先週金曜日に発表された米国4月の雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が+28.8万人と予想の+21.8万人を大幅に上回り、2月・3月分も合計3.6万人上方修正された。また失業率は前回の6.7%から6.3%へ急低下し、2008年9月以来の低水準となった。
しかし、この結果にもかかわらず、「米ドル/円」は発表直後に約50ポイント上昇しただけで失速し、2時間後には発表前の水準以下まで売り込まれた。米国債利回りや米国株も同様の動きで、発表直後は上昇したものの、終わってみれば金利低下・株安となった。
その理由は、雇用統計の中身が実はヘッドラインほど強くないという点にある。確かに失業率は驚くべき低下を示したが、これは職探しをあきらめて労働市場から退出した人々が増えたことを反映している面が大きい。4月の労働参加率は前月の63.2%から62.8%へ低下し1978年以来の歴史的低水準に並んでいる。
失業者に占める長期失業者の割合は35.3%と前回の35.8%から改善したものの、相変わらず高い。NFPは大幅に伸びたが、一方では非自発的パートタイマー(フルタイムを希望しながらパートタイム労働を強いられている人々)は前回の740万人から750万人に増えた。平均時給は24.31ドルと前月比横ばいで、前年同月比でも+1.9%と今年に入り最も低い伸びとなった。つまり、一度失業すると次の職がなかなか見つからず、やむなくパートタイマーとして働く結果、賃金は下がってしまうという構図である。これは4月7日の当コラムで述べた通りだ。
端的にいえば、労働市場は一見強く見えるが、その質は決して良いとはいえない。完全雇用の実現に強い意欲をもつイエレンFRB議長の就任により、労働市場の「量」だけではなく「質」まで問われる時代に突入した。良好な雇用統計にもかかわらず、ドルが下落する展開が3カ月連続しているのは偶然ではない。FRBがゼロ金利解除に踏み切るまでの道のりはまだまだ長く、金利面からドルが上昇気流に乗るのは一段と難しくなったと考えざるを得ない。
雇用統計直後が戻り高値。二度あることは三度あるか?
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