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スイスでの国民投票の話題[松崎美子]

今週に入ってから、とくに、マーケットで目につく話題としては、スイスの国民投票に関するものと、日本の早期解散総選挙の噂です。

今年は私が住む英国でも、スコットランド独立に関する国民投票が実施され、マーケットが神経質に動きました。今回のスイスの国民投票は、もっともっと、直接的に為替マーケットに影響を与えるため、本日はこれについてお伝えしたいと思います。

スイスの国民投票

スイスは他国と比較すると、国民投票が実施される頻度が高いことで有名です。そして、今月30日に予定されている国民投票は、為替市場に直接的な影響が及ぶことになるため、私達もしっかり内容を把握しておく必要があります。

国民投票内容

・実施日: 2014年11月30日(日曜日)
・投票内容:スイス国立銀行(中央銀行、SNB)の金準備積み増しを義務付ける提案
・国民投票実施までの道のり: 金準備積み増し法案がスイス議会で否決されたことを受け、スイス国民党が、10万人以上の国民の署名を集め、国民投票実施にこぎつけた
・可決とみなされる条件:投票者の半数以上のYESに加え、スイス26州の半数以上がYESとならなければいけない
・金の保有比率:SNBの外貨準備における金の保有比率は、現在8%であるが、可決された場合は、2019年までに20%まで積み増す義務が生じる。
・将来の金売却: 20%まで積み増した後の売却は禁じられる

可決された場合、考えられる為替への影響

・SNBは5年以内に、推定で1,500〜1,780トンの金を購入することになる。その際には、外貨準備で保有している外貨(ユーロやドル)を売却し、その資金で金を購入することになると予想されている
・最新(10月発表分、8月末時点)のSNBの外貨準備高は、5,466億5900万ドル
参考:http://www.snb.ch/ext/stats/statmon/pdf/deen/A3_1_Waehrungsreserven_der_CH.pdf
・9月末時点での外貨比率は、ユーロ 45%、ドル29% そして、円9%
参考:http://www.snb.ch/en/iabout/assets/id/assets_reserves
・金保有を5年以内に8%から20%に増やすということは、12%増加⇒金額にすると、約656億ドルに匹敵
・656億ドルのうち、ユーロは45%なので、295億ドル=約240億ユーロ
・656億ドルのうち、ドルは29%なので、190億ドル
・656億ドルのうち、円は9%なので、59億ドル=約6845億円

ただし、これは今後5年以内に実施する総額であり、毎月にならすとユーロとドルは、3〜4億ドル程度の売り圧力となる計算。円はあまり影響なし。

ある米系銀行の試算によると、1,500〜1,780トンの購入量は、年間ベースでは世界需要の約7〜10%に匹敵。そして、この購入により、金価格は18%上昇するきっかけとなる可能性がある模様。

金の積み増しに資金がもっていかれるため、SNBが設定している「ユーロ/スイス」1.2000フロアー制の維持が難しくなる。

それに加え、このまま1.2000フロアーを維持すると仮定した場合、ユーロ買い/スイス売り介入を実施するたびに、ユーロの外貨準備が増えるため、それに準じて金を積み増さなければいけなくなる。

ただし、可決された場合でも、この問題はスイス議会での批准が必要となる。もし、議会でこれを法制化するのは危険だと判断した場合、新たな国民投票の実施という可能性も出てくる。

同時に、1.2000フロアー撤廃に関しても、政治的協議を経て、議会での決定が必要となる。

可決される可能性は低い?

最近の世論調査によると、44%の国民がこの案に賛成しているようです。

しかし、スイス上下院ともに、反対姿勢を示していることに加え、スイス26州のほとんどが反対に廻ると考えられています。

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まとめ

新たなロシア危機の可能性や、スイスの国民投票結果を巡る不透明感を嫌気して、「ユーロ/スイス」が、フロアーの1.2000に近づいてきました。

この原稿を書いている時点の「ユーロ/スイス」は、1.2021/23となっており、1.2000〜1.2020の間にはスイス中銀と思われる2,000本弱(20億ユーロ規模)のユーロ買い/スイス売りオーダーが入ってきたとも噂されています。

国民投票実施までには、あと3週間弱ありますので、もしここで1.2000を割るような事態になれば、SNBの介入は必ず出てくると信じています。

問題は、マーケット全体がユーロ買い/スイス売りポジションに大きく傾いていること、そして、1度や2度めの1.2000に向けた攻防はSNBが出動してくると考えられますので、セーフとしても、それが何度も繰り返されると、マーケットからプライスが消えてしまう可能性も考えられます。

一番恐いのは、これ以上買う人がいなくなり、ビッドが消えてしまうことかもしれません。そうなると、ロングの損切りをしたくて売ろうとしても、叩くプライスがなくなるという異常事態が発生しない保証は、どこにもありません。私自身もそういいつつ、本当に少額の買いを持っており、これを書いている今も気が気ではありません。

最後になりますが、もし国民投票が可決して議会でも批准されるような事態になると、いくら5年間かけて金を購入し、外貨を売却するという長い時間軸の話しであっても、マーケットはこの材料に飛びつくと思います。

その場合、ユーロ売りとドル売りは、あまり金額に差がありませんので、「ユーロ/米ドル」は若干の売り圧力があるにせよ、ある意味動意なし。

問題は、ユーロ・クロスでのユーロ売りとなる可能性が高まるという点ではないでしょうか?

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