FX力を鍛える有名人コラム

利食いが大好き方式のすすめ[水上紀行]

利食いが大好き方式のすすめ[水上紀行]

良いレートだと思えば積極的に利食いしていく「利食いが大好き方式」に切り替えたことで、激しい疲労感に襲われることもなくなり、気持ちがとても楽になったという水上紀行さん。30年以上、為替相場の第一線で活躍してきたからこそ伝えられる、トレーダーとしての姿勢や在り方についてまとめてもらいます。

自分は馬鹿を見たくない

相場をやっていると、「どうしてあのとき、利食わなかったんだろう」とか、「なぜあそこで損切ってしまったんだろう」と、勝っても負けても、後悔ばかりになりがちです。

その根本にある心理は、「自分は馬鹿を見たくない」ということに尽きるのだと考えています。利食ったら相場がさらに有利な方向に進んでしまうのではないかとか、損切ったら相場が折り返してしまうのではないかとか、自分が馬鹿を見たくないがために、手も足も出なくなっているときがありませんか。しかし、馬鹿を見たって良いのではないでしょうか。

デモ取引というものがありますが、それは何ともいえないプレッシャーを感じるリアルなトレードとは心理状態が全く違い、所詮はデモに過ぎません。ということは、トレードの世界では、リアルでしか経験が積めないということだと思います。

したがって、経験回数を増やすことによって初めて、腕を磨くことができるのだと思います。このことについて、私がよく例として挙げるのが、「国際線のパイロットと、国内線のパイロット」の話です。つまり、国際線と国内線、どちらのパイロットの方が、腕が上かという話です。

その答えは、国内線のパイロットだと聞いています。なぜなら、飛行機の操縦で難易度の一番高いとされる離着陸の回数は、短距離の国内線の方が圧倒的に多いからです。数をこなす、言い換えれば、経験回数が多ければ多いほど、腕は上がります。

ちなみにトレードでは、回数だけでなく、大きな金額を取り扱う回数が増えるほど“くそ度胸”がついてくることも、私自身の経験からいえます。つまり、場に慣れることが、上達の秘訣だと思います。

ですから、自分が馬鹿をみるかどうかと考えること自体、あまり大きな問題ではありません。それよりも大事なのは、自分の感情に振り回されないことです。

投機をなす者楽悲を戒む

私の好きな言葉に「投機をなす者、楽悲を戒む」という格言があります。つまり相場を張るものは、勝ったといってははしゃぎ、負けたといってはふさぎ込むことは、自ら戒めるべきだということです。

言い方を変えれば、相場を張るなら、ポーカーフェイスで行けということです。それぐらい喜怒哀楽という感情を消してこそ、相場は見えてくると思います。

よく相場師といえば目がギラギラと燃え、激高する近づき難い存在に思われがちですが、結構淡々として物静かなタイプが大相場師だったりします。自分の感情の揺れを極力抑えているところが、そうした人たちにはあるのではないかと思います。

もちろん皆が皆、物静かかといえばそうではなく、超ネアカもいます。ただし、そういう超ネアカにしても、実に相場をまじめに見ていることは確かです。要は、物静かなタイプが自分に向いているのか、あるいは超ネアカが向いているのかは、自分自身と相談してみる、つまり自分を見つめてみることが大事ではないかと思います。

実は今回の主題になるのは、私の古くからの友人である超ネアカディーラーから聞いて、目からウロコだった利食い方に関する話です。

利食いが大好き方式

私が、ロンドン勤務を終えて東京に戻り、しばらくしてスポット(いわゆるFX)チームに配属されたときのことです。そのチームはインターバンクディーラーだけでなく、プロップディーラー(プロプエタリーディーラーの略。自己玉で相場を張るディーラー)も含めて、10人のディーラーがポジションを張っており、当時の東京市場ではまれに見る大所帯でした。

特に「米ドル/円」は、日銀から与えられたポジション枠が限られており、そこで10人がポジションを張ろうとすれば全員は無理。そうなると、あえて相場がアゲインスト(不利)な状況でも、誰かの損切りがついて空枠(あきわく)ができれば、すかさずその枠を奪い合うという有様でした。

これは「米ドル/円」に限らず、総じて長期トレンドを狙ったポジションでも同じでした。大ボスなど、8年越しのサウジアラビアリアルのポジションを持っていました。いずれにしましても、そうした環境で育ったため、相場の多少の振れなどお構いなしで、かなり大きなポジションをキャリー(転がす)していました。

