女優・投資家である陽和ななみさんがトレード成績向上を目指してFXのスペシャリスト山中康司さんからFXで利益を出すために必要な全てを皆さんと共に学んでいきます。今回もテクニカル分析の応用としてカスタムインジケーターを紹介していただきます。
複数時間軸を見るMTF移動平均線
陽和 前回から山中先生にお勧めのカスタムインジケーターについての解説をしていただいています。今回もよろしくお願いします。
山中 今回はトレンド系の「MTF移動平均線」と、もう一つは逆張りで使える「ピボットゾーン」の二つを紹介していきます。
陽和 まずはMTF移動平均線から教えていただけますか。
山中 MTFとはマルチタイムフレーム(複数時間軸)のことです(画像①)。もともとは複数時間軸のチャートを並列表示するエルダーさんの「トリプルスクリーン」が有名です。画面(スクリーン)に月足と週足と日足の三つのチャートを並べて見るという非常にシンプルなもので、そこからMTFが発展していきました。MTFには、他にも「KST(Know Sure Thing)システム」という、一つのインジケーターの中に四つのパラメーターをミックスして表示するカスタムインジケーターなどがあります。
今回のMTF移動平均線は、上位時間軸で使う移動平均線を下位時間軸のチャート上に表示する方法です。『新マーケットの魔術師』という本にも登場する有名トレーダーのロバート・クラウスさんが提唱した手法で、一般的にMTFという場合はほとんどこの方法を指します。
陽和 チャートの切り替えや複数のチャートを表示する必要がなく、一つのチャートでより長期の動きも確認できるんですね。
山中 そうです。実際にMTF移動平均線を週足として表示した2019年末からのドル円日足チャートを見ていきましょう(チャート①)。ここで表示しているカスタムインジケーターは私が作成したものです。期間20週の単純移動平均線(SMA)を赤い線で表示しています。
陽和 線がカクカクしていますね。
山中 これは日足の移動平均線が毎日の終値で計算するのと同じように、週足の移動平均線は金曜日の終値で計算しているからです。したがって、1週間はレートが同じため、動きが階段状になっています。
陽和 線の動きは5営業日ごとの区切りなので分かりやすいですね。
山中 20週SMAと日足の関係を見ると、チャート中央の2020年の年初辺りでローソク足が20週SMAを一度下抜けて、その翌日には戻しています。その後も20週SMAの下抜けにトライするも、終値では20週SMAの上にきて長い下ヒゲをつけています。1月末から2月にかけても同じことが起きています。このような動きを見ると、20週SMAがサポートラインのように機能していることが分かります。MT4でMTF移動平均線を表示させた場合も見方は同じです。
陽和 例えば、1時間足に4時間足のMTF移動平均線を表示させることも有効ですか?
山中 もちろんです。1時間足と4時間足では比率的に4倍ですが、もう少し下位の時間軸の30分足、15分足チャートに4時間足のMTF移動平均線を表示、あるいは5分足に1時間足のMTF移動平均線を表示して使っている方もいます。
陽和 何倍くらいのものを表示すると良いのでしょうか?
山中 よくいわれるのは比率として5倍以上を表示すると効果的です。日足では5日移動平均線を表示するのが一般的で、期間2日や3日の移動平均線はあまり使われていません。
陽和 そうすることで、デイトレードやスキャルピングに落とし込んでも使えそうですね。
山中 そうですね。長期の方向性を見るときに重要なのは、自分が普段どの時間軸のチャートを見ているかによります。メインで5分足を見ている人ならば、1時間足の指標を表示するのが良いと思います。1時間足を見ている人なら日足を、日足を見ている人は週足を表示すると良いと思います。あとは日足チャート上に週足と月足の移動平均線の2本を複数表示するという使い方もありますね。MTF移動平均線は非常に使い勝手が良いので、このカスタムインジケーターを使いたいがためにMT4を使っている方も多いです。
上下等間隔で幅のあるピボットゾーンの見方
山中 次に、ピボットゾーンです。TradingViewではピボットゾーンという名称ですが、MT4のカスタムインジケーターでは「フィボナッチ・ピボット」で検索すると見つかると思います。もともとのピボットは、テクニカル指標のレジェンドといってもいいJ・W・ワイルダーさんが開発しました。ワイルダーさんはこの他にもRSI、DMIなど有名なテクニカル指標を数多く開発しています。
陽和 ATRもですよね。
山中 このワイルダーさんの作ったピボットのオリジナルの計算式を見ると、ピボットからのサポートとレジスタンスで上下の値幅が違ってきます。それが良い場合もありますが、悪い場合もあります。そこで、先ほどのロバート・クラウスさんがピボットからの上下を等間隔にして、さらに1本の線ではなく幅を持たせることでレジスタンスになりやすいゾーン、サポートになりやすいゾーンの表示に変化させたのがピボットゾーンです(画像②)。
