今週の注目材料は木曜日に発表される米国6月の雇用統計だ。
失業率は6.3%と2008年以来の低水準が続く見通しで、非農業部門雇用者数(NFP)は+21.0万人と5カ月連続の20万人超えが予想されている。
米国景気の緩やかな回復を裏付ける数値となりそうだ。
しかし、過去を振り返ってみると、米国雇用統計が好結果となったにもかかわらず、「米ドル/円」は上昇の波に乗れず、むしろ下がってしまうという展開が続いている。
良好なNFPを見て飛びつくと、ことごとく高値掴みとなってしまっているのだ。
その理由は、労働市場の量より「質」を重視するイエレンFRB議長のハト派スタンスにある。
議長は今月17-18日のFOMC後の記者会見で、「失業率は下がったが、労働市場の劣化がなくなったことを反映しているわけではない」と慎重な姿勢を示した。
労働市場の劣化とは、労働参加率の低下、長期失業者の割合の増加、「非自発的パートタイマー」を含む広義の失業率の高止まりなどを指している。
イエレン議長が注視している雇用関連指標、いわゆるイエレン・ダッシュボードの9項目のうち、リセッション前の水準(2004-2007年の平均)に回復しているのは、非農業部門雇用者数と求人率、解雇率の3つしかない。 ダッシュボードの大半がリセッション前の水準へ戻るめどが立たない限り、FRBは実質ゼロ金利の解除に慎重な姿勢を崩さないだろう。
雇用統計が表面上改善しても、結局のところ利上げ期待は高まらず、米国金利もドルも上昇余地は限られてしまう。
もちろんNFPが予想を下回れば、利上げ観測が一段と先送りされ、ドルが売られることになるだろう。
米国雇用統計がドル買いに結び付きにくいイベントであることを念頭に置き、今週は弱気バイアスで臨むべきと考える。
参考:イエレン・ダッシュボード 5月の数値(括弧内はリセッション前の水準)
1)非農業部門雇用者数:+21.7万人(+16.2万人) 2)失業率:6.3%(5%)
3)労働参加率:62.8%(66.1%)
4)長期失業者の割合:34.6%(19.1%)
5)広義の失業率:12.2%(8.8%)※非自発的パートタイム労働を含む
6)求人率:3.1%(3.0%)
7)退職率:1.8%(2.1%)
8)解雇率1.2%(1.4%)
9)入職率:3.4%(3.8%)
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