トレイダーズ証券の井口喜雄による【Dealer’sEYE】をお届けします。
米ドル/円、今後の展開は?
FOMCのハト派スタンスを背景にドルが弱含みで推移しているほか、政府日銀の介入警戒感が後退した円買いも強まり、米ドル/円は一時107円台まで下押ししました。今週に入りショートカバーから108円ミドルまで戻していますが、ここまでは予想通りの展開です。
今後の展開ですが、政府日銀による介入レベルを修正したいと思います。先週のレポートでは107円~108円付近が介入水準と記載しましたが、現実的な介入実施のレベルはもう少し深そうです。 今までは安倍政権頼みの綱である「円安・株高」を死守するために、政府日銀はなりふり構わず実行すると思っていましたが、ここにきて旗色が変わってきました。
G7まで政府日銀は静観か
理由としてはG20後にFOMCは世界的な景気の不透明感を理由に米金利を据え置き、安倍首相も追随し「通貨安競争は避けなければならない」と発言しています。公表されていませんが、G20でドル高是正の密約があったと考えるほうが今のマーケットではしっくりきます。おそらく、来月伊勢志摩で開催されるG7まで政府日銀は静かにしている可能性が高いです。
仮に2、3円スパイクするような場面では流石に黙っていないとは思いますが、どちらにせよ介入への催促相場から下値を模索する値動きとなりそうです。また、中途半端な介入で上昇した場合も格好の戻り売りポイントとなります。因みに、大手外銀の介入予想を見ると105円をターゲットとしているところが多いです。
その他の注目トピックス
その他、今週のトピックスでは金曜日11:00に中国GDP(1月~3月)が予定されており、予想は6.7%で先月から0.1ポイント減速する見通しです。イエレンFRB議長が米利上げペースに関しては米国内の景気ではなく、世界的な景気動向を重視していることから今回の中国GDPには注目が集まります。
予想の困難な中国経済指標ですから出てくる数字の予想よりも、発表後のシナリオをイメージしておき慌てずに対応できる準備が必要となります。リスク回避姿勢が市場に蔓延しているだけに、ポジティブサプライズとなった場合のインパクトのほうが大きそうです。
米ドル/円は売り継続
チャートを見ると米ドル/円は売り継続です。この下落を止めるには先日のレンジ下限、下降トレンドラインの110.80円付近を上抜ける必要があります。ただし、ハードルはかなり高いです。一方、下値は明確なサポートがなく、長い足(週足・月足)を見てもこれといった目安が見当たらないため、心理的な節目である105円がターゲットになります。
参加者は引き続き米ドル/円のロングポジションに変化はありません。IMMの投機筋円買いポジションも6万枚を超えており、海外勢は円買いに自信をもっているようです。先週の107円に突っ込んだ局面では多くのロスカットが散見しており、買い方はかなり痛手を負っています。しかし、まだまだ下値を警戒するべきです。
過去のチャートを見ればわかりますが、このような円高局面ではここから2、3円更に急落する場面を何度も見てきました。前回もお伝えいたしましたが、上昇はテクニカル的な調整の範囲内にとどまる可能性が高く、その調整もほぼ終わり、ここから上はあまり期待できません。
<長期展望>
米ドル/円は中国を始めとした世界的な先行きの不透明感からリスクオフ地合いが簡単に払拭されるとは考え難く、円高に振れやすい地合いが続くと見ています。また、米利上げペースの鈍化、日銀金融緩和への限界などネガティブな材料は多く、長期的なターゲットとして100円付近までの下値を想定しています。
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