ピボットゾーンの計算式はオリジナルと同じで、前日の高値、安値、終値の平均値(BP)です。サポート・ゾーン1(S1)とレジスタンス・ゾーン1(R1)は高値-安値に前日のレンジ幅の半分を引く、あるいは加えます。サポート・ゾーン2(S2)とレジスタンス・ゾーン2(R2)は前日のレンジ幅そのものを引いたり足したりと、かなり簡易化した水準を表示します。さらにレジスタンスの方を見ると、前日のレンジ幅の半分(0.5)を加えたR1と、前日のレンジ幅に0.618のフィボナッチ比率を加えたR1’の二つで幅を持たせています。
実際にユーロ円の1時間足チャートで確認してみましょう(チャート②)。ピボットが青い線、上の赤い線がレジスタンス、下の緑の線がサポートとして表示されています。まずは2020年2月21日を見ると、この日はS1とR1のどちらのラインにも到達していません。その前日の20日を見ると、R1とR1’の間が高値圏になっていることが分かります。少し飛び越えている部分もありますが、この日はこの幅を上がりきらずにR1~R1’内で終えています。さらに前日の19日を見ると、R1~R2を一気に上抜けています。このような場合はトレンドが発生している日になります。オリジナルのピボットでいえば、R3やS3に相当するブレイクアウトポイント(BOP)です。本来ピボットは逆張り目的で利用することが多く、その反転の目安となるR1~R2を全部抜けたパターンですね。ピボットゾーンではR1~R1’の間がレジスタンスとして、S1~S1’の間がサポートとして機能しやすいです。一番右の2月24日の動きは21日から週末を挟んだので、ギャップダウンしてから上昇していますが、このギャップダウンの動きがまさにS1’で止まっています。
陽和 フィボナッチ比率を組み入れて幅も持たせた部分がしっかり機能していますね。
山中 そうですね。前日のレンジ幅の半分では止まっていませんが、レンジ幅の61.8%で止まっています。ちなみにこのチャートでは日足ベースのピボットゾーンだけでなく、週足ベースのピボットゾーンも表示しています。
陽和 これもマルチタイムフレーム分析ですね。
山中 まさに先ほどのMTF方式です。私が作成したこのカスタムインジケーターでは、日足ベース・週足ベースを選択できるようにしてありますので、二つとも表示させることでどちらも確認できます。長い青の線が週足ベースのピボットになります。
陽和 119.5円の手前にある線ですね。
山中 日足のピボットゾーンで見てトレンドが出てきた場合には、週足のピボットも気にすると良いです。先ほど19日の上昇トレンド発生の動きを確認しましたが、週足のピボットも大きく抜けて週足ベースのR1~R1’辺りでもみ合っています。そこからさらに抜けた先を見ると、今度は日足のR1~R1’と週足R2が重なった部分でもみ合っています。この辺りで上昇トレンドがもみ合いに変化しているので、そろそろトレンドが終わって転換かなと判断することができます。次にMT4のピボットゾーンも見てみましょう(チャート③)。
陽和 こちらはフィボナッチ・ピボットで検索すると見つかるカスタムインジケーターですね。
山中 はい。チャートは先ほどと同じユーロ円1時間足です。ピボット(BP)がピンク、R1とR1’が黄緑、R2が緑、S1とS1’がオレンジ、S2が赤の線になります。こちらは日足ベースのみですが、週足ベースのものも探せば見つかると思います。
陽和 このピボットゾーンでは価格を線との点で見るのではなく、ゾーンの幅で見ていくのがポイントですね。
山中 幅を持たせることは大事です。以前テクニカル分析の基礎編で「トレンドラインなどはマーカーで引くイメージが良い」と紹介したのと同様です。開発者のロバート・クラウスさんもそのような意図で幅を持たせたのではないかと思います。その幅にフィボナッチ比率を使うことで説得力が増すと考えたのではないでしょうか。ピボットゾーンは上下等間隔というところが重要なポイントです。
陽和 ぜひピボットゾーンを表示させて使ってみてください。山中先生、今回もありがとうございました。
第12回まとめ
◦MTF移動平均線は、一つのチャートで上位時間足の値動きも確認できる
◦メインで見ている時間軸から比率5倍以上を目安に表示させるのが良い(例:日足チャートに週足)
◦ピボットゾーンは、ピボットをベースに上下等間隔、フィボナッチ比率で幅を持たせている
◦日足ベースだけでなく週足ベースも表示させると、トレンド発生後の転換を見極めやすい
※この記事は、FX攻略.com2020年7月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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