、米10年債利回りや米30年債利回りが過去最低水準まで低下しています。

 新型コロナウイルス感染拡大が市場のテーマとしていつまで有効に機能するか、その後の経済成長にどれだけ影響を与えるのかが重要であり、このことに市場があまり反応しなくなってきたときが、テーマの旬が終わるときです。

 このように市場に影響を与えるテーマに注意しながら(今まで反応していたテーマに反応しなくなるときが重要です)、テクニカルを使ってトレードを行うというのが、私のテクニカル、ファンダメンタルズの利用方法です。

※この記事は、FX攻略.com2020年5月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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ABOUT ME
YEN蔵
えんぞう。米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行と外資系銀行にて、20年以上、外国為替ディーラーとして活躍。現在はトッププロトレーダーとして為替、日経平均、日経オプション、個別株の取引を行う。投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨を始めとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。 ・メルマガYEN蔵 リアル・トップ・トレーディング
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