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年内利上げ濃厚でもドルが伸び悩んだ二つの理由[雨夜恒一郎]

先週は米国雇用統計上振れを受けたドル買いの流れが一服し、ドル円は122円台へ押し戻された。2カ月あまり続いた118-121円台のボックス圏を上抜けしたことで、筆者は新たなドル高局面が始まったと考えたが、その期待は裏切られることとなった。

来月のFOMCでの利上げが7割近く織り込まれているにもかかわらず、ドルが伸び悩んでいるのはなぜか。ひとつは、年内利上げに懐疑的で土壇場でハシゴを外されることを恐れている向きがいまだ少なくないためだ。

イエレンFRB議長は11月4日の議会証言で、「12月利上げは可能性がある」と指摘しているものの、「データ次第であり何も決まっていない」とも述べている。10月分の雇用統計はたまたま強かったが、もし11月分が大きく劣化すれば見通しは再び混とんとしてくるだろう。

昔はよく「中銀総裁は金融政策運営に関してウソをついても許される」と言われたが、実際利上げを示唆しておいて利上げしないのは、市場に優しいので問題ない(逆に利上げが意識されていない中で抜き打ち利上げするのは問題がある)。ぎりぎりまで利上げをにおわせておきながら結局肩すかしというのは十分あり得るシナリオなのだ。現時点で12月利上げが実現するかどうかは依然として五分五分と考えたほうがよい。

もうひとつは、利上げ開始はむしろドルの強気材料出尽くしとなりうることだ。振り返ってみれば、2013年12月にFRBがテーパリング(債券買い入れの縮小)に着手して以来、ドルは唯一の利上げ通貨としてほぼ一貫して上昇を続けてきた。量的緩和はすでに終了し、実質ゼロ金利を解除すれば、FRBは金融政策の正常化という一つのゴールを達成することになる。しかもドルが強く、インフレ圧力が弱い現状では、FRBは次の利上げを急ぐ必要がない。

つまり、利上げが視野に入った今年の夏の時点でドルはピークを迎えていた可能性が高い。もし12月利上げが実現しても、ドル円は125円を超えられず反落するというシナリオも十分あり得る。先週ドル円の上昇に弾みがつかなかったのは、その可能性が小さくないことを暗示しており、ドル強気派にとっては悪いシグナルだ。今週はドルロングの手仕舞いを念頭に慎重スタンスで臨むべきと考える。

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