先週行われたFOMCでは、金融政策は予想通り据え置きだったものの、声明は年内利上げの可能性を示唆する内容となった。(声明全文はこちら→【UPDATE 1-米FOMC声明全文】)
まず前回の「最近の世界経済や金融の動向が経済活動をいくらか抑制する恐れ」という懸念は削除され、単に「世界経済と金融市場の動向を注視している」との表現に改められた。また現行のゼロから0.25%というFF金利の目標誘導レンジに関して、前回は「“どのくらいの期間”維持するか検討」だったのに対し、今回は「“次回の会合で”引き上げることが適切かどうか検討」と一気に具体的になっている。
市場はこれらを年内利上げへの地ならしと受け止め、米国金利は上昇、ドル円は121円台を回復し、ユーロドルは1.09ドル台割れとドル高が進行した。
しかしこれで本当に次回利上げが既定路線になったと見ていいのだろうか?
FOMC声明は引き続き、利上げは「労働市場のさらにいくらかの改善を確認し、中期的にインフレ率が目標の2%に向かって戻るとの合理的な確信が持てた時」とのガイダンスを明示している。直近9月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が+14.2万人と過去12カ月の平均である24万人から大きく下振れし、労働参加率は62.4%と1977年以来の低水準を更新した。
また先週発表された9月のPCEコアデフレータ(FRBが重視する物価指標)は前年比+1.3%と前回から横ばいで、目標の2%に向かって戻る気配はまったく見られない。つまりFOMCが掲げる利上げの条件が満たされているとは到底言えない状況なのだ。利上げを要求したメンバーも今のところ10人中ラッカー・リッチモンド連銀総裁ただ一人であり、タカ派が増加する兆候も見られない。
FF金利先物12月限が示す金利水準は直近で0.2%とFOMC前から3bp程度上昇しているものの、0.25%の利上げを3割程度しか織り込んでいない。金融市場は口では年内利上げの可能性が高まったといいつつも、内心はさほどの確信は持っていないのである。ドル円が抵抗線の121.50円を一気に上抜けできなかったのもこのあたりに理由がある。
今週金曜日には10月の雇用統計が発表されるが、非農業部門雇用者数は+18.0万人と3カ月連続で好悪の分岐点である20万人を下回る見通しだ。労働市場はさらなる改善というより減速懸念が強まっているといった方がいいのではないか。もしこの予想をさらに下回るようであれば、年内利上げ観測は一気に胡散霧消し、ドル円はレンジの下限118-119円へ逆戻りする可能性が高くなる。インフレのカギを握る平均賃金(前回0.0%、予想+0.2%・前月比)にも注目である。
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