それから15年以上経ち、私はストラテジストとなり、また個人投資家としてポジションを張るようになりました。やり方も昔と変わらず、方向性を決めたら持ち続けるという方式をとっていました。おかげさまで、結構儲かりました。

しかし、利食い終えると、もの凄い疲労感に襲われてしまう。そのことを例の超ネアカディーラーに打ち明けました。そうしたところ彼は、「そんなことしたらダメだよ。疲れ切っちゃうよ。俺なんか利食いが大好きだから、どんどん利食っちゃう。もしそれでもさらに相場が進むなら、また入り直せば良いんだから」

この言葉は、目からウロコでした。目標を決め、ただひたすらその目標到達まで上げ下げに耐えてきた苦しさから、解放された瞬間でした。

それからは、一応目標は決めるけれど、パッと見て「良いレート」と思えば、ドンドン利食っていくようにしました。この「利食いが大好き」方式にすると、何よりも疲れない、そして気持ちがとても楽です。

もちろん「良いレート」と思ったレベルより、さらにポジションを持っていれば有利になるということもあります。しかし、既に自分には収穫した利益がある、それ以上の利益は望むまいという気持ちが湧いてきます。人間の欲は、果てがありません。

その欲望を満たすために、相場にのめり込み、金、金の世界になることが、果たして幸せなのかと思います。得た収穫に感謝し、明日の収穫を祈ることこそが、幸福なような気がします。

狩猟民族の発想も忘れずに

ただし、ともすると農耕民族的発想にのめり込みやすいことも事実ですので、警鐘を鳴らしたいと思います。典型的な農耕民族的な発想は、年間を12等分して、毎月12分の1ずつ稼げば、目標達成という発想です。これは一見合理的なように見えて、実に非合理的な発想です。

皆さん、考えてみてください。年間の相場が、等分に動きますか? 上がったり、下がったり、停滞したり、いろいろな場面が1年間にはあります。それを等分で量ろうとすること自体、ナンセンスだと思います。

それより、狩猟民族的な発想「ライオンの生活」が、トレーダーには必要です。ライオンの生活とは、必要なときに動き、必要でないときは休むというのがコンセプトです。つまり、ライオンは基本的に狩猟動物ですから、獲物が現れると積極果敢に飛びかかるものの、獲物がいなければ、体力の消耗を最小限に抑えるため動かないということです。

相場の世界でも、はっきりとしたトレンドがあれば攻めるだけ攻めるけれど、何だかよく分からないレンジ相場では、無理に攻めず休むということが大事なわけです。このあたりのことは、まさに、狩猟民族である英米勢が、得意としているスタイルです。

狩猟民族という点において、彼らの徹底ぶりはすごいもので、人生設計まで狩猟民族です。基本的に彼らは、できるだけ早く得るものは得た上で現役をやめ、自分の好きなことをしたいというのが希望です。そして、これは決して何十年も先の夢ではなく、早ければ30代、40代で叶えようとします。

私が働いていた英系銀行でも、私が40代のとき、オーストラリア人の30代の上司は、まさにそういったタイプでした。彼は東京支店で業績を伸ばし、ロンドン本店に転勤し、何年か勤めて40代になったときには、十分に蓄えができたとみえ退職、故郷のオーストラリアのメルボルンに戻りました。

そして、何を商売しているのかは分かりませんが、オフィスを構えたと風の便りに聞きました。このように、徹底して儲けるときは儲け、やりたいことや、あるいはノンビリしたいのであれば、そういう人生設計を地に足をつけて実行するところに学ぶべき点があると思います。

今やFXでも、専業トレーダーになったり、これからなろうとしていたりする人は、多いと思います。であればこそ、あえてお尋ねしたいのは、どういう人生設計をお考えになっているかということです。

一攫千金を狙うことも、全く問題はありません。しかし、一攫千金を成し遂げたとき、どういうドリームを持っているのか、そこが肝心ではないかと思います。金は墓場まで持って行けないとよくいわれます。だからこそ、自分がその立場になったとき、何をするのか、その目標を持つことが、また明日への励みになるのではないかと思われます。

私自身が今いろいろ活動している目的は、日本の個人投資家層ができるだけ強くなるためのお手伝いをするということです。なぜなら、今や日本のFXは、個人投資家層しかリスクを取っておらず、個人投資家層の勝敗によって世界における日本のFXの地位が決まってくるからです。

※この記事は、FX攻略.com2017年4月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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