FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2017年3月27日号
先週のドル円相場は、トランプ政権による医療保険改革の難航を嫌気した米国株安・金利低下とともにドル売り・円買いの展開となり、111.60円を割り込んで年初来安値を更新。一時は110.63円と昨年11月以来の安値をつけた。しかし金曜日には、米下院共和党が法案採決を中止すると、むしろ灰汁抜けムードとなり、111.30円台まで持ち直して週の取引を終えた。
トランプ大統領はオバマケア廃止を事実上断念
トランプ大統領は「医療保険改革法案は近い将来に採決しない」と発言し、選挙の目玉公約としてきたオバマケア廃止を事実上断念した。トランプノミクスの実現性に懐疑的な向きは、「出だしから大きな躓き」「政権に大打撃」などと囃し立てるだろう。
しかしすでに多くの国民が加入済みの同制度をいきなり廃止すれば混乱は避けられず、共和党内でも完全廃止は無理があるとの慎重論が多かった。ニューヨーク・タイムズ紙によると、トランプ大統領が最初に医療保険改革に取り組むことになったのはライアン下院議長からの提案で、税制改革などの前哨戦として「軽い気持ち」で了承したのだそうだ。大統領は採決中止に際して周辺に「ライアン氏の計画に乗ったことを後悔している」「税制改革に先に取り組むべきだった」などと漏らしたという。
もともと党内にコンセンサスがなく、メリット・デメリットが相反する改革であるから、成立しなかったからといって過度に悲観的になる必要はない。それよりも、これで議会が次のより重要な課題である税制改革に向けて動き始めるという見方もできるわけで、文字通り悪材料出尽くしとなる可能性もある。
高値からの調整局面の着地点は?
大統領選後のドル円の安値は選挙直後に付けた101.20円で、高値は昨年12月につけた118.66円だ。前者は予想外のトランプ氏勝利による不安のピーク、後者はトランプノミクスに対する期待のピークだったと考えられる。110円台はそれらのほぼ半値押しの水準であり、高値からの調整局面の着地点としてはまことに収まりが良い。トランプノミクスに関しては、今後は過度のバイアスが剥落したニュートラルな目で進展を評価していけばよい。
中長期的な観点ではドル円は買い
そして中長期的な観点、「木を見ず森を見る」視点から言えば、経済が好調で、今年FRBによる複数回の利上げやバランスシート調整が見込まれる米国は買いであることに変わりはない。相場は短期的には期待と現実のギャップという相対的要因による影響を避けられないが、中長期的にはファンダメンタルズの絶対水準に従って動く。ドル円の下落は今のところ筆者の予想より深いものとなっているが、上昇トレンドの中の下押し調整の範囲内であり、現状水準は依然として買い妙味があると考える。
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