中国とコモディティー相場[松崎美子]

私は今年6月に日本へ一時帰国しました。その時マーケットで一番話題となっていたのが、ギリシャ危機と中国株式市場の急落でした。それから1ヶ月が経った今、ギリシャ問題はひとまず8月中旬までお預けですが、中国に関しては新たな市場のかく乱要因となってきました。ここでは、最近のマーケットを動かしている2つの材料である中国株式とコモディティー相場について書いてみたいと思います。

中国株式市場、パニック売りへ?

今年6月12日に高値をつけてから、7月8日までの約1ヶ月の間に30%を越す急落となった上海総合指数。

この下落を止めるために、中国政府は、

・6月27日に、中国人民銀行は金利を0.25%カットした
・5%以上の株主に対する「半年間株式売却禁止令」
・政府系投資会社/証券会社/生命保険会社などによる株式買い入れ

など、市場への介入を意図した株価政策を発表しています。世界のマーケット関係者は、これでひとまず一段落かな…と思っていたのですが、今週月曜日の上海総合指数は、2007年2月以来最大の株価下落を記録しました。

中国とコモディティー市場での出来事

これは7月17日から24日までの一週間に起きた中国とコモディティー市場での出来事をまとめたものです。最初は、中国人民銀行が7月17日に6年ぶりに外貨準備における金の保有高を公表した際、市場予想の3000~4000トンに対し、半分以下の1,658トンしか金を保有していなかったことが判り、金が大きく下げました。そして週があけた先週月曜日(20日)には、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で1分間に2回もサーキット・ブレイクが起きたため、相当大きな損切り玉が出たとマーケットで噂されたようです。そこから本格的な下落がはじまり、銅や原油などコモディティー全般に下げが拡大しました。

これに追い討ちをかけたのが、米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したヘッジファンドなど大口投機家の金のポジション・データでした。それによると、彼らは2006年の記録公開以来はじめて、金の売り越し(ネットショート)となったそうです。

こうしてコモディティー価格が下落する中、6月に中国政府が発表した株価対策についてIMFが解除勧告をしたため、週明け27日には中国株がパニック売りとなり、2007年の米サブプライム危機以来の下げ幅となってしまったのです。IMFからの勧告の内容についてですが、「株式市場における混乱を阻止する目的で介入することは適切ではあるけれど、最終的にはそれを解除し、株価のレベルは市場が決定出来るようにすべきである。」というものでした。この勧告が出たからでしょうか、月曜日の急落時には、中国政府は何も対策を打ち出さずにおります。

金とドルの関係

私は為替取引をする時には、株価の動きだけでなく、商品市場の動向も必ずチェックしていますが、金をはじめとするコモディティー価格と、世界の主軸通貨であるドルとの関係は、「逆相関関係」になる確率が高いことで知られています。つまり、金価格が上昇 ⇒ドルは下落(金価格が下落 ⇒ドルは上昇)するという関係です。

わかりやすいように、チャートで示してみましょう。2012年第4四半期に天井を打った金価格 チャート上の赤と黒の線、右軸)がジリジリと下落する中、ドル(チャートの黒線、左軸)は反対に上昇に転じていることがわかります。

価格が上昇 ⇒ドルは下落(金価格が下落 ⇒ドルは上昇)

しかし先週からの金価格の下落局面では、ドルの価値も一緒に下がってきました。つまり、逆相関関係から、相関関係に変化している点が私には気がかかりです。もちろん過去に何度も逆相関から相関関係に変化した相場を見てきましたが、今回は年内にアメリカが金利上げに動くだろうという予想があるにもかかわらずドル下げとなっているため、心穏やかではありません。

アメリカは利上げに動くのか?

現在でも市場関係者の約7割が、アメリカの利上げは今年9月に実施されるという予想を立てています。今月行われたイエレンFRB議長による半期に一度の議会証言の席で、同議長はアメリカの景気全般が改善していることを受け、年内に穏やかな利上げを開始したいという強い意思を感じさせるスピーチをしました。そして、マーケットも将来の金利高を織り込む形で、ドルが徐々に強くなってきたのです。

しかし、ここにきて、中国株式の急落により、世界的な株価下落懸念が出てきます。それに加え、コモディティー価格の更なる下落が引き起こすであろう「低インフレ/デフレ懸念」があらためて注目を浴びることになるかもしれません。一番最新の米インフレ率(CPI) を見ると、CPI全体では前年同月比+0.1%ですが、変動の激しいエネルギー/食品を除くコアCPIは+1.8%となっています。この水準は利上げを開始するには適切なレベルと言えるでしょうが、今後のコモディティー価格の動向次第では、インフレ率がここから下落していく可能性は排除できません。主要銀行の責務である「物価安定の維持」という点について、今週水曜日(29日)に発表されるFOMC連邦公開市場委員会)からの声明文の変化には注意したいものです。

まとめ

6月の中国株下落の局面では、原油やメタルが急落しました。今回の急落でも、コモディティーは下がっています。中国の景気減速懸念を先取りした形でのコモディティー価格下落ですが、ここからは

中国景気減速懸念 ⇒ 中国からの需要が減退する ⇒ 銅価格下落 ⇒ 資源通貨、特にAUDの下落が気になる

こういうイメージを描いております。IMFからの解除勧告を無視して何らかの対策を中国政府が出せば株価は一旦落ち着くでしょうが、世界第2の経済規模をもつ中国経済が減速していることには変わりありませんので、コモディティー価格の下落は継続すると考えられます。そうなると、

コモディティー価格の下落 ⇒ 低インフレ懸念

一般的には逆相関関係となることが多い金とドルとの関係が、最近では相関関係となり、両方一緒に下げているのは、アメリカの利上げ時期が更に後退することを先取りしたマーケットなのでしょうか?

このコモディティー価格の下落マーケットが継続するという前提で話せば、メタル価格に敏感なAUDや、同じオセアニア通貨であるNZD。原油関連のCADやNOKなどを売るのがよさそうです。そうは言っても、これらの通貨は既に相当下落しておりますが、それでもやはり戻ったところは売りで攻めるのが妥当だと思います。その場合の相手通貨ですが、対ドルでもよいでしょうが、対円(AUD円やNZD円など)の方が、私には効率がよさそうに見えます。

松崎美子の写真

松崎美子(まつざき・よしこ)

スイス銀行東京支店でトレーダー人生をスタート。1988年渡英、1989年よりバークレイズ銀行ロンドン本店Dealing Roomに就職。1991年に出産。1997年に同じくロンドン・シティにある米メリルリンチ投資銀行に転職。その後2000年に退職。現在はFX取引に加え、日本の個人投資家向けにブログやセミナー、YouTubeを通じて欧州直送の情報を発信。著書に『松崎美子のロンドンFX』『ずっと稼げるロンドンFX』(共に自由国民社)。2018年より「ファンダメンタルズ・カレッジ」を運営。DMMで「FXの流儀」のオンラインサロンも始めた。

公式サイト:ロンドンFX

Twitter:https://twitter.com/LondonFX_N20

スクール:ファンダメンタルズ・カレッジ

オンラインサロン:FXの流儀 ~ファンダ・テクニカルを語ろう~

YouTube:FXの流儀

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