休む勇気、止める勇気[中里エリカ]

このところ、話題を独占している「新型コロナウイルス」は大きく相場を動かし、ドル円相場は3月9日(編集部注:2020年)に101円台をつけて3年4か月ぶりのドル安円高となった。為替相場では、ストップロスがさらなるストップロスをつけるきっかけとなることがある。これまでにも、さまざまな不安感から相場が大きく下落して狼狽売りが加速し、さらに値が崩れるといった局面がいくつもあった。
短期間で大きく動く相場は投資家が大きな利益を生むこともあるし、大きな損失を生むこともある。長年のインターバンク取引の経験から私個人としていえるのは、「マーケットの動きに謙虚に耳を傾ける」ということだ。
常にマーケット・レートは、そのときにふさわしい場所にとどまろうとする。だからこそ、心地の良い場所から抜け出すには大きなエネルギーが必要になる。そのエネルギーの発端となる材料を見つけると、新しい場所に動こうとするし、新しい場所に行ったとしても、行き過ぎた場合は元の場所に戻ることもある。
また、大きく動くときはそれまでに到底抜けられなかった底値をいとも簡単に抜けて、さらに下値を試そうとする。こうした動きはテクニカルもファンダメンタルズも関係なく起こり、「止まるところで止まる」。すなわち、「過去にこういうことがあったときは2円動いたから今回も同じだろう」とか、「テクニカルではここがポイントだから、そこで止まるだろう」というのは何も意味をなさない。仮に「前回と同じく2円動いた」としても、それはあくまで結果論であり、次に同じことがあったときにはもっと動くかもしれない。マーケットは常に正しいと思った場所まで動くものである。
普段から必ず逆指値を入れておくべき、ということを繰り返しここでも書いているが、「自分はどれだけ損失を出しても大丈夫なのか」「いくらになったら損切りをするのか」というルールはいつも必要だ。そして、そのルールは絶対に守らなければならない。
以前勤めていた会社の上司から、損切りをするときは「神風を期待するな。本当だったらもっと損が出ていたかもしれないのに、そこでロスカットができてラッキーだったと思え」と繰り返しいわれていた。FXでは「相場が大きく動いているときは休んで様子を見る」「ロスカットを自分のルールに基づいて確定させる」「自分を過信しない」ことが重要なのだ。
例えば、「セントラルミラートレーダー」のような自動売買ツールであれば、相場がファンダメンタルズ要因で動いているときはためらわずに全てのストラテジーをいったん止める。また、ドローダウンが過去最大を超えたときは、すぐにポジションを決済してポートフォリオから外し、自分が好きなパターンになったときにさっと入れられるよう、資金を残しておいた方がよい。
何の根拠もない相場観で「ここで止まるはず」と思うのではなく、マーケットに対して謙虚に向き合い、機動的に動くことが大切である。
※この記事は、FX攻略.com2020年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
※当コラムは執筆者の個人的見解に基づいて書かれたものであり、セントラル短資FXの考えを反映するものではございません。