先週はギリシャ議会が財政改革法案を可決し、EUとECBはギリシャ向けの融資再開を決定した。EUはギリシャが次回支援交渉に入るまで、欧州金融安定メカニズム（EFSM）を活用し70億ユーロのつなぎ融資を実施する。またECBはギリシャの銀行向けの緊急流動性支援（ELA）枠を9億ユーロ引き上げた。これでギリシャの無秩序なデフォルトやユーロ圏離脱のリスクは後退し、長きにわたったギリシャ危機も、ようやく峠を越すことになった。
しかし為替市場はこの進展に好意的な反応を示さず、ユーロドルは週初の1.11ドル台から1.08ドル台まで下落し、5月下旬以来の安値水準で週の取引を終えた。ギリシャ救済のめどがつけばユーロは底を入れると考えていた向きにとっては大誤算となった。
メディアが連日騒ぎたてるため、ギリシャ問題があたかもユーロ安相場の主犯のように考えていた向きは少なくなかったが、実はそうではない。ユーロ安が加速したのはECBが昨年秋に量的緩和の導入を示唆し、ユーロ圏の債券利回りが急低下したからだ。ドイツの10年債利回りは一時ゼロ％寸前まで低下し、その過程でユーロドルは1.04ドル台まで売り込まれた。その後ユーロドルが下げ渋り一時は1.15ドル近くまで戻ったのは、単純に利回りの低下に歯止めがかかったからだ。
先週のユーロ安も何のことはない、ギリシャ問題が一段落したことで、市場の関心が金利動向に戻っただけと考えればわかりやすい。ECBの大規模な量的緩和を背景にユーロが売られ、FRBや英中銀の利上げ観測を背景にドルやポンドが買われるのは自然な展開だ。特に先週は、英中銀のカーニー総裁が利上げに積極的ととれる発言をしたため、ユーロポンドは0.70台割れと2007年以来の安値をつけた。
先週は暴落していた上海総合指数が一時4000ポイント台を回復し、株安連鎖にひとまず歯止めがかかった。株式市場が落ち着きを取り戻し、リスク許容度が高まれば、低金利通貨を調達して高金利通貨に投資するキャリートレードが活発化する。そして現段階では、短期金利がマイナスのユーロが調達通貨になりやすい。今週もユーロの苦境は続くと見られ、ユーロドルは1.05ドル割れを目指す下落トレンドが再開した可能性が高いと見る。
ユーロドルとユーロポンド（赤線・左目盛り）週足 出所：NetDania
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