株価上昇は本物か、それともコロナバブルか[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2020年6月1日号

先週のドル円相場は

引き続き狭いレンジでの膠着状態が続き、週の値幅は107.09円~107.95円と1円未満にとどまった。経済再開への期待感から株式市場は大きく上昇したものの、リスク選好でドルと円が並行して売られた結果、ドル円は方向感が出づらかった。

コロナバブル?

NYダウ平均は一時2万5800ドル台まで上昇し、コロナショック後の戻り高値を更新した。日経平均も2万2千円に迫る上昇を示し、コロナショックによる下落幅の7割以上を取り戻している。米国のコロナウイルスによる死者が10万人を突破し、感染終息の兆候がいまだ見られない中、しかも世界がこれから未曽有の景気後退に突入しようというさなかに、世界中で株式市場が大幅に上昇していることに違和感を覚える向きも少なくない。メディアには「コロナバブル」というタイトルも散見される。

株価上昇を説明しようとすれば、

① コロナで働き方やライフスタイルが激変し、IT・ネット・デジタル化がむしろ加速する

② コロナによる景気後退を食い止めるため、莫大な財政支出と金融・信用緩和が行われる

③ ワクチンの開発が成果を上げつつある

といったところだろう。

これらの説明は、長期的に見れば確かにその通りであろう。リーマンショックのあと10年でNYダウが7千ドルから2万9千ドルまで4倍以上の上昇となったように、危機の先に長期的繁栄があったことも歴史的事実だ。いずれ感染は終息し、有効で安全なワクチンが開発され、世界経済は新たな秩序と常態の下で成長を再開するだろう。

目の前の現実は厳しい

ただし、その明るい未来の前には憂鬱な現実が待ち構えている。ワクチンの開発には時間がかかるし、パンデミックが終息してもウイルスが完全に消滅するのは最短でも1年、長ければ3年はかかるだろう。その間、人々は第2波、第3波のリスクにおびえながら制限された生活を送ることになる。

今週金曜日に発表される米国5月の雇用統計は、非農業部門雇用者数がさらに800万人減少し、失業率は19.6%まで跳ね上がるとの予想が出ている。またアトランタ連銀GDPNowの最新予測では、4~6月のGDPは年率で50%を超えるマイナスとなる見込みだ。

GDPNowはマイナス51.2% 出所:アトランタ連銀

GDPNowはマイナス51.2% 出所:アトランタ連銀

米国経済は今が最悪期で、7-9月期は回復に向かうとの楽観的な見方もあるが、GDPが瞬間風速ながら50%減少し、全労働者の2割が職を失うという極限状態がもたらすインパクトは未知数だ。経済活動のV字型回復は期待できず、元の水準に戻るのに2~3年かかっても不思議はない。

楽観的過ぎる株式市場

現時点では、株式市場の目線ははるか遠くを見ているので、現在進行中の景気後退は問題視しないかもしれないが、いつまでもそうとは限らない。何かの拍子に急に楽観から悲観に振れるのが市場心理というものだ。コロナの威力があらゆる面で当初の予想をはるかに上回ったことを忘れてはならない。決して甘い見通しを持つべきではない。

現在の株式市場は、ほかの市場と比べて明らかに楽観的過ぎる。また為替市場は株式市場よりずっと近視眼的で、2~3年先まで視野に入れるのは無理がある。やはりドルを買う気にはなれない。

ドル円はこのところほとんど動いていないが、欧州通貨や資源国通貨など円以外の通貨に対しては、すでにドル安の兆候が現れている。当面は107円台中心のレンジワークを続けながらも、下落への備えは常に怠るべきではないと考える。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

Twitter:https://twitter.com/geh02066

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